台風災害を確認する
2013/10/23記
 16日の未明に房総半島沖を通過した台風第26号は伊豆大島で大規模な土石流を発生させ、大きな被害を発生した。
 消防庁災害対策本部が22日15時30分に発表した「平成25年台風第26号による被害状況等について(第17報)」によると、全国で死者32名(内伊豆大島28名)、行方不明者18名(全て伊豆大島)、重軽傷者104名、住宅の全半壊50棟、一部損傷597棟、床上床下浸水5197棟となっている。
 被害の大きかった伊豆大島では、避難勧告の解除を受け、21日より島外からのボランティアの受け入れを始めたという事であるが、今週末には26号より発達している27号が接近することが予想され、島民の多くが避難をする等、現地では混乱が続いていることと思う。君津高校の校舎から3年間見続けて、その後に自転車の旅や青年会議所での青少年キャンプ、三原山登山等で何回も訪れたことのある島の事を考えると心が痛む。
 
 さて、大島の報道で薄れがちになるが、今回は木更津市でも大きな被害が発生している。21日17時15分に危機管理室が発表した資料によると、人的被害としては土砂崩れで男性1名が腕を骨折して重傷、住宅の一部損壊11件、床上床下浸水50件(消防庁は「棟」で木更津市は「件」で集計している)、農漁業施設にも甚大な被害が発生しており、特にこれからシーズンを迎える海苔は深刻なようである。
 伊豆大島では町役場が避難勧告を出さなかった事が問題と成っているが、木更津市での対応は次の通りであった。
 04:30 小櫃川・矢那川流域に避難準備情報伝達
 05:00 矢那川流域4495世帯9486人に避難勧告発令
 05:10 土砂災害警戒区域40世帯344人に避難勧告発令
 05:20 小櫃川流域3451世帯8455人に避難勧告発令
 08:15 小櫃川・矢那川流域の避難勧告解除
 14:45 土砂災害警戒区域の避難勧告解除
 これに伴い28箇所の避難所を開設したが、実際に避難した人の数は121世帯320人に留まっている。総数7786世帯18285人に比べると世帯で1.55%、人数で1.75%の率であり、決して多くは無かった。幸い河川の決壊には至らなかったが、紙一重で有った事は小櫃川にかかる金木橋から9:55に岩根方向を撮影した下の写真からも明らかである。
 
 避難を行わなかった理由は、早朝であった事や、情報が風雨の音でかき消されて聞こえなかった事、またテレビの気象情報がもう直ぐ雨が上がることを知らせていた事等、様々に原因は考えられるが、今後アンケート調査等を行い、次の災害に備えることが重要であろう。
 
 この台風による降雨は15日の12時から始まり、16日の9時に止むまでの21時間の累計は323.5mmを記録し、最大降雨は朝6時〜7時の1時間に42.0mmであった。降雨データをグラフにすると下図のようになり、深夜になってから急に強くなり、台風が接近するほど多くなっていた事が解る。
 台風通過後に急激に雨が上がっているが、これが接近するのと同じように降雨が減っても長引いていたら災害はどこまで拡大したかと、グラフの形を見ながら、改めて恐怖を感じている。
 
 今回の台風ではインフラに与えた被害も多く、16日正午現在の集計では道路損壊5件、河川被害2件、崖崩れ54件、鉄道被害2件、電気被害9件、道路冠水63件、その他の被害80件である。道路冠水箇所はこんな程度ではなっかたと思うが、把握されている箇所数で示されている。
 冠水は水が引けば改善されるが、今後工事等で復旧を行わなければ成らない場所の数は、都市整備部や経済部が状況を把握するため現地調査を行い、現在も増え続けている。しかし、技術者の人数にも限りがあり、多忙を極め、全体を把握するまでには至っていないようだ。
 災害復旧費が大幅に増額となる補正予算が12月や3月の議会で上程されることが予想されるため、昨日は台風27号が接近する前に現場を確認してきた。

道路肩の崩壊(矢那地区)

河川護岸の崩壊(泉川)

道路肩の崩壊(馬来田地区)

市道9068号線通行止め

崖崩れ(山本七曲)

調整池法面崩壊(大久保)
 馬来田で通行止めと成っている市道9068号線は、その奥に居住者がいないので陸の孤島は発生していない。しかし、民間所有地に影響を及ぼしそうな場所や、再度崩壊を生じそうな場所も有り、今週末に到来する台風27号の雨量によっては被害が拡大しそうな懸念も生じている事が解った。年度の後半に入り、年度末に向けた通常業務も多忙と成っている中で、対策を立案し発注、監督することは大変だろう。急遽、OB職員でも臨時任用するか、コンサルから人材を派遣してもらうことが重要だろう。更に長い目で見れば、地球温暖化の異常気象の現代では、技術者の確保という人材配置を怠ってはならず、中途採用も含んだ適切な職員管理が必要であろう。
 
 日曜日に開催が予定されていた岩根東地区の敬老会と文化祭も台風27号の接近で中止が決まったと昨夜に連絡があった。東日本大震災でも大きな被災を受けず、近年は自然災害が少なかった木更津市も、いつまでも幸運で居られるわけではないという事を念頭において、これからの災害対策を考えねば成らないと、被害状況を見ながら考えていた。