矢祭町で考える | |||
2009/04/18記 | |||
新年度の始めでは有るが時間的な余裕が確保出来たので、1月29日に講演を頂いた根本元町長が話された『もったいない図書館』を見るために福島県矢祭町までドライブをしてきた。正確には目的地はその先にある三春の滝桜で有ったのだが、宿泊も矢祭町に確保し、少し町内を見て回り、「合併しない宣言」や「議員日当性」の背景に有る町の雰囲気を味わえればと思ったのである。 15日の出発が遅かったことと、東関東自動車道の大栄ICから先は国道51号線及び118号線を走ったので速度が上がらなかったこともあり矢祭町到着は午後2時を回ってしまった。 町の中心部に着く前に国道沿いにある矢祭山公園に立ち寄り久慈川の流れと奇岩を見る。北上して桜前線に追いついたようで、町一番の観光地と言われる矢祭山に咲く誇る桜が爽やかだった。国道沿いの売店では鮎の塩焼きを売っており、好感が持てる。 観光地の散策は30分程度で済ませ、早速町役場に行く。古い建物がそのまま利用されており、入口には下の写真のように休日の窓口が8時半から5時半まで開いておりが印鑑登録証明書・住民票・戸籍・納税証明書・所得証明書・軽自動車税納税証明書等の発行と町税・各種使用料の納付が行えることが貼ってあった。 職員が百名を切っている中で休日窓口業務を行う姿勢に感心しながら、役場の中の雰囲気を見る口実として観光案内図が無いか聞くために「自立総務課」の窓口を訪ねる。すると担当者が観光の担当者に内線で連絡を取りパンフレットを持って来させた。小さな役場とは言えワンストップサービスが良くできているし職員の応対もハキハキしている。噂通り職員のモチベーションは確かに高そうである。 ちなみに平日の窓口は7時半から6時45分まで開いている。そのため職員の勤務態勢は通常勤務(8:30〜17:30)以外に早番勤務(7:30〜16:30)と遅番勤務(9:45〜18:45)を取っているようだ。これくらいなら我が市でも出来そうだと思うところである。 観光ガイドをもらって内容を見ると観覧席が着いた競泳用公認50mプールと競技用公認屋内温水25mプールに流れるプールや子供用プールなどを併せ持った『スインピア矢祭』という町営プールと、広大な森の中にログハウスや大きな展望台のある『舘山ふるさとランド』など、人口7千人の町では維持管理が負担になりそうな施設が目に付く。 図書館に行く前に役場の裏山になる舘山ふるさとランドを見に行くと展望台は閉鎖されており、施設に人の気配はなかった。平日だから仕方ないのだろうと思うが、今までもひたすら節制だけをしてきた自治体では無いことが解ると、逆に親近感が涌く。 そしていよいよ水郡線東舘駅の直ぐそばにある『もったいない図書館』に行く。庇と看板だけ新しくしているが他の部分から昔の武道館を転用していることが良く解る。同じ建物に教育委員会部局が入っており、入口で靴を脱いで上がり右手奥の部屋まで行く。 予想外と言うと批判を受けるかも知れないが、小綺麗で大きな図書室という感じで木の感覚に好感が持てる造りであった。奥の特別室との間に掲示してある資料によると全国から送られた約44万冊のうち6万冊弱が開架してあるようだ。最近流行の視聴覚エリアが無いことは仕方ないが、町議会議事録や予算書などの行政資料のコーナーが無かった事が想定外であった。 それでも広報紙のファイルがあると言われそれを読み始める。既に午後4時であり閉館まで2時間を切っていた。図書館を訪れる子供達は元気良く挨拶をしており清々しい(図書館としては賑やかかも知れないが気にならない)。広報紙からは町の行政改革を伝える見開きの頁とか、議員日当性を議決したときの町議会議員の『町民とともに立たん』という文章などに感動を覚えながら気が付けば閉館時間である。コピーを3枚ほど頼むと外部に発信の場合は役場の許可を得て下さいと言われるので、気になる方は矢祭山を訪問してくれることを期待してここには記載しない。 日没後に本日の宿泊先であるユーパル矢祭に移動する。大きな会議が開催できるような会場としての機能も兼ねているのだろうが町の規模の割に立派な施設である。フロントで聞いてみると町が建てて運営は民間に委託されているとの事である。行政からの補助も入っているようだが金額の確認はしなかった。 過去の昭和の合併騒動で地域に大きな傷を残したことや、合併する対象である他の東白川郡の自治体の努力が不十分だと目に映ったことが原因とは言え、合併しない宣言以降の矢祭町は活力が溢れている。人件費を削減しながらサービスを向上させ、工業団地やニュータウンの造成のために特別会計を作り企業進出や新住民の増加も目指している。 それでも人口の減少は続くし、自主財源比率は向上しているとは言えまだ0.3以下である。町の特色である町営プールやユーパルも経営の重荷になってくるだろう。それでも戦い続ける町の姿勢を見ながら、より恵まれているはずの木更津で何をしているのかと自らを戒める思いをしてきた。 |