児童福祉制度を考える
2008/10/12記
 旅先で読もうと成田空港の免税(消費税を取られなかった)書店で購入した「子どもの最貧国・日本」(光文社新書:山野良一著)を読み終えて、政治の課題を今更のように深く考えさせられた。
 
 1994年に発表されたChildren's Defense Fundから著者が引用している部分が心に残っている。多少長いが抜粋して記載したいと思う。原本は同書の244頁である。
 『子どもが貧困に苦しんでいるとき、当該の子どもだけが被害者なのではない。子どもが貧困を原因とした発達上の様々な障害を背負ってしまったら、社会はそのコストを代償しなければならなくなってしまう。企業は良いスタッフを見つけることができなくなる。消費者は商品にもっと高い料金を支払わなければならなくなる。病院や保険会社は本来なら予防できたはずの病気を治療しなければならなくなる。学校の先生は補修や特別教育に時間を費やさねばならなくなる。一般市民は街頭で危険な思いをするかもしれない。政府は刑務所の職員をさらに多く雇わなければならなくなる。(中略)税金を払う人は防げたはずの問題にさらにお金を支払わなければならなくなる。(以下略)』
 
 この本の中で、子育て中の親に対する生活保護を却下したために親が生活のため子どもを育てられなくなり、却って児童養護施設に多額の費用を支出する場合も指摘している。
 また、幼少期の厳しい貧困は将来的に大きな問題を生じることも指摘しているが、そもそも日本社会は長いこと問題に取り組んでこなかったも記載している。私も福祉の多くもメニューの中に大きな穴が空きつつあることは意識していなかった。
 
 ある地元の掲示板
 『住宅を考えていますが、袖ヶ浦市と木更津で悩んでいます。福祉、教育、財政などの面から見てどちらがよいでしょうか?土地だけで見ると広くて安い土地が買えるのは木更津なので、注文住宅という希望を叶えられるのは木更津なのですが…』という問いに対し、5時間以内に
 『あなたの基準から考えたら、間違いなく袖ヶ浦の方が上。』
 『やっぱり袖ヶ浦です。ウチは子供が転校したく無い為、木更津に建てましたが本当は袖ヶ浦が良かったです。』
 『これから家を建てるなら袖ヶ浦でしょう。福祉も税金も違うし、わざわざ財政難の市に住む事はないと思います。』
 『福祉、教育、財政なら袖ヶ浦』等の書込が入っていた。
 地元の同世代以降に聞いても子育てのため親元から遠くもない袖ヶ浦に引っ越した友人が居るという話を聞いていたのではあるが、この掲示板を見て木更津市の行政関係者としては気になる。
 
 福祉が地方自治体によって大きな差が生じてしまう、現在の財政システムに対する問題は強く感じるが、それに憤りながら何もしないことは問題の発生を意識していない事だと思う。
 木更津は財政が厳しいので充分な福祉が出来ないから、支援を貰いながら子育てをしたい人は袖ケ浦市に住んで下さい、等という姿勢を示すことは出来ない。両親の介護をしながら子育てまでしている人に全てを捨てて引っ越してくれと言うことは出来ないのだ。
 福祉全般を裕福な自治体と同一にすることは出来ないが、将来に課題を送らないような戦略的福祉という物を考えるべきだし、そのための財源として削る部分も考えなければならない。
 
 福祉は専門外と思考停止することなく、進まねばならないなと1冊の本により考えさせられた。12月議会の質問通告まで40日も有るから、まずは現況を調べていこうと思ったのである。