実施日時 2015年(平成27年)7月26日(日) 10:00〜12:00 |
太田山竹取物語の初日は講習会を行い、第1部として講演会を行い、第2部として太田山の現状観察並びに意見交換を行いましたので概要を報告します。参加者は32名でした。
T;講習会1部
テーマ:竹の分類ならびに利用と管理
講 師:久本 洋子(東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林 助教)
午前10時より11時まで、木更津市郷土博物館「金のすず会議室」において「タケ類における一斉開花現象の分子機構の解明」などを研究されている東京大学千葉演習林の久本洋子先生を講師にお招きし、下記に示すようなタケ類についての幅広いお話を聞くことができました。
1.タケ類の生物学的特徴
・稈と地下茎で構成され、地下茎で繁殖し、広がる。
・旺盛な成長をするタケノコは節ごとに生長点がある。
・1日で0.6〜1m伸長する。
・開花周期があり、一斉開花で枯死する(モウソウチクは67年周期)。
・タケ類は稈鞘が残り、ササ類は稈鞘が脱落する。
2.タケの分類と分布
・世界で約80属980種ある。亜熱帯と熱帯が分布の中心。
・温帯性のタケ類は地下茎で広がり、主に日本や中国に分布・生育。
・タケの繁殖による問題は日本だけで生じている。
・中国では利用が盛んなため、繁茂していない。
・熱帯性タケ類は地下茎が株立ち状になるので日本のような問題は少ない。
・日本のタケ類の種類は16属156種で、太田山に繁茂しているモウソウチクはマダケ属に含まれる。
3.竹と日本人の関わり
・生活の中で、食べる「タケノコ」、使う「竹材」として古くから利用されてきた。
・竹材の主な用途は、ざる、かご、うちわ、箒、竹刀、垣根、床柱、竹笛などである。
・七夕、門松、文学の題材、庭園などに古くから関わり、日本文化へ影響を与えてきた。
・日本の三大有用竹はマダケ・ハチク・モウソウチクである。
・モウソウチクは1736年に中国から鹿児島島津藩庭園に導入された株が最初とされる。
4.竹林の管理
・竹林の面積は主に西日本で拡大しており、東日本では千葉県が拡大傾向にある。
・タケノコは1992年を境に国内生産が輸入品に追い越され、現在はほとんど中国からの輸入になっている。
・竹材の国内生産量は1990年頃から減り続け、現在では最盛期(1975年頃)の5%程度になっている。
・竹の利用が減少した結果、竹林の放置、拡大が各地でみられる。
・放置竹林がもたらす問題
「地すべりや倒竹の被害」
「景観の悪化」
「有害鳥獣の棲家、餌場」
「生物多様性の低下」
「森林や畑に侵入すると他の土地利用ができなくなる」
「てんぐ巣病の蔓延」
・竹林の除去については下記のような方法が試されている。
「稈の伐採による除去」
問題点:地下茎から竹やぶが回復してしまう。毎年伐採が必要
「薬剤による枯殺」
竹稈注入による方法と伐採+塩素酸ナトリュウム粒剤散布の方法がある。
全面を枯死させるには後者の方法が容易。
5.今後の竹林整備課題
・実施主体がボランティア団体やNPO団体に頼らざるを得ない。
・竹材の利用先が無いため、林内に放置、チップ化、燃やすしかない
6.竹材の新しい利用
・容器、バインダレスボード、紐、布材など原料としての開発
・伝統的な利用の見直しで竹細工の新しい創作などが模索されている。
U 講習会2部
講習会1部終了後、市民まちづくり塾地曵昭裕代表の案内で太田山公園内に繁茂しているモウソウチク林の現状を久本講師や参加者に見てもらい、今後の活動について活発な意見交換をおこなった。
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