議員定数問題を考える
2011/02/01記
 今日の新聞に富里市議会が今春の統一地方選挙で議員定数を削減する記事が載っていた。現在の議員定数を20から18に減らしてから統一地方選挙を行うとの事であり、そのために議会改革特別委員会を設置して1年に渡り議論を行い、最終的には2減案と4減案で投票を行って決定したようだ。
 本日新聞折り込みを行った「市議会だより第111号」の10面にも記載してあるように、木更津市議会でも議会改革の立場から議員定数問題について議論を行う必要性を認識し、改選後の課題にするということを議会の意見として表明したが、やはり選挙の前と後では市民が受ける印象は違うだろう。
 
 では適正な議員定数とは何かというと、その回答は無い。アメリカ合衆国の中には4名程度の議員がボランティアで行政を運営している事例もあるが、アメリカの場合は自己責任社会で公共の関与が少なく、極端な場合では市役所の民間委託を行うなど、日本と事情が異なる背景もある。
 
 考えのヒントとして、県内36市の状況を整理した。なお人口は平成22年6月1日現在の住民基本台帳の値、議員定数は平成22年11月1日現在の値として、平成23年市議会手帳に掲げられている数値を引用して作成した。
名称 定数:A 人口:B B/A   名称 定数:A 人口:B B/A
千葉 54 934,138 17,299 22 68,943 3,134
船橋 50 599,944 11,999 白井 21 60,423 2,877
市川 42 462,203 11,005 香取 30 84,927 2,831
松戸 46 478,463 10,401 東金 22 59,890 2,722
40 395,012 9,875 銚子 26 70,251 2,702
市原 36 279,738 7,771 袖ケ浦 24 60,807 2,534
浦安 21 160,824 7,658 館山 20 50,179 2,509
八千代 32 188,624 5,895 富里 20 49,759 2,488
佐倉 30 175,955 5,865 山武 24 57,586 2,399
流山 28 162,833 5,815 富津 22 49,093 2,232
我孫子 24 136,137 5,672 印西 44 88,656 2,015
野田 28 155,523 5,554 南房総 23 43,358 1,885
習志野 30 160,103 5,337 鴨川 20 36,073 1,804
木更津 28 128,168 4,577 匝瑳 24 40,299 1,679
鎌ヶ谷 24 107,571 4,482 いすみ 26 42,104 1,619
成田 30 126,379 4,213 勝浦 18 21,040 1,169
四街道 22 87,700 3,986 平均 28.4 163,361 5,749
君津 24 89,854 3,744 最大 54 934,138 17,299
茂原 26 93,514 3,597 最小 18 21,040 1,169
八街 22 74,909 3,405 格差 3.00 44.40 14.80
 
 上記の表は議員一人当たりの人口が多い方から整理してある。人口が多い自治体は議員一人当たりの人口が多くなるが、人口16万人の浦安市より人口が少なくても議員が多い自治体が21市も有るなど、完全な正比例とは成っていない。
 そこで人口と議員定数をグラフで示すと下図のようになる。
 比例傾向が直線的になるように、横軸の人口は対数目盛を使用した。中央上に全体から離れている点は合併特例を使用している印西市(定数44:今回の統一地方選挙で24になる予定)で、右下に突出している点が浦安市(定数21)である。右下側に位置する方が人口の割に議員が少ない自治体であり、富里市は既に少ない側に有りながら、より削減を決めたことが解る。ちなみに木更津市は傾向的には中央に有るが、県単純平均より議員が若干多めの位置に配置されている。
 
 今回の統一地方選挙の前には「流山市議員定数削減1万人署名運動」のように議員定数を減らそうという動きが多く、昨今話題の阿久根市や名古屋市でもその様な議論が進められている。
 流山市の削減活動の理由に、議会で一般質問をする議員は毎回20名ほどで緊張感がない、という趣旨が記載されているのには驚いた。議長・副議長を含めた28人中の20人が質問すれば充分多い方だと考える私などは流山では抵抗勢力のようだ。ともあれ千葉県東北部の多くの自治体が議員定数を減らし続けている事は事実である。
 
 自治体の財政改善策として、市議議員削減は、市民受けの良い提案であるが、民主主義はどの程度の少数意見代表を選出しない事が許容できるのか、という議論に突き詰めればなる事を忘れてはいけない。少数意見ではあるが重要な視点を残すためには一定の人数が必要であり、また選挙制度の上でも極端な少人数では大組織の代表とか、著名なタレント型候補だけが当選する事になり、無党派のサラリーマンでは挑戦する機会すら与えられなくなるであろう。その極論が小選挙区制で、現実的には民主党か自民党しか当選できない事態に近づく可能性を念頭に置くべきである。
 
 とは言え、現況数は全県的傾向の中で多い部類に属するのであるから検討すべきであるし、個人的には削減余地は多いと考えている議員定数削減派である。ただ、自治体の財政対策として議員を減らすことより、市の職員を前例に安住させることなく、安価で効率的でありながら高度な行政サービスを提案し追求できる議員を当選させる方が、市民にとって効果は大きいと信じている。
 市民受けの良い提案に飛びつくのではなく、その様な議員を選出できる市民力が求められるのだが、民主主義の学校を経て、多数派を形成する道は厳しいであろう。
 
 ふと最小自治体である東京都青ヶ島村を調べてみると、村の人口174人に対して議会定数は6人である。29人に1人が議員と言うことになるが、議長を除く多数決は5人で行われる事を考えるとこの程度は必要だろう。でもこの人口なら地方自治法94条に示す総会方式(直接民主主義)にすれば良いのに、等と脱線しながら議員定数問題を考えていた。