海抜0メートル地帯と残土を考える
2008/07/28記
 先週、地元の月山講に参加しての帰り道、首都高内環状線を走るバスの車窓から中川放水路と堤防を挟んで広がる住宅地を見下ろした。午後3時頃は満潮に近い時間帯だった事もあるが、水面より低い地盤に多くの低層住宅があることを見ながら、大地震や大型台風で堤防が決壊した場合を想定して、何故抜本的な対策が取られないのだろうかと心配になった。
 
 現在、国や都が行っている対策は堤防の強化と排水能力の向上であるが、私の考える抜本的対策は地盤の嵩上げである。
 
 今の家屋を取り壊し、客土を入れて地盤を海面下から解放して、新たに家屋を建設する事は天文学的な予算が必要となるだけでなく、対象地域住民の合意が必要な事や、段階的施工での切り回しや移転先の住居の確保、上下水道等の社会資本の見直しなどを考えると現実的にはとても大きな障壁が存在することは解るが、何万という命が危機にさらされているという現実も有る。
 
 地盤の嵩上げで最も必要となるのは土である。ところが東京で発生した残土は嵩上げに使われる事も殆ど無く、わざわざ房総半島まで運搬されてくるのである。羽田埋立用に房総の砂が搬出される公共埠頭の片隅で、東京から残土が運ばれてきているのだ。
 その残土は農地改良という名目で矢那や馬来田の谷に向かおうとして多くの反対運動などの問題を生じている。
 今、東京がやらねば成らぬ事は、房総の農地を嵩上げすることでなく、自ら管理する危険地帯の解決に自分の残土を使用することではないだろうか、とバスの窓にもたれて考えていた。
 
 さらに今年の予算で桜井地区の排水設計が上がっていた事を思い出した。自然排水でなくポンプによる強制排水という説明であったと思うが、ポンプのランニングコスト、大規模災害における信頼性などを考えると、最もシンプルな対策が信頼性を高めると信じているので、設計が進みきる前に勉強せねばならないなと思ったのである。