地方分権制度を考える
2011/12/02記
 先月末に投票が行われた大阪府・大阪市ダブル選挙で大阪維新の会が圧勝した結果、敗れた民主党・自民党の双方とも『大阪都構想』に向けた検討を開始すると表明した。地域の選挙が国政を動かしたと興味深く見させていただいた。
 選挙の結果は橋下徹という個人の人気投票に近いものであったという一面も有るが、度重なる雑誌でのバッシングを乗り越え、大阪を何と抱えたいという大阪の住民も多かったのであろう。
 
 地域を変えていくために必要なことは、地域に権限と財源と人材が与えられる事である。
 選挙前は地域主権が1丁目1番地と言っていた民主党も政権奪取後には本気度が見えなくなり、どうなることかと思われていたが、それでも8月30日に「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(いわゆる第二次一括法)」が公布され、関係188法律の整備により、『都道府県の権限の市町村への移譲』と『条例制定権の拡大』がされることとなり、地方自治体の条例や体制整備が必要なものは、一部の経過措置を除き平成24年4月から施行されることとなったのである。
 その具体的な権限移譲事項として、30日の議員全員協議会で37の関連法律に関する事項が示された。だいぶ長くなるが引用させていただくと下表の通りである。
  
No 法律名 項目
1 地方自治法 町及び字の区域の新設等の届出、告示
2 地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律 拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域内の建築行為等の許可、原状回復命令等
3 社会福祉法 第二種社会福祉事業の届出受理等、社会福祉法人の定款の認可、報告徴収、検査、業務停止命令等
4 障害者自立支援法 育成医療の支給認定等
5 身体障害者福祉法・知的障害者福祉法 身体・知的障害者相談員への委託による相談対応、援助
6 水道法 簡易専用水道の給水停止命令、報告徴収、立入検査並びに専用水道の給水開始の届出受理等
7 墓地、埋葬等に関する法律 墓地、納骨堂及び火葬場の経営許可、立入検査、使用禁止命令等
8 母子保健法 未熟児の訪問指導等
9 悪臭防止法 悪臭に係る規制地域の指定、規制基準の設定
10 家庭用品品質表示法 家庭用品の販売業者に対する表示等の指示、違反業者の公表、報告徴収、立入検査等
11 環境基本法 騒音に係る環境基準の地域類型の指定
12 消費生活用製品安全法 特定製品の販売事業者等からの報告徴収、立入検査、提出命令
13 振動規制法 振動に係る規制地域の指定、規制基準の設定
14 騒音規制法 騒音に係る規制地域の指定、規制基準の設定、自動車騒音の状況の常時監視
15 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
16 ガス事業法 ガス用品の販売事業者からの報告徴収、立入検査、提出命令
17 工場立地法 緑地面積率等に係る地域準則の策定、特定工場新設の届出受理、変更命令等
18 中小小売商業振興法 商店街整備計画、店舗集団化計画、共同店舗等整備計画等の認定等
19 電気用品安全法 電気用品の販売事業者からの報告徴収、立入検査、提出命令
20 農地法 農地等の権利移動の許可
21 景観法 市町村が景観行政団体として事務を行う場合の県知事の同意の廃止
22 道路法 市町村による県道の管理
23 都市計画法 都市計画の決定(地域地区・都市施設・市街地開発事業・市街地開発事業等予定区域・都市再開発方針等)、都市計画施設区域及び市街地開発事業施行区域内の建築の許可、都市計画事業地内の建築等の許可等
24 都市緑地法 緑地保全地域等における行為の規制、原状回復命令、立入検査等
25 土地区画整理法 土地区画整理事業施行地区内の建築行為等の許可、原状回復命令等
26 マンションの建替えの円滑化等に関する法律 マンション建替組合設立の認可、個人施行のマンション建替事業の認可、監督等
27 流通業務市街地の整備に関する法律 流通業務地区内の施設建設等の許可、違反施設の移転等の命令
28 公有地の拡大の推進に関する法律 土地を譲渡する場合の届出及び土地買取りの申出受理、協議を行う団体の決定等
29 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 特定路外駐車場設置の届出受理、基準適合命令、立入検査
30 住宅地区改良法 改良地区内の建築行為等の許可、原状回復命令等
31 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 住宅街区整備事業施行地区内等の建築行為等の許可、原状回復命令等
32 駐車場法 路外駐車場設置等の届出受理、立入検査、是正命令等
33 都市再開発法 市街地再開発促進区域内の建築の許可、第一種市街地再開発事業施行地区内の建築行為等の許可等
34 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律 特定優良賃貸住宅の供給計画の認定、報告徴収、改善命令等
35 被災市街地復興特別措置法 被災市街地復興推進地域内の建築行為の許可、原状回復命令等
36 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 防災街区整備事業施行地区内の建築行為等の許可、施行予定者が定められている防災都市計画施設区域内の建築の許可等
37 災害対策基本法 災害派遣要請を求めた旨の市町村長から防衛大臣等への通知
 
 上表を見ると、今までこの程度の権限が市に与えられていなかったのかと驚く点も多いが、中には権限を活用して適切な行政誘導措置や環境保全、まちづくりが可能となるものもあり、それを戦略的に使用できる自治体が評価され、人口減少の中で生き残れる時代を迎えるのだとろうと思う。
 
 政策を戦略的に運用するためには先にも行ったように他にも「財源」と「人材:優秀な専門スタッフ」が必要になり、その解決の一つの手法として合併による行政組織の効率化と高度化が有る、と10年以上前から主張してきたところである。
 その様な中、先月末の28日に、かずさ四市の市長が一堂に会した講演会を行った中で合併の話が出て、水越市長が他の三市に協力を呼びかけたところ、君津市の鈴木市長は仲良くやりましょうと答え、富津市の佐久間市長は今は市民とまちづくりを進めており合併はその先に有ると含みを残し、袖ケ浦市の出口市長は市民が判断することと突き放したと新聞記事にあった。
 切磋琢磨しながらそれぞれに高度な自治を目指して行くなら、それも一つの決断では有ろうが、貧弱な財政と稚拙な行政運営で全国から取り残されることがないようせねば、と自戒しながら、地方分権制度に関する記載を終了する。