維持管理を考える
2009/07/12記
 昨日、久しぶりに富津の臨海工業地帯に行き、真新しい荏原製作所富津工場を始めとする工場群を見てきた。荏原製作所富津工場の運転開始はまだ来年の話であるが、雇用規模で590人と聞くので、富津市の人口減少の歯止めになるだろう。東京電力富津火力発電所3号系列の固定資産税なども考えると近隣市でありながら羨ましく思えたりもする。
 
 さて、その工業地帯で東京臨海道路の橋梁組立工事を行っているものが目に付いたので海越しに見たいと思い富津みなと公園に向かった。車を停めて先端を目指すとフェンスが倒壊しているという理由で園路が通行止めになっていた。そもそもフェンスを仮復旧すれば済む内容であるが、半歩譲っても園路から離れてフェンスに行かないように倒壊箇所周辺だけ立入禁止にすればよいのに管理責任を過剰に意識した、利用者の利便を考えていない措置に腹が立った。
 大きく回り込んで、港の護岸から先端に行くと、そちらでも擬木柵が塩害で破壊されて、そのままになっている。ロープを張った痕跡は残っているのであるがすっかり緩んでしまって転落防止の効果もないが、そもそも目前にテトラポットが設置されており転落の危険がある高さではない。
 さらに進んで高台に設置された鋼材で作ったピラミッド風のモニュメントに近づくと錆が目立っており、そこもロープで囲いを作り立入禁止としている。足元が悪いのか上から部材が落ちてくる危険性があるのかは見て解らなかった。
 このように、せっかく作られた施設が、建設費に比べれば遙かに少ない維持管理費の工面が出来ず、荒れ果てたものとなっている事例は多くの場所で見られる。建設段階で多くの予算が付き、技術者が喜んで設計を進めたものが、管理段階になると悲惨な扱いになり、責任を取らないためには立入禁止措置を多発するような姿勢は税金の無駄遣いだと言わざるを得ない。
 
 本市においても、案内施設や公園のモニュメントの破損が進み、落書きに被われているものが数多く放置されている。左の写真は太田山公園の展望台に書かれた落書きである。中之島大橋等にも沢山有るが、それを放置している事は管理が行き届いていないと宣言しているようなものである。
 道路や学校施設についても最低限の改修は行っているが、程度の高い維持管理が行われているとは言い難い状況にある。土木構造物について思うことは、日本道路公団で中国自動車道の維持管理を行っている頃は、管理の重要さを繰り返し教育されたものだが、高速走行が行われる幹線道路のような管理レベルが求められる市有財産は無いのか、そもそも有料事業と税金での事業に起因して文化が違ってしまっているのか、維持管理に充分な予算が回されることが少ない。
 
 新しく施設を作ると言うことは、それを利用する人達に利便を与えることを目的としているのであり、多くの予算を使って作成されたものは適正な維持管理を行って当初の目的を維持することは最低限の責務である。TDLのような場所では単なる維持管理だけでなく常に更新を行うことで人を引きつけている。行政の所有する公園施設でも見習うべき点は多いだろう。
 公園や道路だけでなく、例えば消防車両などでも日常の維持管理だけでなく、適切な頻度で更新を行う必要がある。それは目新しくして人の注目を引くと言うことではなく、維持管理だけではどうにも成らない経年劣化が有るからである。そのような事も考えて行かねばならないだろう。
 
 そもそも維持管理が困難なほど行政財産を持つことは慎重にならなければならない。だから世間から反対意見が出てくることも承知の上で学校の再編とかの合理化策も考えて行かねばならないと思っているし、金田事業でも合理化の検討は重要である。富津の海を見ながら、そのような事を考えていた。