事故米の事件で思う
2008/09/11記
 ミニマムアクセス米として輸入した米の一部に基準以上の農薬が見つかり、また保管の際にカビなどが発生し、食料として流通させる事が出来ない状況になった米を「事故米」と呼び、それを工業用に流通させていたところ、三笠フーズという会社が食用米にブレンドして流通させ、その被害が拡大しているニュースが世間を賑せている。危機管理の点で農林水産省は3回のミスを犯したと私は思っている。
 
 1点目は、なぜ事故米を輸入してしまうのか、という点である。これはミニマムアクセス米の輸入が義務づけられている中で、工業用もカウントされるため、安価な事故米はコスト削減には有利になるというメリットが解説されている。食料を扱っているという自覚が足りない。ただ、今回の事件を受けて全て焼却廃棄するという方向になったようだが、余分な税金をかけるようだ。必要なのは輸出する側での検査体制である。
 
 2点目は、食料米を扱う業者に工業用米の流通もさせてしまう問題である。今回のように意図した犯罪だけでなく、保管や運搬の段階でのミスも考えられるので別系統の流通を義務づけるべきであるし、そもそも流通を回避して製品化するメーカーに直接入札させるさせるべきだと思う。バイオエタノールの技術段階がどこまで進んでいるかは知らないが、工業用アルコール化に回せば良かったのにとも思うところである。
 
 3点目は、検査態勢である。工業用に売却したように見せかけた空伝票を信じてしまったり、製品検査で素通りさせたりした点の不備である。たしかにブレンド比が少ないと検出されても安全基準の範囲に収まることも考えられるし、事実今まで健康被害などは報告されていない。
 
 これにより「宝山」や「喜界島」等の焼酎に対する風評被害が生じ、焼酎全体のイメージが悪くなるであろう。銘酒であった熊本の「美少年」も使用したと聞くと、酒米でなくても日本酒も作れるのかと変に感心までしてしまう。
 多くのメーカーは製品の回収を始めているが、膨大な廃棄を行うのか、工業用に回すのか、手を加えて再度流通させるのか、この後が気になるところである。
 これらに要した費用も含めて三笠フーズには損害賠償請求が行くであろうし、関係者は刑事罰も受けることになるであろう。しかし農水省から逮捕者が出ることは無さそうだ。根本的な問題は解決されない。
 
 飛行機や列車が事故を起こした場合、有識者を集めた事故調査委員会が設置され、問題の根元に遡った調査が行われ、悲惨な事故が再発しないように努められる。このような消費者問題に対しても消費者庁という公務員組織での対応を任せるという構造ではなく、有識者委員会を立ち上げる制度が必要なのではと思う所である。
 
 地方自治体でも同様に構造的な問題が起きていないか、今回の事件を人ごとだと思わない姿勢が重要であると思っている。