重複行政の弊害を思う
2008/12/12記
 今回の議会に「財源の伴わない安易な地方移譲を止め、安全・安心の公共サービスを求める」陳情書が提出された。提出者は国土交通省全建設労働組合関東地方本部千葉国道支部である。
 
 道路法の第50条では『国道の新設又は改築に要する費用は、国土交通大臣が当該新設又は改築を行う場合においては国がその3分の2を、都道府県がその3分の1を負担し、都道府県が当該新設又は改築を行う場合においては国及び当該都道府県がそれぞれその2分の1を負担するものとする。国道の維持、修繕その他の管理に要する費用は、指定区間内の国道に係るものにあつては国がその10分の5.5を、都道府県がその10分の4.5を負担し、指定区間外の国道に係るものにあつては都道府県の負担とする。(後略)』とあり、第52条では『(前略)第50条の規定により都道府県の負担する費用のうち、その工事又は維持で当該都道府県の区域内の市町村を利するものについては、当該工事又は維持による受益の限度において、当該市町村に対し、その工事又は維持に要する費用の一部を負担させることができる。(後略)』
 解りやすくグラフにすると下図の通りである。
 道路については国が直轄で行った方が県の負担が少なく整備できるという法律であり、現行のまま地方移譲が進んだ場合は国道の維持に必要な県の支出が増え、県道の改修や維持に回す予算が少なくなってくる事は明かである。
 そのような意味で「財源の伴わない安易な地方移譲を止め」るため、財源を伴わせるために道路法の改正を求める陳情であれば大賛成であったのだが、内容を読むと千葉国道事務所の存続と組織拡充を求める陳情であったので私とは論点がずれた。
 
 例えば国道127号線は全て木更津出張所で維持管理をしているので安房郡での災害発生時には対応が遅れる事が予想される。千葉県の安房地域整備センターで対応した方が迅速なハズであるが、それに伴う予算が確保できないことが問題なのである。
 現在、この様に国と県の2重行政が問題視されているが、さらに考えると都道府県と市町村という重複もある。最も現場事情に精通しているのは市町村なので、可能で有ればそのレベルまで国の各種機関を財源と伴に移譲して、地域のことは地域で決定し、地域で実施することが住民参加につながるものと考える。
 
 確かに町村レベルでは専門家を確保できないので高度な事業を行えないとか、狭い範囲での整備が相応しくないものも沢山ある。具体的には町村界となっている河川が有った場合、堤防整備レベルに差が出ると、災害時に一方的な被害が発生することになるなど、広域行政で対応する事が望まれるものも有る。しかし、木更津市の矢那川のように単一自治体で終結する二級河川とか、県道の整備、林業事務所が行っている治山事業なども、財源を伴った移管は喜ぶべきものではないかと個人的には考えるが、役所の論理としては仕事が増えるからと乗り気ではない。
 今回の県立上総博物館のように予算的な裏付けがない移管は単なる県の合理化のようで抵抗感が有るが、財源さえ来れば市町村で行える業務が増え、権限の強化にもなり、また職員の育成にもなると思う。その点で国家公務員は自分の仕事の範囲を広げることに一生懸命なのは感心すらする。地方公務員と対照的だ。
 
 工事などのレベルで考えれば、国が出そうが市が出そうが、設計はコンサルタント会社であり、工事は建設会社が請け負って行うから、金額さえ有れば基本的には大差無い。その設計内容を見抜く能力や施工の品質を確認する技量、さらには業務遂行の公平性などの点で地方が国より劣っているとしたら、それは経験を積んでないからだ。その事は殆ど全ての段階で仕事を行ってきた私の経験から判断できる。
 真の住民自治とはどうあるべきかと、今回の陳情を受けて考えていた。