供託金制度を考える
2009/08/19記
 昨日衆議院議員選挙の告示があり立候補者が出そろった。千葉12区では3名、日本全国では1374名が衆議院を目指す戦いを開始したのである。
 
 選挙に出ることで政見放送が行えたり公的な選挙公報で意見が主張できることなど、公の場で、公の負担で意見と名前を売ることが可能になる。ただ売名行為のためだけに出てくる者を防止し、選挙事務の効率化を図る目的で供託金という制度がある。これは立候補する者は、それなりの「覚悟」を示しなさいという事である。
 木更津市のような普通市の議会議員を目指す場合は30万円を供託することになり有効投票数を議員定数で割ったものの1割以下の得票しか得られなかった場合は没収となる。ちなみに町村議会に立候補する場合には供託金は必要ない。
 
 衆議院の小選挙区に立候補する場合は供託金が300万円であり、比例区にも重複立候補する場合にはさらに300万円が上乗せされた600万円を供託する必要がある。なお、比例区単独の場合も600万円である。小選挙区の場合は有効投票数の1割以下の得票しか得れなかった場合に没収され、比例区の場合は立候補者数から当選者の2倍を引いた人数分が没収されることになる。
 ちなみに重複立候補は「政治団体のうち、所属する国会議員を5人以上有するものであるか、近い国政選挙で全国を通して2%以上の得票を得た」ものが許可しないとならないので、新たに選挙に挑戦するような団体では出来ないことになっている。
 
 海外における供託金額は下表の通りである(Wikipediaによる)
国名 金額 備考
イギリス 約9万円
カナダ 約7万円
ニュージーランド 約1万5千円
オーストラリア 約2万5千円 上院
約5万円 下院
インド 約2万5千円
シンガポール 約79万円
マレーシア 約90万円
韓国 約150万円
 イギリスが制度の発祥地なので、主に英連邦に属している国でこの制度が設けられている。東・東南アジアの国々を除き、日本より遙かに低い金額であることに驚かされる。
 また、アメリカ合衆国やフランスでは立候補にあたり住民の一定数の署名を集めることが必要とされているが、供託金は不要である。特にフランスの場合はわずか2万円であったものを1995年に廃止している。ドイツ、イタリアなどにも供託金制度は無いようだ。
 個人的には選挙活動に当たって公的支援もあるため、ある程度のハードルが必要だと考えているが、300万円にもなると所得の低い人の参政権を制限する結果に繋がりかねないという意見にもある程度の説得力がある。
 
 供託金の事例を考えるため、例えば今回の選挙で全国的に候補者を擁立した幸福実現党の場合を計算すると、下表のように11億円を超える金額を供託したことになる。得票数が足りない場合は、その多くが没収され国庫に入ることになるのだ。ただし、公費で賄われる選挙費用(ポスター、車両等)も多額にのぼると思われるので国が一方的に得するわけではない。
地区 小選挙区 比例区 立候補していない小選挙区
北海道 11 2 北海道11区
東北 23 3 宮城5区、福島3区
北関東 32 4 (無)
南関東 32 5 神奈川1区、神奈川2区
東京 23 7 東京3区、東京10区
北陸信越 19 4 福井1区
東海 32 5 岐阜5区
近畿 47 7 大坂17区
中国 19 3 山口4区
四国 13 4 (無)
九州 37 5 福岡7区
合計(人) 288 49
供託金の額
(万円/人)
300 600
供託金総額
(万円)
86,400 29,400
合計額
(万円)
115,800 ※私の試算による金額
 
 ちなみに今回の選挙で全立候補者から出される供託金額も計算してみると67億86百万円にもなる。時節柄多くのコメントは避けるが、これだけの「覚悟」を掛けて戦われる選挙は、本当にこの国を何処に向けようとしているのかという議論で充実されることを願うばかりである。