個人情報と防災について | |||
2006/3/27記 | |||
昨日(2006年3月26日)に木更津市長選挙が終わり、現職の水越市長の再選が決まった。それに先立つ3月15日に木更津市民会館中ホールで市長選挙公開討論会が開催された。私も発起人の一人として討論のテーマの中に「防災」を入れて頂いたが、大規模地震の発生が近いと思われるこれからの4年間、水越市長には少しでも多くの人命を救っていける施策を講じていただきたい。 さて、阪神大震災から11年以上の時が過ぎ、あの時に何が起きたか記憶が風化しつつある中で、私の頭の中に強く残っていることは北淡町の消防団の活躍である。 一瞬にして崩壊した未明の町で、自分の家族や財産に損傷や損害が発生している中で、自治消防団として素早く行動を開始し、自治体と住民という受給の体制でなく、補完する行動を取った。これは自治体の限界を超えた災害時では全国的に消防団がそう動くと思うが、北淡町で感心したのは、どこに一人暮らしの年寄りが居るか、家のどのあたりで寝ているかを知っていたため、救出の遅れによる死者を僅かで押さえた事である。これはより強力な職業消防を所有している神戸などの大都市では長期に渡り放置された場所が生じたことと明確な対比を生じた。 この事をもって、自治体の規模が大きくなると防災力が無くなると市町村合併に反対の論拠に使う人も居るが、重要なのは自治体の規模ではなく、自治体に全面依存しない住民の独立した自治力の問題であると思う。地域社会が互いに支え合う社会を作っていかないと、非常時に弱者は無視されてしまうのである。 自分が木更津の消防団で活動しているとき、何処に水利が有るかは知っているが弱者が何処にいるか、まして一人暮らしの老人は家の何処で寝ているかなど、全く知りうることはなかった。もちろんそのような情報が悪用される可能性は高いので、秘匿する意味も分かる。しかし、その頃自分が考えていたことは『ここで地震が発生した時に俺は何人を見落として死なせてしまうのか』という恐怖であった。 幸い、自分の任期中に地震災害が発生しなかったので、今はその恐怖から解放されたが、「個人情報保護法」の成立運用に伴い、国勢調査すら満足に出来ないなど、より情報が伝わらない状況のようである。先日の新聞でも消防組織に個人情報を用いてよいように法改正するよう自治体側からの要望があったと書いてあったが同感である。しかし、職業消防だけでは大規模災害に対応できないし、自治消防団も現在の構成員の多くがサラリーマンで有ることを考えると仕事に出ている昼間は地域が無防備に成ってしまうので、情報の伝わる範囲を自治会まで拡大しないと効果は充分でないと思う。 詐欺等の犯罪や必要以上のプライベートの侵害を防止することは重要だが、それには罰則をもって対応する方向を取り、地域社会では寝る場所は別として、最低限何という名字の人が何処に住んでいるかぐらいは知るべきであると思う。秘密を守るために死んでしまっては何にも成らないと思うし『せめて知っていたら助けられたのに』という後悔を残さないために。 |