空き地や空き家を考える
2013/01/20記
 この季節になると雑草等も枯れて見晴らしが良くなることと、農作業が忙しくないこともあり、農業委員会としての有休農地調査を行うことになっている。今年も自分が担当する岩根地区を回り、調査票に届出がされている土地を中心に農地の状況を見て回った。
 
 改めて見て回ると、耕作をされていない土地の多さと荒れ具合に驚かされる。戦後には小作農に配られ貴重であった農地が、今では管理してくれる人が居ないまま竹林や雑木林に成りつつある状況を見ると、日本の農政の敗北を実感せざるを得ない。
 特に水田については減反で作るのを止めさせた頃から農家のモチベーションが低下し、さらには農家体験がない子息に相続され、所有者が遠方に住んでいる場合などは日常の目が届かないので、毎年のように不法投棄が為されている場所も現れている。
 
 最近は農地だけでなく、投機目的で購入した宅地が地価下落で管理を放棄され雑草が火災の恐れを誘発している所があり、さらには住宅も空き家率が増えて近隣に迷惑を及ぼしている所まで出ていると聞く。特に災害時に倒壊した場合は緊急自動車の到着を阻むことで致命的な自体になる可能性が高い物も有る。
 日本は人口減少社会に入ったからと言っても農地や住宅地が余り始めたわけではなく、ネットカフェ難民やマクド難民のように住宅に不自由している者も多くいるのに、このような土地政策も何とかせねばならないだろうと思っているのである。
 
 尤も効果的と思われるのは、土地は基本的に公共財産であるという前提に立ち、有効に活用する事が出来ていないものの課税率を高くすることであろう。この場合、保有に耐えきれず市場に出てきて必要な人に渡ることに成るだろうし、国としても税収が増える利点がある。
 ただ、その「活用していない」という状況を誰がどの様に公正に判断するかが難しそうだ。特に住宅の場合、出張や入院等による長期の不在の扱いを誰が判断するかという問題があり、また不動産業のように活用されていない土地を所有する事が仕事の場合と、売却せずに保有しているだけの所有者との差をどうするかといった問題もある。
 
 しかし現状のママで放置した場合、生活している空間の中に管理されていない人の土地が多く混在することになり、害虫や有害鳥獣の住処に成ったり、枯れ草火災や老朽家屋の倒壊などの被害を受けることに成るだろう。なにより国土をここまで開拓してきたご先祖様に対し「申し訳ない」し、貴重な空間を遊ばせていることが「勿体ない」と思うのである。
 
 老朽化した社会資本が問題となりつつあるが、この「所有」という制度の改革も考えねばならない社会の変革期ではないか、そう荒れる一方の農地を前に考えていた。