都市計画を考える
2010/03/25記
 木更津市長選挙の告示日である21日に金田地区の都市計画の変更の説明会が行われた。ここで出された意見や様々な機関で決められた意見を元に素案を造り、それを6月頃に縦覧し、必要に応じて公聴会等を開いて案を定め、10月頃に市の都市計画審議会、12月頃に県の都市計画審議会を経て来年3月までには都市計画を変更するという大きな流れの第1歩として位置づけられる説明会である。
 
 金田東地区では用途が決まるまで最も制限の厳しい第1種低層住宅専用地区に指定されていた大規模な計画宅地32.1[ha]とそれに隣接して区画整理境界に位置する0.3[ha]の住宅地区の変更が行われた。この計画宅地の中には平成24年春に開業を目指すと発表された三井アウトレットパーク(約21.5[ha])の他に、日常用品を扱う潟Jインズの進出が発表されていたが、今月19日に行われた入札の結果、残された区画に家具・インテリア用品販売大手の鞄結档Cンテリア家具も進出することが決まった。3社とも商業系としての使用であるため、その区画は近隣商業地域として指定する案が示された。商業地域としなかったことで、映画館やキャバレーに類する物が建てられなくし、環境を寄りよく維持しようという考えなのであろう。
 ちなみにこのタイミングで変更する理由として考えられるのは、平成24年春に店舗を開店させるためには平成23年夏までに建築に着工する必要が有ると推測されるが、現行の用途のままでは建築確認が受理されないからであり、有る意味では三井アウトレットパークの予定に間に合わせるための都市計画変更でもある。
 
 今回の都市計画変更は東地区だけかと誤解して説明会に望んだのだが、面積的には西地区の過半である75.0[ha]の変更の方が大きかった。用途の境界を見ると、今回の案では機械的に道路からの距離で設定されているのが奇異であった。
 建築基準法第91条では『建築物の敷地がこの法律の規定【中略】による建築物の【中略】用途に関する禁止又は制限を受ける区域【中略】の内外にわたる場合においては、その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の建築物に関するこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定を適用する。』とある。
 解りやすく書けば、敷地の過半数がどちらに有るかで用途が決まるのである。従って宅地割りの形態によっては隣接する敷地であっても過半数の用途が異なることに成った結果、例えば両隣の家では旅館が建設できても我が家だけは禁止というような不公平感が生じる結果が起きる可能性がある。都市計画家はこの状況を回避するため、通常は道路などの公共用地に境界を設定するのだが、何故このようにしたのか質問したところ、県の指導であるとの回答であった。この場で議論しても仕方がないので、議論の場は建設常任委員会に取っておくことにして、簡単に了承した。
 
 都市計画について、現場を良く知っている立場から常々思うことは、計画段階で机上や単純なルールだけで物事を決めて、問題点の洗い出しを怠っているのでは、という疑問である。
 この最も顕著な例は、中野畑沢線と陸上自衛隊木更津駐屯地の関係である。都市計画を決めた段階で道路が陸上自衛隊の一部を通過することとして決めてしまった事が問題であった。平成24年度は何とか開通を向かえられる予定であるが、木更津駐屯地は日米地位協定で米軍管理下にあるため、道路の建設に際しては、当時ハワイに置かれていた極東司令部の許可を得なければならなかったのだ。道路を少し東に振っていたらこんな事態には成らなかったのに、と自分などは思うのである。
 
 同様な道路の問題として、最近気がついたのは3月議会で回答があった江川牛袋線の延伸である。市の職員が『航空自衛隊に引っかかる計画』と話していたが自衛隊前には広い道路が存在しており、幅員18m程度の都市計画道路が収まらないはずは無いので気にせずに議会質問を終えてから図面を見て愕然とした。
 
 上図で赤く塗った部分のように、道路をわざわざ自衛隊に入るように振りながら、反対側に青く塗ったように道路残地を残していたのだ。少し線形を変更すれば無駄な用地取得や補償も不要だろううと思い、曲線定規を使って描いてみたら、下図のように曲線半径の変更(400m→300m)及び曲線を1ヶ所追加するだけで大きな残地も残らず、綺麗に収まった。計画はこのようにしたら駄目だと云う悪い見本を修正したような気分である。
 
 たまたま、この道路で気づいただけで、他は全て適切な処理をしているかも知れないが、本市の都市計画道路には他にも同様の問題が存在しているのでは、と気になるところである。
 
 事業費の削減は計画段階で行うことが最も効果が大きいので、行政は間違いを起こさないと云う神話を維持するのではなく、適時計画の見直しを進めるべきだと思う。
 私も今まで多くの道路を設計してきたが、後になればもっと適切な方法が有ったと気づくことも有った。人は必ず間違いをする生き物で、その頻度が少ない人を優秀と定義しているに過ぎない事を認識し、ダブルチェック体制を設けて組織としての間違いを犯さないように努力すると供に、前任者の成果をより適切に修正することを躊躇わない風土を確立する事こそ、本当に良いまちづくりに成ると思うのだ。
 来年度から土木部と都市部が統合して都市整備部が出来ることを機会に、腰を据えて既存計画の照査をする時間を取っても良いと思うのだが、その余裕は無いのだろうか。