公共投資の縮小を憂う
2012/04/21記
 3月31日にNHKがシリーズ日本新生として『橋が道路が壊れていく・・・ インフラ危機を乗り越えろ』という放送を行った。これは高度成長期や日米構造協議の一環としての内需拡大策により、膨大に建設されたインフラが、その後のバブル崩壊による税収の縮小によって適切に維持管理されることが無く、静かに崩壊が進んでいることを報道した物である。
 大阪万博に間に合わせるために突貫で作られた高速道路の維持管理を通じて、メンテナンスの重要さを学んできた私としては、まさにこの問題がガン細胞のように静かに日本を蝕んで行くことを危惧していて居ただけに、染み込むように頭に入ってきた。
 
 さて、新年度の人事異動による混乱が落ち着いた頃、木更津市の過去の建設に関する予算がどの様に変わってきたのか、気になり調べてみた。
 元は一般会計の決算として公開されている資料で、新幹線が開通し高度成長が始まった昭和40年(1965年)以降のものを入手し、エクセルによりグラフとして作図してみた。なお、決算ベースなので昨年度はまだまとまっておらず、平成22年(2010年)までの46年間の推移である。また、下水道のように特別会計で処理されている物は含んでいない。
 
 まずは目的別(款別)の推移である。
 注目するのは『土木費(色)』である。1992年頃にピークを迎え、その後は現象を続けているように見られるが、物価や経済状況の変動による予算額全体の変動幅も大きく、当該年度における土木費の位置づけは今一つ解りにくい。
 
 そこで、各年度における予算費目の割合の推移を整理した物が次のグラフ(凡例は上記と一緒)である。
 生活保護に代表される民生費(色)の増大を埋めるような形で土木費(色)の比率が縮小している事が明らかである。
 
 中野畑沢線のような新規路線の建設も重要であるが、それ以上に既存の社会資本を崩壊に至る前に適切に維持管理することであるである。しかし、この様に予算が縮小されていては、適切な補修を行う事も難しく、いつかは手遅れになって更新以外に方法が無くなるだろう。その結果、同じように経年劣化したものが同時期に更新期を迎えることで、建設事業費の急激な増加が生じ、財政に破綻を生じることが懸念されてくるのである。
 
 さて、社会資本としては道路や水路のような土木的財産だけでなく、学校や公民館、保育園のような公共建築物も数多くある。今年度から市役所本庁舎の更新基金を積み立てているように、建築物の補修や更新も大きな課題になって現れてくる。
 これらの建築物は土木費以外の支出から捻出されている物が多く、上記の検討からは見えてこない。
 
 そこで今度は性質別の歳出として再度まとめてみた。
 此処で示す『建設費(色)』は『普通建設事業費』を示し、投資的経費から関連する人件費と災害復旧事業費及び失業対策事業費を控除した物で、社会資本の蓄積に使われる額と考えて大きな違いはない。
 
 これを見ると、土木費の変動以上に劇的な変化が起きていることが解る。目的別と同じように割合の変化をグラフにしてみると下図のように極めて顕著な状況が明らかになった。
 
 昭和44年(1969年)には62.32%と、歳出のおよそ2/3を占めていた事には逆に驚かされるが、時代を考えれば新日鐵君津製鉄所の進出に伴う学校を中心とした社会資本整備が求められていたためであろう。
 それが年々縮小し、私が市議会に入る前の平成18年(2006年)には5.95%まで減ってしまう。その後、耐震対策事業の推進に伴い平成22年(2010年)の決算では12.95%まで値を戻しているが、やはり経年対策の事業費を捻出する余裕はないようだ。
 
 水道事業については一般会計とは別の企業会計として行われており、昨年9月の決算で『本年度単年度での純利益が2億円を超える額が出ております。(中略)もっと資本投下をすべきではなかったのか』と質問を行い、今年度から老朽管の更新予算の拡大が行われている。一般会計や下水道特別会計でも、事業の永続性を考え、適切な投資を行わない限り、先月末のNHKスペシャルのような状況が本市にも訪れてしまうことだろうと、膨大な数値を処理した後に思っていた。