中国の変化について考える
2007/10/25記
 行政視察の往復のバスや飛行機待ちで読むため、昔買って読みかけであった『中国・台湾・香港』(中嶋嶺雄著:PHP新書)を持っていき、3日で読み終えた。
 著者は東京外大の学長まで務めた中国問題の専門家であり、非常に良くまとまっている本であるが、1999年の作品が古く思えてしまうほど近年の中国の変遷は凄い。
  アメリカで中国製のない生活を送ろうとした本が話題作になるほど中国の工業製品は市場を席巻し、日本でも貿易相手先がアメリカを抜いて1位になるなど、今や中国は大国である。
 しかし今から10年少し前には、本のタイトルにある中国と台湾と香港が同じ様な経済規模だったことを思い出すと変遷の凄さを感じてしまう。
 
 近年は中国の開放政策も進み、多くの都市に簡単に行くことが出来るようになった。中国政府による弾圧が世界的に追求されていたチベットにも鉄道が通じ、観光客が大勢乗り込んでいくよう成るとは驚きである。旅行の自由化は本気のようだ。
 羽田の第四滑走路の完成で近隣国の国際線が成田から羽田に移る気配が濃厚である。そうなると木更津からアクアラインバスと飛行機を使って午前中に中国の諸都市へ入れる日が近いことになる。場合によると国内都市より近くなるのだ。
 中国便も北京・上海・香港だけでなく瀋陽・大連・天津・青島・抗州・廈門・広州・西安・重慶・成都など本当に多くの都市に乗り入れるようになっている。考えてみればそれぞれの都市が1億近い周辺人口を持っているのだから、ヨーロッパの諸都市に行くのと同じぐらい多くの街に直行しても可笑しくはないのだが、本当に多くの需要が出来たものだと感心する。
 
 中国の成長は現在の所、アジアの安定であるが将来的には不安要因も多い。
 粗鋼の生産量はわずか数年で世界最大になり、近年では1年間で日本1国分程度の成長をしていると聞くと、現在様々なものが中国特需で潤っているが、間もなく過剰設備状態になった中国による製品ダンピングで経済の混乱が始まるように思える。
 また、紙の材料のパルプや石油製品などが急激に値上がり、消費者物価を押し上げて行くだけでなく、食料や水の世界的な供給不足となり、餓えた貧しい民が不法入国者として世界中の先進国に流れ出ていくのではないかという不安も有る。
 それでも巨大な隣国と上手く付き合っていく事が必要なのだから目を欧米だけに向けるのでなく、変遷の激しい中国学を常に学んで行かねばならないと思った次第である。