単年度予算を考える | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2010/03/06記 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
近年は景気の後退を公的支出で食い止めるため、年度途中で政府により大型の補正予算が組まれる傾向がある。更に昨年は政権交代もあり、自民党時代に企画されていた公共投資臨時交付金の支給内示がされたのは今年の2月であった。既に3月の補正作業を取りまとめていたため、その分の上程は切り離され、5日に行われた一般質問の終了後に資料配付がなされた。議案名の「木更津市一般会計補正予算(第7号)」に示すように、平成21年度予算が7回目の変更を向かえることになる。 案件は金曜日の午後に上程され、土日を挟んだ8日の月曜日に総務・経済環境、9日の火曜日に教育民生・建設の常任委員会での審査を経て、9日の午後1時から開催される本会議で採決される。委員会審査報告書の取りまとめは大変だろうと思う。 この予算総額は5億9450万6千円の増額であるが、中には電子計算機費用の約3千万円の減額などにより相殺されている部分もあるため、交付金による「工事請負」として発注予定があるもの整理してみると、下表に記載するように16件で6億8852万7千円であった。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現行の自治体の会計は、地方自治法第208条に『普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。』と規定されており、原則として3月31日までに金額の確定を終えてしまい、出納閉鎖期間には金銭授受の事務だけがのこる事になっている。 その為、工事も3月31日までに検査を受けて合格しなければならないという実状があり、寒く日照時間も少ない、本来は仕事が捗らない頃に工事を集中的に行わなければ成らないのである。 このように、通常は年度末に工事が集中し、年度始めは仕事の閑散期になる建設業界としては、今回のように年度末に発注され、暖かで日照時間が長い5月頃に工事が出来る仕事は、嬉しい事業であろうから、予算通過時には遅滞なく発注するする事が求められよう。 年度末の補正と言えば、2月26日に可決成立された「木更津市一般会計補正予算(第6号)」の中にも、年度内には絶対に工事が終了しない校舎増築工事の2件が入っていたし、12月16日に可決成立した耐震補強関連工事も未だに発注まで至っていないから、それらも加えると、下表のように20件で26億345万円にも登る大型の景気刺激策が年度当初に実行されることになる。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
さて、上記の中でNo.19と20の校舎増築事業は委員会付託されずに本会議で採決されている。流石に大きな物件であるので審議不足のまま採決もできないと思い、2年連続で本会議において通告を行い必要性や事業内容について質問をさせて貰った。委員会に付託しなかった原因を調べてみると、議会の申し合わせ事項として「3月議会の補正予算は委員会付託を省略する」と有ることが解った。何のことはない、議員側に責任があったのだ。 そのような取り決めを造った背景を推察すると、前述のように予算は単年度を原則とするから、年度末には実施による数量の増減とか入札差金のような精算行為が殆どであり、わざわざ委員会で審議するようなものではない、という判断があったようだ。 しかし、3月議会が委員会に付託されないのを利用してかどうかは知らないが、明らかに精算行為でない補正も多くあり、職員が説明責任を省略するだけに成ることは回避すべきで、その様な意味から議会申し合わせ事項の見直しが必要であると考える。 ちなみに今回の補正第7号も申し合わせによれば委員会付託を省略するべき事なのであるが、6億を越える事業の詳細が解らずに採決できないと云う理由で、議会運営委員会において委員会付託を決めたようだ。 さて、このように年度末に予算だけが決まり、執行は翌年となる繰り越し事業は、地方自治法上からは異例の話であり、原則からは離れている事であるが、私にはこれが悪いこととはどうしても思えないのである。 このように予算の多くの部分を繰り越し運用することで、年度末での業務集中を回避できることになる。それは、職員の業務が平準化される事になり、ピークに合わせて配置されがちな職員数の削減につながり、業者には年間を通じた業務発注によって安定した雇用を維持することが出来るようになるのである。 他にも、何か急な出費があるかも知れないと年度末まで物品の発注を控え、年度末に一斉購入を行うような不自然な対応も解決していくことが出来るとか、複数年度にまたがるような大規模発注を行うことで工事単価の低減と業者の現場精通という効果が生まれるとか、様々なメリットが多いと思えるのだ。 もちろん、単年度で精算しないことにより年度内の収支が曖昧となり、気がついたら負担先送りによって累積赤字が生じる可能性もあるだろう。しかし、情報を徹底的に開示し、複数年度に渡る支出計画を同時に審査することで解決できる問題と思う。 調べてみれば、自治体の単年度単式会計は昭和38年度から引き継がれているようだ。地域主権を歌うので有れば、会計制度だって全国集計に支障のない範囲で、有る程度地方に自由を与えて貰いたと思うのである。 年度末の議会資料を整理しながらそんなことを考えていた。 |