決算審査での取組を思う
2009/09/21記
 前回の思うことから時間が空いてしまった。HP更新の時間を決算書類熟読に回したことや、政権交代に伴う世の中の流れを見ていたこと、個人的に多忙だったり気が乗らなかったりしたこと理由は沢山あるが、およそ2週間ぶりに記載する事にする。
 この間で鳩山内閣が成立したり自民党総裁選が始まったり、中央でも色々起きているが、千葉県職員が多くの部署で行った30億円という不正経理が自治体を見る目を厳しくさせているだろう。
 
 15日から17日まで3日間に渡って行われた決算審査委員会において、木更津市でも同様の問題は起きていないか、今後も起こさせないためにはどうすればよいかという姿勢で臨むことに決めたのは、議会に今市民が望んでいる事と思ったからである。
 もちろん、金銭の収受や会計書類の適切な事務処理については会計室や監査室が適切に管理している中で、本来議会に求められる事は、執行した事業が当初の目的を正しく達成し効果を上げているかという評価の部分であることは承知している。しかし、県庁で生じた不正経理は業者への預けという形を取っていたので『金銭の収受や会計書類の適切な事務処理』が正しく行われていたので長年気付かれずに居たのである。そのため今回は大きな話は先輩議員に任せ、細かい点に拘って決算審査に取り組む事とした。
 
 業者に預け金を生む構造としては、長年の信頼関係が必要であり、それは随意契約という形で、その業者を継続的に指定しないと達成が難しい。決算資料から平成20年度における1件30万円以上の物品購入と委託契約の契約形態を拾い出して整理すると下表の通りになる。
担当部・課等 物品関係 委託関係
一 般 指 名 随 契 一 般 指 名 随 契
総務課 1 1 1 3
管財課 10 11
経営推進課 5
情報政策課 2 13
財政課 1
市民税課 4 5
資産税課 1 4
納税課 2
市民課 1 3
保健年金課 1 9
生活安全課 1 4
社会福祉課 1
障害福祉課 15 1 4
高齢者福祉課 2 13
児童家庭課 1 2 6
健康推進課 1 1
環境衛生課 1 3 3
環境保全課 5 2
クリーンセンター 6 3 16
農林水産課 1 6
商工観光課 2 2
地方卸売市場 1 1
管理課 1
土木課 16 19
都市政策課 1
都市整備課 1 10 6
駐車場特別会計 1 2
建築住宅課 2
下水道推進課 6
下水道特別会計 16 5
議会事務局 1 1
農業委員会事務局 1
選挙管理委員会 2 3 2
消防総務課 4 4
教育総務課 1 22 15 9
学校教育課 2 3 7
生涯学習課 1 1 6
文化課 4 1
体育課 3 4
まなび支援センター 2
図書館 1 1
中央公民館 1 4 6
郷土博物館 2 10
小計 0 7 75 1 100 209
比率 0.0% 8.5% 91.5% 0.3% 32.3% 67.4%
 
 上記で「一般」と有るのは資格がある業者全体に門戸を開いた一般競争入札、「指名」と有るのは入札に参加する業者を行政が選定して行う指名競争入札、「随契」とあるのは入札を実施せず特定の業者に発注する形態の随意契約で、当然ながら随意契約が最も不透明な事態となる。なお、決算資料には工事関係の契約も載っていたが実際に物事を行うので割愛した。
 もちろん、緊急を要する場合や特別の専門性や地域性が有る場合など随意契約が必要になる事例が生じることは認識しているがあまりに多すぎないだろうか。質問に対し「随契理由書」を作り、何故随意契約を必要とするか審査しているという回答であったが、道路公団や住宅都市整備公団で発注側に身を置いた立場から考えると、その審査の結果でやり直しを命じられることは少ない。
 
 さらに今回の決算審査にあたり監査室から提出された意見書の中に『出納整理期間中に物品購入等の処理をしている事案が多数見受けられ(中略)内部統制を確立して機能させられるよう取り組まれたい』という文書があった。単年度予算という自由の利きにくい制度の中で、通年を経て節約に取り組んでいた予算が年度末に残った場合、それで不足しているものを一度に買いたくなることは感覚として理解できるが、場合によっては翌年不測の事が起きるかも知れないので業者の側に積んで置こうと考えることも有るだろう。現に、それが普通に行われていたのが千葉県庁で、預けた業者の倒産などで回収不能になっている事例も多くあるし、不正処理という心理がモラルハザードを招き、個人的な流用となっている事例も報告されるので、目は小さい内に積まねばならない。
 例えば、予算の段階で諸費が僅かしかないのに決算で膨れている事案では、年度末の残金を不正処理したと疑われないよう、追加された事業を3月補正で上げることで決算を透明にする等の改革が望まれることろである。
 
 審議の中で、出納整理期間中に最も多くの処理を行った部は何処かという質問が議会側からあり、教育部という回答があった。小中学校が年度末に大量の買い物を行い、その書類処理が年度が変わってから行われるための現象と説明があったが、地方自治法第98条に基づく書類審査を求める議員もあり、本決算委員会ではその書類も目にすることになった。
 ちなみに地方自治法第98条とは、その1で『普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(中略)に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、教育委員会、(中略)の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる』と定められている議員の権限である。
 
 提出された142頁に渡る資料では起案日が3月31日以前のものも多くあり、それが何故出納整理期間か一目では分からない。理由を聞くと年度末に監査室が起案した文章の支出負担行為番号より遅い番号の書類は、例え起案日を遡っても明確に解ると言うことであった。本市の監査室が非常に機能していることに改めて驚かされる話である。
 中を見ると、その番号より若い、つまり適正に年度内に処理された案件も9頁ほど紛れ込んでいたが、いずれにしろ確かに膨大な量である。支出の摘要を見ても、明確に記載してあるものも有る一方で備品一式という曖昧なものもある。また同じ決算項目で同じ業者に支払うことを起案しながらも2枚の起案書に別れているものも多数見受けられる。しかも多くが連番で、同じ日であったり、起案日を変えてみたりと、私も昔やっていたような苦労の後が見えるが、やはり適切な処理とは言い難いであろう。
 複数の文章に分けるのは、1件の金額を30万円以下に納め、随契理由書を作らずに済むためではないかと疑いたくなるのは、今回の発注が特定の会社に集まる傾向があるからである。教育総務課と学校教育課が出納整理期間中に発注した業務のうち、給食センターに調理関係機器を購入した高額の1件を除き、会社別に集計を取り、金額順にならべると下表のようになった。 
会社 支払件数 支払金額(円) 備考
1 24 6,648,189
2 20 4,197,669
3 18 3,379,875
4 11 2,791,368
5 18 1,355,550 家電量販店
6 9 1,247,914
7 3 470,400
8 1 466,305
9 2 328,000
10 6 323,960 千葉市の業者
11 3 207,650
12 5 139,760 家電量販店
13 1 120,750 都内の業者
14 1 113,925
15 2 75,675
16 1 63,000
17 2 56,463
18 5 30,894
19 1 25,326
20 1 16,800 千葉市の業者
21 1 2,940
135 22,062,413
 
 備考で無記名なのは全て市内の業者である。具体的な会社名の公表は控えるが、上位3社で全体135件のほぼ半数を占めるというのは、学校側の円滑な事務執行上とは解っていても、やはり本当に公平で良質で安価な購入となっているかという立場で検討が必要であろう。
 今回は教育部が多いという事で代表して審査されただけで、他の部も大同小異だろうから今後も注視すべきである。
 ちなみに出納期間中の物品購入の疑義に関して教育長と市長から適切な事務執行に勤めるよう反省が述べられた。決算委員会としては異例のことだろう。
 
 千葉県で不正経理が発生後、木更津市役所の中で確認を促す文書を流し、情報が寄せられた段階で本格調査に係る方針だというが、現在何も情報が寄せられていないと言うことである。
 本市の厳しい予算状況を、自らの地域手当減少という中で身に浸みて感じている職員に取っては不正流用する余裕がないことは解っているはずであり、その様に疑わしい事象も生じていないが、県の事態を他人事と思わず、本市で生じない制度上の工夫、金額と物品又は委託成果品の適正さの確認体制、内部調査制度など様々に工夫して、自治体が失いつつある信頼の回復に勤めたいと考え、「思うこと」に記載する。