条例の制定権と実施を考える
2008/09/27記
 日本は立法、行政、司法のそれぞれに権限をもたせ、抑止と均衡を取ることで権力の暴走を防ぐという、三権分立の制度を取る国家である。
 木更津市という地方自治体でも市議会と市役所は別の権限を所有し、市議会は条例の制定権、市役所は条例に基づき運営を行うように構造上は分離されている。
 国政が議院内閣制を取っているため、国会の与党が内閣を構成することになるのに対し、地方自治体は首長が直接選挙で決められることになるから市議会と市長が対立することも生じる。
 身近な例では隣の袖ケ浦市では出口市長が色々と苦労を重ねている。例えば火葬場建設を断念した市長に対し、断念の撤回を議会として採決されるなどである。
 
 木更津市の場合は、市議会と市役所が衝突することは極めて希である。最近の例では職員給与を上げる条例について三ヶ月間の継続審議とした事が有ったが否決という手段は執らなかった。これは条例の否決は、すなわち市長の不信任というメッセージを送ることになるので、不信任ではないから再度考え直してくれよ、という意思表示になるのだという事である。青年会議所の理事会では理事長を不信任している訳ではなくても個々の事案が納得できない場合には反対決議をしていた頃と議員になっての現在では隔世の感が有る。
 
 条例の制定に当たっても、議員発議で条例を制定することは、議員の立場に関するものや請願に対して議長名で国などに要望を出すときを除けば、躊躇しているのが現状である。
 議員が必要だと思われる条例については、本会議や委員会等で制定の必要性を議員から要望することは有るし、多くの場合は市役所側で適切な条例を次回以降に上程して、議会採決される。
 他市等で実際に施工されている事例が有る場合は、議員でも条例案を作ることは難しくない。極端なことを言えば、他市の条例の固有名詞や期日を変更すれば条例は1本出来てしまうのである。
 そうでない場合でも、内閣法制局代わりに議会事務局を使い、関連法規や条例との整合を取りながら条例を作ることは、簡単ではないが出来ない話ではない。
 しかし、実際に業務を遂行する部署が現実的な判断を行いながら書き上げてきた条例の方が、運営の担保という点で現実的であり、市議会によるトップダウンより良いだろう、というのが現在の大勢である。
 
 特に9月議会で数名の議員から木更津市独自残土条例の制定を求める意見が出たが、議会での市役所の回答は県条例の強化を働きかけるという事で意見が噛み合って居なかった。
 県内11市町で制定されている前例を調べ、その中のエッセンスをまとめれば最新の条例を制定することは簡単であり、それが市民から見れば議会が活性化している事にもなるのだから・・・と思うが来週月曜日の議会最終日に議員発議で提出する方向には向かっていない状況である。
 
 『産業立地促進条例』のように、議会の経済環境常任委員会と何度も調整を重ねながら作られてきたものも有るし、今議会でも建設常任委員会に『協働のまちづくり条例』の協議が有ったように議会側の意見が策定課程で反映され得るものも有り、それは突然上程される多くの条例よりは遙かに望ましい事である。
 条例制定ではこのような協議していき市役所側から提案する形態が最適かも知れないと思いながら、議員の持つ条例制定権を実施しない事に対して悩みを深める日々である。