木更津駅西口を考える
2010/07/26記
 7月23日に行われた江川日枝神社の宵祭で地域の方々と話していると、私より20歳程度は年輩になる人から「お願いしたいことがあるのです」と声を掛けられた。地域の道路や排水の要望かと思って「何でしょうか」と聞くと「木更津の市街地に賑わいを取り戻して下さい」と言われた。細かい話かと思った自分を恥じた。
 
 取り敢えず、駅前のアクア木更津(旧そごうビル)にも来月10日に生鮮市場がオープンし、今まで買い物難民と化していた西口の人達も駅前で魚や肉、野菜等を購入することが可能となるので不便は大きく改善されることになるだろう。しかし求められているのは、その様な生活を支える程度のレベルの話でなく、商業都市木更津として周辺都市からも集客するような力強い木更津の姿が復活することであろう。
 
 岩根地区に住む我々も、子供の頃は「木更津に行く」と言って出かけ、主に西口の十字屋やサカモト、さらに多くの個性的な商店で休日を過ごした記憶があり、その頃の賑やかな街の様子は懐かしく覚えているし、可能で有ればあの喧噪をもう一度見たいと思う。
 それは私の個人的な感覚ではないようで、駅周辺の飲食店の経営者からも良く話をされる内容でもある。
 
 さらに、市民の多くも同じような思いを共有しているようで、今年の3月に市が実施した市民意識調査(対象2,000人で980人が回答)でも、アンケートに列挙した50政策の中で最も満足度の低いものとして『勤労者対策の充実』と供に『商工業の振興』があげられている事で明らかである。なお、今後優先的に取り組むべきかという問いに対して『商工業の振興』は50政策中で15位であり、市民は『医療の充実』や『保険の充実』を求めているという結果であった。
 
 古くからの商店街が健全に機能していると、それが街の個性に繋がるだけでなく、『下流同盟』(朝日新書:三浦展[編])で指摘されているように郊外ロードサイドスタイルに成ることで旧市街の衰退と同時に子供達の精神の荒廃や治安の悪化等も懸念される事態になる。社会的な絆の衰退は、治安や教育に対する社会的関与の低下となり行政負担の増加にも繋がることになる。その意味では旧市街の活性化と言うことに対して大いに賛同する所である。
 
 しかし、街の活性は行政がいくら税金をつぎ込んでも、肝心の住民が活性化を目指さなければ、それは単なるその地域住民に対する居住環境の改善であり、商店街の繁栄を通して市全体に寄与する効果を発揮することはない。個人的にはその様な事業は投資対効果が発生しないのでやるべきでは無いと思っている。
 
 従って冒頭に述べた近所の方には「商店街の人々が努力する中で、店舗改修の補助等を行うような事業は行うべきだと思いますが、現在のように街中で空き店舗を放置したり、表通りに面した場所で駐車場事業を行ったり、繁華街に店舗でなく住宅を造るようでは、行政が幾ら事業費をつぎ込んでも効果が出ないと思いますから、慎重に対応するべきと思います。」と答え、理解をいただいた。
 
 昨年の1月に視察に行った高松市の丸亀商店街は旧市街に賑わいを取り返した事例として有名な場所であり、そこで重要とされている考えは、箇々の店舗が集客できる営業を行い、それが出来ないのなら営業力のある者に店舗を貸して自らは大家に徹するという事である。地域全体がそのような取組を行う中で、様々な行政の支援が行われ現在に至っているのである。そのような取組が行われないのは危機感の欠如かも知れない。
 
 明日は会派の視察でコンパクトシティの先進事例である青森市に行って来る。駅前に人々が帰ってきたと言われているが、そこまでの過程にある行政と民間の役割などを勉強してこようと考えている。