計画性のない都市計画について
2007/7/29記
 昨日の昼間に富津公民館で開催された「東京湾口道路建設促進シンポジウム」に一般市民として参加してきた。
 日大高橋教授の基調講演の後、城西大学の溝尾教授・淑徳大学の廻教授・且O菱総研の室田プロジェクトマネージャーを加えてパネルディスカッションが行われた。
 
 その中でも言われていたが、東京湾横断道路が要領限界近くまで使われるほどこの地域が人を呼ぶようにならなければ湾口道路の建設はあり得ない、という主張には賛同できる。技術者として中央径間が3km近い橋は気になるが、東京湾横断道路だけで約1兆5千億円もの負債を抱えながら、その事業費をどの様に捻出し、償還するかという視点がない議論は世の中の賛同を得られるものでは無いだろう。
 
 それより、木更津の街づくりは副笑い都市で、目や鼻は有るがバランスの取れた顔になっていない、という意見に改めて思い当たるものがあった。
 
 都市計画はEハワードの田園都市論に代表されるように、どの様な形態で都市を形成することが市民の福祉になるのか、という点で論じねばならないものであるが、現状は単なる乱開発防止のための区域的規制となっており、それも「木更津市の市街化調整区域における開発行為等の基準に関する条例」でさらに骨抜きになっているのが現状である。
 例えば築地や金田東の大規模商業施設についても、現在はそれぞれ工業専門地区第1種低層住宅地区であるが、それぞれの具体的な計画が出来たところで商業地区へ変更されることになる予定である。これは商業を集積したいから用途を決めて誘致するのではなく、商業施設の進出計画が出来たので整合を図るために都市計画を変更するという、理念の薄い都市計画が存在ししている現状である。
 
 関東大震災以降の東京を何とかするべく後藤新平が東京市長として頑張ったが、大きな抵抗に遭い不満足な都市計画に終わったように、そもそも日本の都市には計画が似合わないのかも知れないが、もっと根本にある信念を持たないとこの街をどうしたいのか見えてこなくなる。
 例えば私が前に行っていた羽鳥野はアカデミアの企業進出に対応するべきものだったが、波岡と矢那を結ぶ都市計画道路は存在しないし、横断道路から潮浜までの湾岸道路は「事業化の見込みがない」という事で都市計画から削除されている。
 重要なことは事業化の可能性より、都市づくりの理念に基づく計画の策定ではないかと思うのだが、それは行政では主流な意見ではないらしい。
 
 シンポジウムでは欧米の街づくりでは、最初に構想を作るのは建築家でも土木技術者でも無くランドプランナーだと言うことを伝えていた。日本では大規模な公園設計での出番は有るが都市の構想で出番はなく、ともすれば事務方が構想をまとめる状況である。
 美しい街並みや賑わいのある市街を作るためにせねばならないことをもう一度考え直すときかも知れない。