千束台に光が射す
2012/11/22記
 20日の午後に建設常任委員会協議会を開催し、請西千束台の区画整理事業について状況の報告を受けた。
 この区画整理事業は同時期に開始された港南台・羽鳥野・請西南・ほたる野のように、業務代行会社が地価下落のダメージを負担して解散させる方向に行かず、業務代行会社が契約の途中で勝手に撤退し、裁判が行われるなど、大きな問題を抱えている。
 そのため、最悪の場合は行政も何らかの負担を強いられる可能性がある、いわば地雷のような存在で、常に気になっていたものである。
 しかし、先月23日に裁判の判決が出され、少し光が射してきた感じがするので、記録を整理するつもりで記載することにした。
 
 まず、木更津市請西千束台特定土地区画整理事業の主な経緯を整理してみる。
 平成 4年 1月24日 【組合設立認可】
 平成10年12月20日 【使途不明金問題(前理事長背任事件)】
 平成13年 3月30日 【森本組と工事業務代行基本契約締結】
 平成16年 7月10日 【一括業務代行委託契約の締結】
 平成19年 4月〜  【業務代行者の撤退】
 平成19年11月27日 【業務代行者の契約解除意志確認】
 平成21年 2月25日 【特定調停及び民事調停の申し立て】
 平成21年12月 2日 【業務代行者との訴訟の提起】
 平成22年 5月17日 【組合及び組合員に立替工事代金請求】
 平成22年 6月26日 【賦課金2億21百万円徴収を総会議決】
 平成23年 7月 8日 【第6回事業計画の変更認可】
 平成24年10月23日 【業務代行者との訴訟判決】
 平成24年11月 6日 【業務代行者との訴訟/控訴】
 
 組合が設立されたときには7年で完成する見込みであり、膨大な切土工事も材木港の埋め立てに使われることで処理費が掛からないという予定で組まれた事業計画が、文化財調査の長期化や木材港埋め立ての中止、地下の下落など、様々な変更要因で変更を余儀なくされてきた。事業計画について当初と最新を比較すると次のようになる。
 
H4年1月24日【設立認可】 H23年7月8日【第6回変更】
事 業 費 59億5300万円 112億4977万円
事業期間 H3年度〜H10年度 H3年度〜H26年度
減 歩 率 49.9% 75.59%
 
 既に組合が認可されてから20年が経過している。
 文化財調査が想像以上に費用と期間を消費していた頃に発生した、平成10年の事件に始まり、多くの問題が積み重なってくる中で、役員の辞退も続き、解散することも叶わず、地権者は明日も見えない苦悩の中に居ただろうと思う。
 特に減歩率が大幅に上昇して換地される面積も減少した中で、平成22年6月26日に組合の事務費を捻出するために賦課金徴収を決めたことは苦渋の選択であり、この様な事態に追い込んでいる裁判の相手先である元業務代行に対する恨みは深いものになっているだろうと推察される。
 技術者の視点で見れば、23.4haという、区画整理組合としては狭いエリアで、さらに大きな高低差が有る地形条件なので、最初から採算が疑問視されてしかるべき組合であったと思うが、当時はアクアラインの建設中で、土地が高い頃だったから何とかなると信じたのであろう。後悔先に立たずである。
 
 しかし、今回のタイトルに書いたように、この先行きが見えなかった区画整理事業に、裁判結果が少しの光を差し込んでくれたのである。
 
 今回の裁判は、組合が業務代行会社を相手に工事が完成するまでに必要な金額、約40億4091万円の損害賠償請求額を求め、その内金4億円の支払いを求める裁判と、逆に業務代行会社が組合及び組合員を相手に平成18年度までの立替金約34億3066万円の支払いを求め、その内金5億円の支払いを求める裁判が同時に進められてきた。
 平成23年7月12日に「組合員は組合と連帯して立替金債務の責任を負うとする主張」が棄却され、2件の裁判の当事者が一致した結果、2件の訴訟を合併して審理する事になった。
 裁判は業務代行側の引き延ばし戦略とかも合ったようで時間が掛かったが、平成24年10月23日に判決が言い渡された。
 内容は次の通りであった。
 
@ 業代は、組合に対し 9,380万円及びこれに対する平成19年11月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
A 組合の損害賠償請求事件のその余の請求を棄却する。
B 業代の立替金請求事件の請求をいずれも棄却する。
C 訴訟費用は、2件の事件を通じてこれを5分し、その1を組合の、その余を業代が負担する。
D この判決は、組合の損害賠償請求事件に限り、仮に執行する
ことができる。
 
 この意味は、双方の請求が棄却され、裁判期間で発生した借入金の利子分を業務代行会社が払うという物である。双方共に損はしているが、組合にとっては業務代行会社が行った工事等の代金を払わなくて良いことに成り、新しい業務代行者によって事業を完成する目途が立った事になる。
 具体的な金額ベースの考え方は次のようになる。
 
項目 金額 備考
事業費 全体事業費 112億4977万円
執行済額 93億7953万円 進捗率:83.4%
残事業費 A 18億7024万円 16.6%
補助金 補助基本額 54億8784万円
執行済額 51億0154万円
残補助費 B 3億8630万円
金融機関借入金 C 13億4000万円 5行1損保:元金
無利子貸付金 D 6090万円 木更津市
A-B+C+D= 28億8484万円
 
 組合は業務代行が決まるまで銀行から借入をして事業をしてきたので、それを返還しなければならない。業務代行との裁判が終結すると、次の大きな課題は金融機関との特定調停による債権の減免であり、少なくとも利子は免除してもらわないと採算が建たない状況は変わらない。
 その前提で、完成までに必要となる資金は、補助金を除いた事業費と金融機関及び木更津市からの借入金の合計で、上の表に示すように約29億円に成る。これを保留地面積(91317.66u)で割り戻すと、31591[円/u]となるので、これ以上の金額で処分が出来る目途が立てば、新たな業務代行会社が参入する可能性が出てくるのである。請西南の販売実績を見る限り、まだ厳しい値ではあるが、絶望的に不可能な単価ではないと思うのである。
 
 なお、補助基本額に占める市の負担額は15億2971万円で、昨年度までに13億9,060万円を負担しており、今年度の事業費も含め、今後1億3911万円の負担が必要になる。都市計画道路が財産として残るとは言え、結構負担をしてきているのである。
 従って、これ以上、余分に行政負担を伴わずに組合が解散できれば自治体、ひいては市民にとっても光明である。うっすらと光が射したというのはこの事を指しているのだ。
 
 ただし、一審判決を不服として、双方が控訴しており、結審までには更に6ヶ月から1年の期間が見込まれる。判決が悪い側に出る可能性も無視できないが、高裁で控訴が棄却されるか、同様の裁判結果が出ることを信じたい。何より早期に裁判を終了させ、結論が出て欲しいと心から願っているのである。