電力供給を考える
2010/10/26記
 岩根区長会の研修旅行で、東京電力鰍フ協力もいただきながら新潟の柏崎刈羽原子力発電所の研修に行って来た。
 
 日本では電力供給の自由化が行われたと言っても、実質的には沖縄電力も含めた10社の寡占体制に有り、東京電力鰍ヘその中でも最大の規模を誇る会社である。首都圏の膨大な需要を満足させるため、本来は東北電力鰍フ営業範囲になる福島県と新潟県にそれぞれ原子力発電所を持ち、送電ロスをしながらも関東まで送っている状況である。福島県の双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町の方々と新潟県の柏崎市・刈羽村の方々は目の前で生産されている電力で生活することは無く、別の場所で生産された電気で日常を営んでいるのである。ちなみに茨城県東海村にも原子力発電所があるが、それは日本原子力発電鰍ニいう原子力利用の開拓のために設けられた国策会社のものであり、東京電力鰍ヘ自らの営業範囲である関東に原子力発電所を所有していない。
 
 原子力発電所が真に安全であるなら送電効率がもっとも高い消費地近くの東京に設置し、廃熱をビル群に供給(コジェネレーション)することでより一層の効果があるはずなのにそれをしないのは安全ではないからだ、と主張する『東京に原発を!(広瀬隆著:集英社文庫)』を読んだのは25年位前の学生時代であった。
 その後、『原発はなぜ危険か(田中三彦著:岩波新書)』を20年前に読み、建設上の問題などを理解し、脱原発の社会を作るためにはどうあるべきかと考えていたりもした。
 幸いにして、優秀な技術陣の努力により日本では大きな事故も発生せず月日が流れた。東海村で核物質をバケツで計量中に臨海反応が生じ2名が死亡したというJOCの事故から11年が経過しているがそれは運転上の事故ではない。中越沖地震に見舞われても計画通りの運転停止が出来た、というのが東京電力の見解である。
 もちろん、このような多くの原子力発電に伴う不安を解消するため多くのPR活動を行っているわけで、それに要するコストもバカにならないものと思うし、それが電気料金に上乗せされていると考えると複雑な気分である。
 
 では自分の所では福島や新潟の我慢の元に電力を受けているのかと考えると、日本最大(世界最大級)の火力発電所となった富津火力発電所の能力は504万kwで袖ケ浦火力の360万kwと合わせると864万kwになる。これは世界最大の原子力発電所としてギネスブックにも載っている柏崎刈羽の821.2万kwを上回る量である。ちなみに千葉県の最大消費量は平成13年7月24日の730万kwであったから、地元の2発電所で千葉県全体の需要を上回ることが出来ているのである。少し気分も楽になる話である。
 参考に、最近の風力発電は1基当たり2千kwの能力が主力なので、千葉県の最大需要を賄うためには3,650基が必要となり、その全てが丁度良い風を受けて運転している事が前提である。
 
 今年の猛暑も柏崎刈羽が一部運転再開していたことで電力不足に成らずに済んだことを考えると、当面は原子力の存在を否定することは出来ない。しかし、各戸での太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの開発にも力を入れるべきであり、ビルの緑化や高機能機器の採用により使用量を減らすことも重要であると思うところである。柏崎からの帰り道でそんな事を考えていた。