防災拠点を考える
2013/06/19記
 17日の月曜日に市民10人から成る「庁舎整備検討委員会」の審議を傍聴した。新庁舎の基本計画を取りまとめるため、今月末より素案をパブリックコメントに掛けるため、慌ただしく内容が検討されていた。
 その中で、防災の項目があり、庁舎の3階以上の階に災害対策室を設けられるような空間を作ると有った。この件に関しては、先月27日に行われた、全議員が構成メンバーである「庁舎整備特別委員会」の席上で、会派羅針盤の宮木議員からも質問があった所であるが、改めて思うところを記載したい。
 
 右の図面は市役所のHPに記載されている市の作成した「津波浸水予測図」の一部である。青色は50cm以下の浸水で、赤色で示す2m以上の浸水まで4段階で図化されているが、これで明らかなように、現在の想定では市役所の周辺は広範囲に1m程度の浸水が予想されている。
 この対策のため、新庁舎の地盤は液状化対策とともに浸水しない程度まで嵩上げを行う事としているが、周辺地域まで対策することは不可能である。
 
 仮に、南海トラフの大規模地震が発生し、津波警報が発せられる中で、防災業務に当たる市役所職員に対し、命の危険がある登庁を命じることが出来るか、という事を考えなくては成らない。
 むろん平日に発災した場合は、様々な情報が集まっている市役所で指揮を執ることが効率的なのは云うまでもないが、仮に津波で浸水した場合は、2年前の石巻市のように孤立してしまい、情報収集に苦労することになる(角川SSC新書の『6枚の壁新聞』を読むと状況がよく解る)。
 更に心配なのは、気仙沼市や山田町で発生した震災による大規模火災である。市役所や隣の警察署は不燃建築物でも、瓦礫が燃えながら周辺を取り囲んだ場合、市役所を放棄する事だって有り得るかもしれない。
 津波が無くても近くに多くの木造住宅地区が存在するため、関東大震災で発生したような火災旋風も想定される。想定だけなら、先日ロシアに落下した隕石のような、極めて可能性が少ない災害が直撃する事だって有る。
 
 必要なことは防災拠点が被災することを想定した、複数箇所への機能分散である。国も霞が関が被災した場合は立川に移動するように木更津市も津波警報が発せられた場合に指揮を執れる場所を別途設ける必要があり、新市役所は通常の台風等の災害に対応できる程度の機能に留め、大規模な対策本部を設けるような投資は控えるべきと考えるのである。
 逆に新市役所には、災害後の一時的避難や緊急医療、ボランティア受入を可能とする設計を行うべきである。例えば非常時にはベットになる長椅子を多く設けるとか、屋外には仮設便所を多く設置できるようなマンホールトイレの準備とか、ボランティア機材を置けるスペースを事前に車庫と一体設計するとかである。
 市役所の外に設ける防災対策本部は、新たな消防本部と兼用で設け、場所としては浸水被害が想定されず、広範囲に出動可能な国道16号線バイパスの長須賀周辺に設けることで、長須賀分署と高柳出張所を統合する合理化も図りたい。
 
 2年前の震災で防災庁舎が津波に飲まれてしまった南三陸町を思うと、あの尊い犠牲を何の教訓にもしないような対応を行っては成らない、と思いながら、今回の記載を行った。