県庁所在地への集積に思う
2008/06/05記
 先日、千葉文化会館で行われた千葉県地方議員連絡協議会等が主催する第2回地方自治講演会に参加して麻生太郎元外務大臣の講演会を聞いてきた。
 その道すがら、県庁前を通ると目の前に巨大なビルが建設されていた。地上11階・地下2階・延べ面積43,530uで来年5月末に完成予定の千葉県警察本部庁舎ビルである(右写真)。
 県庁敷地内には古い5階建ての県警本部ビルとそれより幾分新しい9階建てビルの2棟(左写真)が建っているが、木更津警察署同様、手狭に成ったり機能が古かったり耐震機能が不足していたりで新庁舎を必要としているのであろう。
 この建物の必要性については県議会で議論されていることであろうから意見はしないが、県庁所在地ではこの様に巨大な投資が行われており、一方では市役所本庁舎の耐震診断すら実施できないい我が市の状況を思うと、県単位での一極集中が進んでいるように思われてきた。
 
 総務省のHPで各県別国勢調査人口(平成17年10月1日現在)と各都市別人口(平成19年3月31日現在)を調べ、若干調査時期が違うことに目を瞑って都道府県庁所在地がその都道府県に占める人口割合を計算してみると下表の通りとなった。
 なお、人口の単位は千人、人口比は%である。
県名 人口 都市名 人口 人口比 備考
東京 12,577 特別区部 8,340 66.3
京都 2,648 京都 1,390 52.5
宮城 2,360 仙台 1,001 42.4
香川 1,012 高松 422 41.7
高知 796 高知 326 41.0
神奈川 8,792 横浜 3,563 40.5
広島 2,877 広島 1,145 39.8
大分 1,210 大分 464 38.3
石川 1,174 金沢 442 37.6
富山 1,112 富山 418 37.6
和歌山 1,036 和歌山 384 37.1
熊本 1,842 熊本 663 36.0
愛媛 1,468 松山 514 35.0
岡山 1,957 岡山 683 34.9
鹿児島 1,753 鹿児島 601 34.3
北海道 5,628 札幌 1,874 33.3
新潟 2,431 新潟 804 33.1
鳥取 607 鳥取 198 32.6
福井 822 福井 267 32.5
徳島 810 徳島 261 32.2
宮崎 1,153 宮崎 371 32.2
長崎 1,479 長崎 452 30.6
愛知 7,255 名古屋 2,154 29.7
秋田 1,146 秋田 329 28.7
大阪 8,817 大阪 2,510 28.5
福岡 5,050 福岡 1,364 27.0
兵庫 5,591 神戸 1,503 26.9
島根 742 松江 194 26.1
奈良 1,421 奈良 368 25.9
栃木 2,017 宇都宮 500 24.8
滋賀 1,380 大津 325 23.6
佐賀 866 佐賀 203 23.4
沖縄 1,362 那覇 313 23.0
山梨 885 甲府 194 21.9
青森 1,437 青森 311 21.6
岩手 1,385 盛岡 294 21.2
山形 1,216 山形 251 20.6
岐阜 2,107 岐阜 413 19.6
静岡 3,792 静岡 712 18.8 浜松(788)
長野 2,196 長野 379 17.3
埼玉 7,054 さいたま 1,179 16.7
群馬 2,024 前橋 319 15.8 高崎(341)
三重 1,867 283 15.2 四日市(303)
千葉 6,056 千葉 910 15.0
福島 2,091 福島 288 13.8 いわき(357)
山口 1,493 山口 187 12.5 下関(288)
茨城 2,975 水戸 265 8.9
合計 127,769 合計 40,331 31.6
 
 静岡・群馬・三重・福島・山口の5県以外では県庁所在地が最大人口を持つ自治体である事が解り、10県以外では県庁所在地の人口が県人口の1/5を越えていることが解った。千葉県などは集中の割合が低い方である。京都府などは政令指定都市の京都市が人口の半分以上を占めていて、京都府知事と京都市長ではどちらが権限が大きいのか解らない状況だ。
 
 人口比率が15%と下から4番目の本県でも、幕張の整備やモノレールなど県庁所在地への投資は目立つ。地方都市でも那覇のユイレールや富山のライトレールなど県庁所在地の多くで積極的な投資がされているように思っている。
 もっとも、かずさアカデミアパークの整備やアクアラインなど県庁所在地でもないのに投資が目立つ木更津市はどうなのか、という点は今回、考察しない事にする。
 
 日本全体では、国民の3割以上が都道府県庁所在地に住んでいると思うと、既に県という役割が低下しているのではと思うところがある。人口の割合だけで論じることに無理があることは承知の上で考えると、総務管理部門に3割以上の人材を裂き、現業部門が7割を切っている製造業の会社、というイメージなのである。
 県庁所在地とそうでない市で、街づくりに関する資金や人材などの環境を考えると、都市間格差は否定しがたいものが有る。
 
 県の人口を考えると山梨県・佐賀県・福井県・徳島県・高知県・島根県・鳥取県の7県が百万人を下回っている。人口最大の市である横浜市(356万人)を上回る人口を持つ都道府県は東京都・大阪府・神奈川県・愛知県・埼玉県・千葉県・北海道・兵庫県・福岡県・静岡県の10自治体に過ぎない。
 国会は衆参のねじれにより様々な障害を迎えており、地方分権や道州制に向けた議論が水面下に沈んでしまっているようであるが、自治体の括りをもっと大きくして、基礎自治体には権限と財源を委譲することで資金や人材という環境の差を少なくするべきと考える。それを受け入れる地方議会の質は重要である。