下水道の普及を考える
2011/10/15記
 平成22年度決算審査委員会に選出され、関係書類を読む中で下水道の普及状況と水洗化率が気になった。
 平成になってからの下水道処理人口を見てみると、下図のように順調に増加を続け、本市での普及が進んでいる事が解る。
 
 一方、下水道処理面積は下図のように平成16年より面積の増加が著しく減少し、近年は面積の拡大率は前年と比較すると1%前後しか拡大していないという微増状態である。
 
 平成16年頃に急激な減少を示すのは、緊縮予算を組んだ為かと思うところでもあるが、全体的な会計の推移を見ると、平成13年頃から延びは滞っているもの下図のように決して減少しているわけではない。
 
 これらのデータに対して、木更津の発展の経緯や自分の経験を加味してこの現象を解釈すると次のようになる。
 
 まず、処理面積であるが、平成16年に増加が鈍るという見方が正しいのではなく、平成16年以前の大幅な伸びは、区画整理組合から移管された区域が処理区域に加わったために起きた現象で、その期間でも市の事業による既成市街地の拡大は、現在と同様に僅かな拡張であったのである。
 従って、区画整理事業に対する若干の補助金を無視すれば、一般会計や特別会計という市の支出に計上されない、各区画整理組合の事業費で下水道の整備が進んできたので、予算の変動と処理面積の増加はあまり比例しないのである。
 但し、近年の拡張面積が急激に減少してるのは、金田地区への投資が増えた結果、既成市街地の拡張に回す予算が少なくなっているためであり、来年の金田東の一部供用開始で一山を超えた後には既成市街地への投資が回復する見込みである。
 因みに、平成になってから下水道を移管した主な6事業と、今後移管が見込まれる3事業は下表の通りである。
地区名 主な住所 施工時期 面積[ha] 事業費[億円]
請西第二 請西東 S63〜H11 72.2 210.56
小浜 港南台 S62〜H12 77.3 160.60
上総新研究開発 かずさ H02〜H14 278.2 444.40
烏田 羽鳥野 H07〜H17 92.1 198.15
中尾・伊豆島 ほたる野 H03〜H18 98.0 271.54
請西第三 請西南 H03〜H19 90.4 225.50
6事業の合計 708.2 1,510.75
請西千束台 H03〜 23.4 119.22
金田西 H10〜 110.8 181.20
金田東 H11〜 155.6 222.65
9事業の合計 998.0 2,033.81
 
 この表に示すように、平成22年度末の処理面積約1,611[ha]のうち、半分近い708[ha]が6箇所の区画整理事業による拡大である。なお、拡大の時期は上記の施工時期の途中で部分的に順次移管されることになる。
 この様に区画整理事業によって造成された住宅地を一度に処理区域に加えてきたため、そのような下水道が整備された新市街に居住した人口が着実に増える事により、面積の拡張が少なくても処理人口が増えるという近年の現象が生じていると予想される。
 
 長くなったが、ここまでは予想されることであったが、平成23年度の市政概要で平成21年と平成22年の普及状況のうち水洗化に関する数値を見て疑問が生じた。整理したものが下表である。
処理面積[ha] 処理人口[人] 水洗化人口 水洗化率[%]
H21 1,597.66 55,286 47,903 86.65
H22 1,611.41 57,319 49,651 86.62
増加数 13.75 2,033 1,748 -0.03
増加率 100.9% 103.7% 103.6%
 
 この表に示すように、平成21年度から平成22年度にかけての処理面積の増加は約14[ha]、率にして0.9[%]と微妙であり、この間の処理人口の増加は、先に書いたように新市街地への居住者が増えたことが原因と思っていた。下水道が整備された新市街地に居住しながら下水道に接続しない住民はいないので、全てが水洗化人口に加算されるものと思っていた。
 しかし、現状では処理人口の伸びと水洗化人口の伸びに乖離が生じ、その結果水洗化率が若干の低下を示しているのである。
 この現象について数値の把握が不正確ではないかと平成22年度決算審査委員会で質問したところ、担当課は精査を進め、詳細な情報が届けられた。なお、集計期間の差により、市政概要の値と数値の整合が取れないが傾向を把握することが出来る。
 
 処理人口の増加分の1,565人は新住宅地に居住したことにより増加したものであるが、353人は既成市街での増加で、その多くが今回の処理面積を拡大したことによるものである。
 新市街地に居住した人は全てを水洗化人口に加えるが、既成市街地では接続申請が出された世帯を積み上げて水洗化人口を求める事になり、昨年度の人数が144人であったという事である。
 既成市街地で単年度増加分の水洗化率を求めると144÷353という計算で40.8{%}という値となり、既成市街地の水洗化の遅れが率を押し下げていた事が明らかになったのである。
 
 水洗化率を高めるため、極論を言えば既成市街地の整備を止めて新市街地での人口増を待てば良いのであるが、下水道の目的は『都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資すること』なので既成市街地への拡大は重要な施策である。
 下水道推進課も既成市街地の接続状況が悪いことを課題として把握しており、今後は一層の努力をするという事なので特別会計の採算性向上のためにも期待するところである。
 
 清見台や岩根等で長年に渡り下水整備を待つ地区が有る上に、今後は真舟地区のように下水処理地区へ編入を求めている場所も多い。今後の整備に当たっては、地域の意向を確認し、接続を約束した人の割合が多い場所から優先して工事を進めるという考えがあっても良いのかな、と思いながら長い文章を終える。