館山道工事停止に思う
2009/10/08記
 鳩山内閣が自民党政権時代に行った補正予算の見直し作業を進める中で、高速道路を対面通行させている暫定運用区間を4車線化する工事を停止し、総事業費3,255億円(うち国費2,613億円)を削減することが発表された。工事が停止された区間は関越道上越線(信濃町IC〜上越JCT)、東関東道館山線(木更津南JCT〜富津竹岡IC)、東海北陸道(白鳥IC〜飛騨清見IC)、近畿道紀勢線(御坊IC〜南紀田辺IC)、四国横断道(鳴門IC〜高松市境)、九州横断道長崎大分線(長崎IC〜長崎多良見IC)の6区間である。この中には地元の通称館山道が入っている。
 
 この民主党の政策に対し、報道ステーション取材チームが地元の意見を求めるため、5日の午後に木更津市議会事務局に対し『議員のコメントを求めたいので誰か市役所にいますか』という問い合わせがあったようだが、たまたま全員不在で、私がタッチの差で顔を出したが間に合わなかった。
 その後、取材チームは市議会のHPで建設常任委員会の委員に電話をしたようだが、大野委員長は行政視察で不在、次いで私の自宅にかけたられた電話は家人が新手の詐欺かと勘違いして伝えられず、名簿順では3番目になっている高橋てる子議員でアポが取れてコメントする事態になったものと勝手に推察している。
 
 高橋議員は開発より福祉という立場が明確な議員なので、工事停止は当然で、それより福祉に力を入れて貰いたいという旨のコメントが流される事になった。私が受けた自衛隊基地内でのゴルフ場に対する取材の経験では長時間話した中の数秒が流されているので本人の真意が伝わっているかは定かではない。
 いずれにせよ偶然とは言え木更津市を代表することになってしまった高橋議員が高速道路の4車線化は必要ないと取れるコメントをしたので富津以南の人達は『木更津はアクアラインで東京につながったから、先のことはどうでも良いのか』という不満を持った可能性がある。では、仮に私がコメントした場合はどうなったかと自問自答してみた。
 
 今回執行停止をした補正予算には大きく二つの意味があったと考える。一つは高速道路が4車線になるという工事の結果部分であり、もう一つは工事施工による労務者の雇用創出や材料メーカー等の売上減少への歯止めである。
 前者は交通容量の拡大に伴う南房総の産業・観光の発展や、緊急車両の到達時間短縮による防災上の効果など、将来に渡る効果が期待できる項目であり、後者はリーマンショック以降の急激な景気後退を受けて民間の設備投資が冷え込んだ建設業界へのテコ入れという緊急経済対策の意味がある。
 
 前者の視点に立って房総半島の道路政策を振り返ると、国道改良事業の外房(R128)側と高速道路事業の内房(R127)側と方針の違いが見て取れる。例えば外房側は小湊バイパスや勝浦有料道路のように旧市街をバイパスする道路整備事業が進んでいるが、内房側では保田や勝山等に今も市街地でクランクするような国道であり館山バイパス以外には整備が進んでいない。従って、高速のフル規格化が遅れると生活道路になっている既存国道に多くの車両が入ってくるので、それなら国道の整備を進めてくれという地域の主張も良く解る。
 また、アクアライン大幅値下げの結果として房総半島の観光客が増えたのはよいが、片側2車線を1車線に絞る場所や終点の富浦料金所で頻繁な渋滞が起きており、土日は高速道路ならぬ低速道路化しているのでどうにかして貰いたいというのも解る。
 一言でコメントするなら、館山道が対面通行区間が多いため整備されていない国道に観光客が溢れて住民は迷惑しているから、早期の4車線化は必要だと考える、というような話になるだろう。
 
 なお、富津竹岡IC以南の富津館山道は国道127号線のバイパスとして道路法上の道路として位置付けられているが、今回停止した区間は高速自動車国道法の道路であり法定路線名称は東関東自動車道館山線として指定されていて、厳密にはバイパスではないと思うが、その様な形式上の話は取りあえず脇に置く。
 房総半島の交通事情を考えると、個人的には4車線化工事より富浦以南(丸山か千倉方面)への延伸工事の方が重要だと思うが、大がかりな事業となるので今回の補正予算の工事費を削ることに対するコメントとしては全く場を得ていない話になってしまう。参考程度に、平成19年夏に開通した君津IC〜富津中央IC間では9.2kmで400億円が懸かっているから、丸山での延伸とした場合は延長10kmぐらいだろうと思われるのでやはり400億円近い事業になるだろう。
 
 緊急経済対策の意味で考えれば、輸出関連業界に勤めていた非正規労働者が大量に職を失っている中で、現に上昇基調にある失業率を抑制するためには、国からの直接給付より仕事を作る方が重要で効果があると思われる。
 近年の建設業も機械化が進んでおり、未経験者は交通誘導や単純な軽作業しか出来ず、簡単に雇用の受け皿になれるとは思い切れないが、それでも他の職種より単純肉体労働者の需要も多いだろうから、他に有効な雇用促進対策がなく経済状況が改善してもいない限り、安易な停止は雇用不安を招きかねない。
 こちらの視点でコメントすると、他の有効な雇用対策も立てずに一方的に廃止するのは無責任だ、というような話になるだろう。
 
 まだ新政権は動き始めたばかりであるが、何が起きるか見通せない期待と不安の中にある。私も大臣で競い合っているかのような展開の早い対策の中には疑問を抱くものも有れば、喝采を送りたいものもある。本日、神奈川等で参議院議員補欠選挙が始まったが、国民の多くは引き続き変化を求めて民主党系候補者に投票することだろう。ただ、小泉自民党と同じように鳩山民主党に白紙委任したわけではないから、現実的で地方が困窮しない対応を期待するばかりである。
 
 今回は、テレビにコメントする機会を失った分、館山道の4車線化について、たまには頭を整理してみようと試みたのである。