東京湾横断鉄道を考える
2009/11/04記
 先日、私のHPに意見が寄せられた。送り主は度々メールでアドバイスを頂ける地元の人なのだと思うが、送信主のアドレスが解らないシステムなので個人の特定は出来ていない。
 通常の場合は送られてきた意見に対して「ご意見」の欄で回答しているが、今回は文章が長くなるため「思うこと」の欄で記載する事とした。
 送られてきた意見は次の通りである。
 
 タイトル:鉄道路線の新設を
 
 京浜急行の大師線からアクアラインを通り巖根駅に乗り入れる鉄道の路線を進めたいものです。途中に金田駅、更に巖根駅から内房線に入り久留里線の軌道を一部使用し、清見台、請西、羽鳥野を経由し中央病院前あたりから内房線につなげる計画です。品川・横浜方面が短時間で結ばれ、木更津市の定住人口増加と岩根地区の活性化等利点は多いと思います。市でも大きな夢を描いてほしいものです。
 
 『東京湾アクアライン鉄道併設研究会』や同僚議員である國吉市議もアクアラインの将来6車線化拡張余地に鉄道を設置するべきだと提案している。
 6車線化拡張余地と言っても、木更津人工島などのトンネル接続部に将来トンネルを掘る抗口の余地が有る事と、橋梁部分は両側に1車線化分張り出しても耐えられる構造にしているというだけで、実際に工事を行う場合は現在供用中の海ほたるにシールドトンネルの基地を納めるなど、技術的に極めて難工事が予想される事から何千億円という追加投資が必要になると考えられる。
 
 鉄道の優位さは言うまでもなく@バスに比べて大量の輸送が可能、A渋滞が生じないことから定時運行が可能、B旅客一人当たりで考えると輸送コストが低い、C電化することで地球温暖化ガスの発生が抑制されると供に地下鉄のような閉鎖空間に強い、等の直接的な効果に加え、鉄道路線図に加わることでネットワークに入る安心感を得る人々が多い、という副次的効果がある。
 
 その一方で、車両価格や整備コストがバスに比べ著しく高く、さらにバス会社では負担しない保線というコストが生じるなど、輸送密度が低い場合には高コストなシステムとなり、現に地方ではローカル線の廃止が数多く行われてきた。
 
 現在のアクアラインバスの活況を考えると輸送密度が低い状況は考えにくいが、建設コストの償還や海底トンネルの監視や排水などの維持管理コストも多額になることから単独の会社で採算が取れることは考えにくく、国策として建設を税金で行い、維持管理のみ民間会社で行う形にしないと無理であろうと思う。
 同様のことが、本四架橋の部分を負担するJR四国や青函トンネルを負担するJR北海道でも有り、仮に両者に建設費の全額を持たせたら、たちどころに倒産してしまう。そのため、双方の建設費を含む国鉄の再建は一括して保有機構が持ち、各社の利益に応じた割合で償還するようにしているが、それだけで足りず、何故か煙草税の一部なども使われていたように思う。
 現在アクアラインの800円化のために税金を投入している状況を考えると、新たな建設費を税金でという申し出は、現実的には非常に難しい物と思われる。
 
 しかし、検討だけなら大したお金もかからない話なので、まず個人的な視点から考えてみたい。
 アクアラインに鉄道を併設する場合の問題点は、前述のように工事が大変であるという点以外にも@縦断勾配が鉄道の限界と言われる3%より厳しい4%であり、A鉄道荷重は自動車荷重より遙かに重く、橋梁が充分な安全率を持って耐えられるか検証が必要である、という問題がある。
 あくまで軌道交通でという話でこの問題を解決するので有れば、通常の電車ではなくAPMのような新交通システムを導入する事になるが、それでは既存の鉄道と相互乗り入れが出来なくなる。
 
 
 
 そこで、どうせ対岸と軌道交通でつなぐので有れば、アクアライン併設などと言わず、新規路線を造ってしまうのも手ではないかと思うのである。
 
 具体的な根拠としては建設技術の変化がある。特にシールドトンネル技術はアクアラインを建設した当時から比べて著しく向上している。アクアラインが木更津人工島から川崎まで、東京湾の2/3を横断する1本のトンネルを掘るのに4台の機械(2本掘っているから合計では8台の機械)を使用した事に対し、東京電力(株)では富津火力発電所から川崎市の扇島発電所まで海底トンネルを2台の機械で掘ったように長距離掘削が可能となっているのだ。
 
 また、電車は内燃機関である自動車と違って、延長20km程度では青函トンネルの例のように換気の必要が無いので、風の塔や木更津人工島のような東京湾の中に島を作る必要がない。
 トンネルの大きさについても、軌道がレールでで固定されているので道路トンネルに比べ断面積が小さく建設できる。
 これらのことから、技術屋の立場で言えば、アクアラインに併設するのではなく、別ルートの新線を掘る方が良いと思われる。
 
 そうなるとアクアラインとの干渉を避けるため平行して設ける事になり、南側に建設して扇島と木更津埠頭を結ぶか、北側に建設して羽田と金田を結ぶ方が良いかと考えた場合、羽田空港のハブ化を睨んだ再々拡張として既存C滑走路(3000m)に平行し、さらに沖合の東京航路との間に4000m規模の第5滑走路の建設も噂されている事とリンクして物事を考えるべきだと思いついた。
 段々、誇大妄想気味の話となってくるが、これらを整理して『大きな夢』として下記計画を考えてしまった。とても木更津市という単位ではどうもなる事では無いのだが・・・・
 
木更津急行鉄道(仮)計画案

 品川駅地下にホームを建設。大井埠頭を経て羽田第5滑走路国際線ターミナルビルの地下に新羽田駅を設け、そのまま東京湾を横切り金田の牛込まで地下を通過。中野地先で地表に出て小櫃川を渡り、JR内房線とアクアラインの交差地点で既存の路線に乗り入れ、巖根駅を経て木更津駅まで至る路線。トンネル建設に伴う残土は羽田第5滑走路の造成に使用。
 なお、新羽田では京浜急行羽田線及び羽田モノレールと接続。さらに品川以北では大深度地下法を活用し東北方面に延伸し、新柴又駅周辺で北総線に乗り入れて羽田と成田を結ぶ高速鉄道が実現するが、本件と別案件なのでそこまで記載しない。