小櫃川の整備を考える
2009/02/14記
 昨日から春の房総キャンペーンの一環として内房線の千葉みなと駅〜木更津駅間で蒸気機関車が運行されている。そのため、沿線の多くでカメラを抱えた人達を見ることが出来るようになった。私は9日にあった試験運行の時に撮影させていただいたので取りあえず満足である。
 
 さて、カメラを持ちながらアクアライン連絡道路の測道から踏切方向を見ると小櫃川の堤防の上に付けられた農道が見えた。
 右の写真がその堤防だが激しく屈曲している事が解るだろう。これは小櫃川左岸になる万石側を撮影したものであるが、右岸になる金田側も同様に屈曲しているばかりか、鉄工所等もあり通水阻害になっている。
 
 河川工学を習ったものなら当たり前のことであるが、普通に考えても堤防は流れの阻害にならないように河道と平行に充分な高さと強度を持って作られなければならない。
 一方小櫃川の現堤防を見ると曲がりくねっているだけでなく、高さもまちまちで、所々は堤内外の通行のため切り下げられているところすら有る。「安全か?」と聞かれたら技術者の良心は「安全だ!」とは答させない物なのである。
 
 平成元年8月1日の集中豪雨による増水で、この小櫃川の水位が上がり、金田側を6分団で、巌根側を4分団で、全力を上げた土嚢積み大会が行われたことがあると聞く(その頃の私は公団職員として長野県上田市で上信越道の設計をしていた)。
 この勝敗は町が水浸しという残酷な結果となって現れる可能性が有るので双方とも必死である。
 幸い、堤防決壊には至らなかったが、最近のゲリラ豪雨を見ていると人ごとでは無いと考えてなければ行けない。
 
 小櫃川は2級河川で、千葉県が管理をしている。上記の前にも昭和45年に大規模な水害が発生し、その時には中流域の橋梁の多くが流された。その防災対策として、河道を改修し亀山ダムが造られた。昭和61年以降には亀山ダムの上流側に片倉ダムも完成したため、安全度の上からは緊急を要しないということで写真のような風景が残されることになったのである。
 事実、現在でも小櫃川の河川計画というものは存在せず、堤防から河までの間も堤内地という河川法上の規制を受けるものでは無いのである。だから堤防の内側に民家や鉄工所などの建設も認められているのだと納得する。
 また、区画整理事業という大型土木工事を行いながらも堤防が改修できない(下図の南側の青で示す官民境界線がギザギザに成っている)のはそもそも計画がないからだと理解するのである。
 
 
 河川改修は膨大な予算を伴う事業であり、なかなか踏み切れないのも心情の上からは理解できるが、大雨の恐怖と戦う住民には仕方ないと割り切れるものではない。
 本来は充分な予算の裏付けさえ頂ければ、基礎自治体である市で管理しても良いと個人的には思うのであるが、市の関係者にその話をすると「とても面倒見られませんよ」と逃げ腰である。なかなか地方分権の道は険しいのである。
 
 今回の知事選の争点にはこの問題を誰も掲げていないし、そもそも問題とも思っていないかのようだが、この様なところを一つずつ解決してくれる県政を求めたいと、SLを見に行って考えてしまったのである(6月2日に加筆修正実施)。