広域水道事業を考える
2009/10/20記
 今月の9日に新人議員で水道事業の勉強会を行ってきた。項目は@木更津市の水道事業体系、A水道事業会計の解説、B広域水道企業団との関係である。@とAについては自らの市を良く知ると言う項目であるが、Bについては県との取り決めなどの経緯を含め君津広域水道事業団からの受水について学ぶものであった。
 
 君津広域水道企業団は将来的な水不足に対応する施設として1972年に計画が動き出し、1978年に四市と県で設立した。この時の水供給認可数量は135[千m3/日]であった。
 1980年の大寺浄水場第1期工事完成の年に千葉県・木更津・君津・袖ヶ浦に水供給を開始し、翌年から富津市にも供給を始め、その後、1992年には十日市場にも浄水場を設け、大寺と双方で農業用の堰で止められた小櫃川の水を飲料水に変える設備を維持し、何度かの拡張も経て現在に至っている。
 
、アクアラインの計画議論の中で、千葉県側のアキレス腱と言われていたものが水の供給であり、その対策として夷隅郡や安房郡では利根導水事業を採択し、小櫃川を有する四市では亀山・片倉・追原の3ダムによる供給を行うことにしたのである。そのため、館山市では現在問題となっている八ツ場ダムの水利権が生じているものと思うが、四市では取りあえず関係ない事になっている。
 
 1980年の水供給開始の年には亀山ダムも完成。追原ダムはその後も見直しで建設計画が白紙になったが、片倉ダムは平成14年に完成し供用開始する。
 その間、水供給認可数量は1983年3月に215[千m3/日]、1996年3月に235[千m3/日]と増えていったが、2000年1月には認可数量を給水する目標年度を2009年度(平成21年度)から2018年度(平成30年度)に延伸する事を決め、翌2001年5月には2025年度(平成37年度)に延伸すると供に、最大給水量を235[千m3/日]から205[千m3/日]に減量する建設変更計画を行った。ちなみに2007年度(平成19年度)の日最大供給量実績は145.107[千m3/日]に過ぎない。
 
 県としては地元の四市の人口が伸びて水が足りなくなると泣きつかれ、ダムや浄水場を作ったので、有る程度のノルマを課して投資金額を回収しようと考えている。人口が伸びないのはかずさAPへの企業の張り付けが遅いからで、全て地元市の責任にされては敵わないと思うのだが、県と市の力関係のためか、現実的な不平等が生じている。
 具体的な話をすれば、君津広域水道企業団から平成19年度に千葉県が購入した単価は126.6[円/m3]で有ったのに対し、木更津市は153.6[円/m3]で購入したことになる。企業団全体の平均単価が139.4[円/m3]であるので、これとの差額を計算すると千葉県は2億38百万円の利益が出て、木更津市は1億6千万円の損失が生じたと考えられるのである。
 
 この原因の大きな部分は、先に言ったように各自治体にノルマとしての責任水量を課し、それだけ買おうが買うまいが、その責任水量に0.8を乗じて、さらに109[円/m3]の単価を乗じた金額を請求するという制度にある。決算が明かな平成19年度(366日/年)で計算し、表にまとめると下記のようになる。
事業体 確認水量 責任水量 ノルマ費用
m3/日 m3/日 m3/年 百万円
千葉県 60,000 60,000 21,960,000 1,915
木更津市 63,700 45,800 16,762,800 1,462
君津市 32,500 20,800 7,612,800 664
富津市 17,500 14,250 5,215,500 455
袖ケ浦市 31,300 22,750 8,326,500 726
合計  205,000  163,600  59,877,600  5,221
 ※木更津市では16.7628×0.8×109≒1,462となる。
 
 上記で「確認水量」と有るのは、2001年5月に減量とした認可数量で、建前上は2025年度に供給されるべき最大量である。また、「0.8」を乗じるのは平均供給量は最大供給量の0.8倍が一般的であるからだという事である。
 
 さて、実際に供給を受けている水量は千葉県がノルマを守ろうと年間120日程度は最大供給量で受水するため高い比率であるが、四市では少ない数量である。費用はその実供給量に対して24[円/m3]の単価を乗じた金額を請求するという制度である。これも表にまとめると下記のようになる。 
事業体 平成19年度の実際の受水量 比率 使用費用
m3/年 % m3/日 % 百万円
千葉県 18,665,990 85.0% 51,000 85.0% 448
木更津市 11,281,809 48.4% 30,825 67.3% 271
君津市 5,928,640 49.8% 16,198 77.9% 142
富津市 3,907,180 61.0% 10,675 74.9% 94
袖ケ浦市 5,476,093 47.8% 14,962 65.8% 131
合計  45,259,712  60.3%  123,660  75.6% 1,086
 ※木更津市では11.281809×24≒271となる。
 
 上記で「比率」と有るのは責任水量に対し、どの程度を受水しているかで、木更津市と袖ケ浦市では低い値となっている。
 ノルマ費用と使用費用を足したものを実際の受水量で割り戻すと供給単価が計算されるのだが、これが先にも述べたような不公平が生じることになるのである。
事業体 年間受水費用(百万円) 受水量 購入単価 平均差
ノルマ 使用 合計 m3/年 円/m3 百万円
千葉県 1,915 448 2,363 18,665,990 126.6 238
木更津市 1,462 271 1,732 11,281,809 153.6 -160
君津市 664 142 806 5,928,640 136.0 20
富津市 455 94 549 3,907,180 140.4 -4
袖ケ浦市 726 131 857 5,476,093 156.6 -94
合計 5,221 1,086 6,308 45,259,712 139.4 0
 ※木更津市では1,732/11.281809≒153.6となる。
 
 上記で「平均差」と有るのは、受水量全てを平均の139.4円で支払った場合に生じる金額との差額で、木更津市や袖ヶ浦市で大きな損出を生じている。これは実際の受水量に対して責任水量が高く設定されているからである。
 木更津市も安く購入するためには多く受ければ良いのであるが、より安い自己水(地下水)の使用をする方が効率がよいので、敢えてノルマを達成せず、高い買い物になっているという事である。
 責任水量が実際より多いのは、合計量を163.6[千m3/日]としないと、収入が足らずに企業団の経営が成り立たない、という事が説明であるが、ノルマと使用の比率の見直しや、ノルマの内訳の見直しを進め、この様な明確な不公平が生じないように努力を重ねていただきたい。
 
 特に、今回の八ツ場ダムの中止により水利権(1.88[m3/秒]なので162,423[千m3/日]と計算される量)が失われるので、それを補うためにも小櫃川の水をより多く千葉県(市原)に送ることは、環境や農業に影響を及ぼさない範囲であれば全く異論はない。
 聞けば、来年は責任水量の分配比率を見直す年だと言うことである。市民サービスの向上のため、県とも是々非々で望む姿勢や努力が必要であろうと考えていた。