建設業界は悪者か
2007/8/27記
 先日、朝日新聞のテレビ欄で『ミヨリの森』というフジテレビ上映のアニメが画像が綺麗で、環境を考えていると書かれていたので録画しておき、昨夜それを見た。
 ストーリー展開や作画・声優などについては特にコメントしないが、一つ気になったのがダム建設を行うために絶滅危惧種のイヌワシを業者側のハンターが始末する、という設定である。
 これを見た子供達は、建設業者は違法を行い自然破壊を進める業界で、それに反対することは正義である、というような認識を生まないかと心配になるのである。せめて善良な技師でも出演させればバランスも取れるのに、と余分な事を考えてしまう。
 
 テレビでも税金の無駄遣いとして公共事業が挙げられることは多く、田中康夫前長野県知事の脱ダム宣言や、日本道路公団解体などは多くの国民によって歓迎で迎えれた。
 白神山地や飯豊山塊のスーパー林道や北海道二風谷のダムなど、建設によって自然や文化を失い過ぎる公共事業もあるし、福井空港やスーパーテクノライナー(小笠原航路を前提にした高速船)のように完成しても使用されないものも多い。
 法面補強工事では必要以上にコンクリートを使って景観を台無しにしているし、河川工事では水生生物の生息環境を破壊して生態系を単純化させているというような指摘も良く解る。
 
 それでもアメリカミネアポリス近郊での道路橋崩壊のような状況を発生させないために適正な維持管理は必要だし、災害からの復旧を迅速に行うためには地域に精通して熟練した職人の存在が欠かせない。急病人を病院へ一刻も早く移送するためには道路網の充実は必要条件で、疫病の伝染を防ぐ有効な手段は上下水道の整備にある。人間社会を営んでいく以上、必ず必要な産業の一つが建設業である(ただし、全産業に対する比率は先進国中で日本は多い方である事は事実である)。
 
 日本語で土木技師と表される職業は、英語でcivil engineer と表現される。つまり市民生活を支える技師という訳である。
 先日のテレビや近年のマスコミによるバッシングで優秀な若者はこの業界に進みにくくなっていると聞く。建設現場は全てが現場に合わせたオーダーメイドであり、災害復旧などは早く正確で適切な判断が求められるなど、一人一人の能力による部分が大きい。
 本当に自分たちの将来を考えると、能力有る若者が建設業界に進むように、バッシングだけでなく善い事柄も取り上げるようなバランスを取ってもらわねばなるまい。
 
 アニメを見ながら、Civil engineerの1人としてそんなことを考えてしまった。