物造りの気構えについて
2008/01/16記
 静岡県で開催された2007年ユニバーサル技能五輪国際大会は46国の参加があり、マスコミも注目する中で11月21日に閉幕した。日本は53の金メダルのうち参加国最多の16個を獲得し、金銀銅を合わせた総メダル数でも韓国の27個に次ぐ24個(3位はスイスの16個)と検討した。
 14日の成人の日に参加者を招いて話を聞いたNHKの番組は、最近の若い者もしっかりしているという印象を受けた。中には企業のイメージ向上のためか、技能五輪専属の組織を作っている会社もあり、若干の違和感を受ける部分もあったが、それでも職人に支えられてきた「物造り大国・日本」もまだ健全な状況にあるのかなと安心できる番組であった。
 
 個人的には昨日から知人の会社で本業を再開した。
 議員になるまでは、自らが大きなプロジェクトの調整を請負い、技術者の視点から問題点の調整と修正を行うことでプロジェクトのコストカットをするのが売り物であったが、議員という立場になると現場に傾注することも出来ず、引き受けられない仕事もあった。
 今回は知人の配慮で、議会日程を優先しながら出来る規模とバックアップの有る仕事としての本業復活である。
 
 現場の図面を見ると、物を作るという情熱が蘇る。個人的にはシビルエンジニア(土木技術者)は模型造りに厭きたらず、実寸の構造物を作って喜ぶ少年の気持ちが残っているべきだと思うし、自分の過去を振り返っても作ってきた作品(上信越自動車道・アクアライン・ちはら台団地・羽鳥野団地等)には時々会いに行きたくなるものである。
 
 しかし、学生の理工系離れは深刻と聞くし、製造業の多くが国内から中国や東南アジアに生産拠点を移しているし、ソフト開発もインドなどに外注が進んでいると聞く。テレビでの技能五輪には明るい思いをしたが、製造の現場には若手が少ない所が多く、逆に若手が多い現場では多くが派遣会社による労働者であり、二重構造によって生活の安定も少なく、仕事に生き甲斐を見いだすことも出来ずによりよい仕事を求めて彷徨う状況にあるようだ。
 さらには人間関係を構築することが出来ずに生産現場はおろか、消費者として社会と付き合うこともままならない若者が増えているという状況を考えると、この国の将来は大丈夫なのかと不安にならない方がどうかしている。
 
 子供の頃からナイフを取り上げ工作させず、テレビゲームのような受動的な遊びの中で大きくなると物造りの面白さという物は育たないのだろうか。さらに日本が諸外国に比べ優れている細部へのこだわりや、要求する品質の高さも、それを成し遂げ高みを目指す職人の心構えが根底にあったはずだと思う。
 事務的な仕事も重要ではあるが、よりよい物を作り続けていきたいという物造りの気構えを失わない国民性は維持していきたい、とNHKの番組を見ながら思っていた。さて次世代にはどの様に伝えるべきか。それが問われている。