高速道路無料化を考える
2009/08/03記
 一昨日からアクアラインがETC使用車に限り、普通車で800円に値下がりした。軽自動車では片道わずか640円にすぎなくなったのだ。これは来年度末までの20ヶ月間の社会実験という位置付けであるが下表のように料金抵抗が大幅に減るので様々に影響が出るものと思われる。 
車種 通常料金 ETC割引 
7月まで 8月から
軽自動車等 2,400円 1,860円 640円
普通車 3,000円 2,320円 800円
中型車 3,600円 2,780円 960円
大型車 4,950円 3,830円 1,320円
特大車 8,250円 6,380円 2,200円

 一方、今月末投票の衆議院選挙で民主党は高速道路の無料化を掲げている。地方部から暫定的に無料化を広げていくと言うことであるが、高速道路問題のシンボルとなっているアクアラインは象徴的に無料化される可能性が高い。
 
 さて、日本道路公団や地方道路公社は高速道路とは別に一般有料道路も建設してきており、料金による建設費の償還又は法定の料金徴収期間後は無料開放することが原則であった。有名なところでは「いろは坂」や「やまなみハイウエイ」が有り、県内でも銚子大橋や房総フラワーライン、勝浦有料道路などが無料に成っている。房総スカイラインも2008年に無料化する計画であったが鴨川有料道路の改修工事との料金プール性を実施され、今暫く有料道路が続くことになっている。
 その一方で、道路整備特別措置法15条に、道路管理者が当該道路の維持又は修繕に関する工事を行うことが著しく困難又は不適当であると認められるときには、料金の徴収期間経過後も有料管理を継続できるとする維持管理有料制度が有り、当初は本州と九州を結ぶ関門トンネルだけだったのが、近年は平戸大橋(長崎県)、富士山(山梨県)、真鶴新道(神奈川県)等もこの制度を適用された有料道路になっている。これは維持管理に多大な費用を要する道路に限られた財源を回すことは却って不公平であるという視点から永続的に維持管理を受益者負担とする制度である。
 アクアラインのように膨大な維持管理費を要する道路を無料化するというのは、この点でどうかと思うところである。
 
 道路全般の視点から言えば、旧運輸省が管轄する道路運送法上の恒久有料道路(例えば万座ハイウエーや芦ノ湖スカイライン等民間会社が経営する道路)や農水省が管轄する森林組合法による有料林道(例えば妙義荒船林道や白山スーパー林道)等のように各省庁の縄張り争いで発生している有料道路事業を一元化し、道路は公共のものだという視点に立って無料開放するよう努力して貰いたいと思う所である。
 
 料金収受の点から考えるとアクアラインを無料化することは難しくない。現在の本線料金所でアクアラインの料金を徴収しなければ良いだけだからである。同様に四国や北海道についても一斉に無料化するので有れば難しいことはない。
 一方、例えば東北道の仙台以北を無料にするとした場合は、無料区間と有料区間の間に新たに本線料金所を設ける必要が出るなど、簡単には進まないものと思う。工事費を掛けない方法としては有料区間と無料区間の間の本線を封鎖して、一旦料金所を通過して再度乗り直す方法もあるが、この場合は時間短縮効果が落ち、大規模な渋滞やそれに起因する追突事故等が予想され、恒久措置としては公安委員会の許可は得られにくいだろうと思う。
 無料化した場合は単なる交通障害である料金所は撤去されることが望ましいが、民主党から自民党に政権が戻ったときには再度料金所を設置したり、有料区間との間にある本線料金所を撤去するなどのような無駄な工事が繰り返される事を避けるよう、単なる政争の具にするのではない長期的な道路政策を決める会合が今回の衆議院選挙後に開かれる必要が有るだろうと考える。
 
 民主党の提案する無料化では料金所が必要ないため、簡単に一般道との接続が行えることになる。例えば館山道に対し、小櫃川広域農道や県道木更津末吉線からのハーフインターを造ることも技術的には難しいものではない。
 しかし、そのような実例である名阪国道の無料区間(天理〜亀山)は加速・原則のレーン長が少なく、高速走行に若干の支障を生じている状況である。道路線形が厳しいこともあるが自動車専用道路の中で事故発生率がトップクラスの道路である。本当に高規格な道と単なるバイパスは明確に区分しないと、全てが低い方に合わされ、安全でも無く、高速移動もできない状況にすることは避けてもらいたいと思うのである。
 
 今年の夏は東北や北海道では冷夏で今年は1993年以来の不作に成るだろうと予想している放送を聞く。その年は細川連立内閣が成立した年で戦後初めて自民党が下野した年である。
 今回の選挙で、マスコミ等の世論調査を見ていると政権交代が起きる可能性は高く、道路行政に限らず様々なものが変わる事が予想される。実際の施策にあたってはきちんと問題点を掘り下げて対応して貰いたいと、アクアラインが値下げに成った日々に考えていた。