食品偽造騒動について考える
2007/11/28記
 ミートホープ社や白い恋人から始まり、比内地鶏、赤福、御福餅、船場吉兆と続き、ついに西側消費社会の象徴で管理マニュアルに定評のあるマクドナルドでも食品偽造が発覚した。報道は○○よお前もか、の繰り返しである。
 この現象で気づいた点を何点か記載したい。
 
1.内部告発者
 殆どの発覚の元が内部告発である。それだけ従業員も社会的正義感を持ってきた、と考えれば幸せだが、実体はパートや派遣労働者のように会社に人生を反映することのない者が多く製造現場に居ることが原因だろう。
 この事は、例えば水俣病問題の時にチッソが派遣労働者で成り立っている会社だったら、もっと早く問題の究明につながったろうと思うと、企業がガラス張りになりつつある点で、市民としては歓迎できる。
 しかし、企業の違法行為が漏れる以上に、企業秘密もライバル企業や国外の企業に流れ続けていると推察できるので、この国の競争力の点では心配なことである。
 それ以上に、船場吉兆でのパートに責任を擦り付けた事象が象徴的なように、企業内での断絶や格差が顕著になっていることである。これは『偽装請負』(朝日新書)で実体を詳しくレポートしているが、企業の競争力を高めた反面、日本的経営の良いところを拭い去り、弱者を生むことで税収減や扶助費の増大など公的負担の増大を招いている。
 これらを考えると、内部告発は少なくなっても良いから企業と従業員の一体化の時代に戻って貰いたいと思うのだ。
 
2.健康被害者の不在
 高価な食材だと思って購入したらそうでなっかた、と言う意味では詐欺行為で消費者に被害が発生しているが、食中毒になるような健康被害の発生者が全く発生しない段階での騒動である。
 未然に健康被害を防いだと考えることもできるが、そもそも賞味期限の設定は妥当だったのかという気がする。品質管理を明確に決めて、再利用することは個人的には気にならない。
 それでも神道的な『穢れ』を忌み嫌う国民性からか、極端に新鮮な物を求める消費者のために古い物が許されていない。新品と再利用品を明確に区別し価格も変えれば納得される事だろう。自家消費や親しい友人向けの需要も生じるだろうから、スーパーで夕方の値引き商品を購入することに抵抗がないように、受け入れられたと思う。
 
3.もったいないの精神
 我が国の食糧自給率は4割を切りながら、輸入した食料の1割以上が食べ残しや賞味期限切れにより破棄されていると聞く。今回の騒動の結果、厳密な管理が進めば破棄と、それによる処分量の増加という問題が進む物と思う。
 まだ食べられるのにもったいない、という考え方は共感する。それに対して日付を偽装するのではなく、正直に「若干古いです。けど安くするから購入して下さい」と表明し、受け入れる文化が深まればと思う。
 
4.品質の偽装
 船場吉兆が但馬牛として売っていたのが鹿児島牛だったという問題は、多分質的には遜色無い物を消費者のブランド意識に合わせていたという詐欺なのだろう。船場吉兆としては最高の鹿児島牛として売るべきだったろう。
 当地にも『上総和牛』という、白石さんの作っている上等な肉がある。米沢や松坂でも良い物を食べているがそれに劣ることは無いと思うが、それを知る消費者も少ない。ローカルブランドを理解する消費者が少ない現状が露呈したと言うことだろう。
 ミートホープや比内地鶏問題は会社として悪質だが、消費者も牛肉100%や地鶏に過度な幻想を抱いているのではと思う。魚沼産コシヒカリや清酒越の寒梅が生産量以上に流通している事なども、この問題の延長である。自らの舌で良い物を探す経験も重要だし、地域で産出している、生産者が解る範囲の物を購入して消費する、スローフードな生活に移って行くべきではないか、そんな事を地酒を飲みながら考えている。