農協の要望に同席する
2013/12/25記
 毎年、3月議会で議席に農協の農政に対する要望書が配布され、それに目を通してはいたが議会の組織としては特に経済所管の委員会で議論するような対応がなされないまま過ごしてきた。
 また農協の総代の一人として、年度末に開催される通常総代会にでも要望が行われている事を聴いていたが、それを議員として取り上げて、執行部に対応を問うような事も無かった。
 しかし、平成25年3月29日に開催された木更津市農業協働組合第40回通常総代会で理事に選出され、それから約9ヶ月が経過した12月20日に農協の理事として、他の役員や幹部職員と供に市長と議長に対して要望書を提出する側に立つことに成った。
 
 今回提出した農協の「平成26年度木更津市農業施策に関する要望書」の内容は下記のとおりである。
  
要 望 事 項
1.農業振興総合計画について
  @ 平成25年3月に策定した10年計画(平成25年度〜平成34年度)「木更津市農業振興総合計画」の計画的完全実施をされたい。
2.農業生産基盤の強化について
@ 所有農地の再編及び請負耕作を容易とするため圃場整備、大型区画化を全地域に広げて進められたい。
A 木更津市の特産品である米・野菜・果樹等の農畜産物のブランドの確立と生産振興・農業基盤の確立・強化策を講じられたい。
B 生産者への生産履歴記帳の強化と食の安全・安心対策を強化されたい。
C 農産物を加工することにより、付加価値及び生産過剰対策として加工施設の整備を進められたい。
D 農業生産基盤の強化・経営の安定のため、市の平成26年度農業予算の拡充と各助成措置を講じられたい。
3.農業経営の安定について
@ 平成22年度より独自に良食味米の試験栽培を行っているが、木更津産米の市場地位向上の為、木更津市として独自奨励品種選定を実施し、農業生産者の生産意欲向上に取り組まれたい。
A 県内でも有数の早場米である優位性を活かし、木更津産米「コシヒカリ・ふさおとめ・ふさこがね」の確固たる位置づけと販売促進に助成措置を講じるとともに、学校給食でコシヒカリを食せるよう配慮願いたい。
B 農業経営の安定のため、施設園芸(野菜・果樹・花き)に対する支援措置と施設化に向けた施策を講じられたい。
4.担い手対策について
@ 現在の「認定農業者認定基準」では木更津市内の農業生産者で該当するものは限られてしまう為、認定要件緩和策と農業者の育成を講じられたい。
A 集落営農の取り組みや法人化などを支援する対策、農地情報システムや品質向上システム等整備対策など取り組みを支援されたい。
B 新規就農者・団塊世代退職者に対する農業への就労を促し、新たな担い手としての育成支援を進められたい。
C 農業支援人材バンク(海外研修生の受入、現援農ボランティアの発展的な組織)を創設し、生産者の人手不足対策を講じられたい。
D 農地の賃貸借、法人化、経営相談、堆肥(耕畜連携)の販路、技術等に関する情報サイトを立ち上げ、担い手育成ネットワークを構築されたい。
5.環境保全対策について
@ 引き続き、環境保全に関する支援・交付金が活用できるよう、県・国へ要望されたい。
A 農業用廃プラスチックの適正処理を進めるため、園芸用廃プラスチック処理対策推進事業を継続されたい。
6.遊休農地対策について
@ 耕作放棄地の解消、農地復活のための支援対策を講じられたい。
A 中山間農地の荒廃が著しい中で、治山対策のためにも中山間農地を維持、管理出来うる政策を講じられたい。
B 集落毎にモアを設置したいので支援されたい。
7.需給調整システムについて
@ 平成26年度からの経営所得安定対策(戸別所得補償制度)及び米政策の見直しや水田活用直接支払交付金(飼料用米への助成)・日本型直接支払い制度の検討等、制度の急激な見直しにより生産現場の混乱を招くことがないように、これらの制度が確定した段階で速やかに地区毎に説明会の開催と生産者に制度内容を理解して頂く対策を講じられたい。また、今後も木更津市地域農業再生協議会にて方針の策定と運営を行うとともに協議会の運営は、引き続き木更津市が担当されたい。
A 水稲における恒久的な米対策を早急に国・県と協力し確立されたい。
8.有害鳥獣被害対策について
@ 有害鳥獣による農産物被害等は、中山間地帯を中心に平坦地まで及び、被害範囲は年々拡大している状況であり、農業生産に苦慮しているところである。今後も有害鳥獣被害対策支援(猪・野生猿・アライグマ・ハクビシン・鹿・カラス等)として、被害状況の調査把握と防止策に対する更なる助成措置を講じられたい。
9.観光農業への取り組みについて
@ 本市の立地条件を生かし、木更津ふるさと産品を中心とした観光農園の整備をされたい。
A 木更津ふるさと産品の物産館等を設置されたい。
10.食育推進活動について
@ バランスの良い食習慣の普及と健康増進、コメ文化の継承、食育推進を目的とした、「木更津市一日二食ごはんを食べよう」条例を制定されたい。
A 「食の安全・安心」、「木産木消」などへの関心を促し、「食と農」の絆をより強くすることを目的とした「休日は家族ぐるみで土に親しみ農業に取り組もう運動」を提唱されたい。
B 食育教育を保育園児、幼稚園児、小中学校生、高校生、大学生に実施されたい。
C 学校給食に児童・生徒が安全・安心な木更津産の米・米粉パン・野菜・果物等、農畜産物を食することができるよう配慮されたい。
11.TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について
@ 平成24年5月30日、市農業委員会、ぼうそう農業共済組合、うちぼうミルク農業協同組合、当組合の連名で交渉参加反対に関する要請書を提出した。政府は「情報の開示」や「国民的議論」が十分になされていない中、交渉参加を決断しました。TPP参加により海外から農産物が大量に流入する恐れがあり、農業をはじめ国民生活への大きな影響、更には地域経済の崩壊の懸念がある。長引く景気低迷で地域が減退しているうえ、東日本大震災の影響(特に放射能)が、国内全体はもとより木更津市にも多大な影響が及んでいることを踏まえ、足腰の強い農業を構築し農村を再生させることに取り組まれたい。
以 上
  
 要望書を受け取った滝口議長は、例年であれば議場配布としていたが、今回は速やかに各議員へ周知を図ることを伝え、24日付で各議員に送られてきた。私は郵送前のものを議会事務局で受け取ったのだが、農協理事として要望して、議員として受け取るというのも、何とも妙な気持ちである。
 
 今回の要望書の内容については農協の理事会で議論した内容であり、役員としては要求に責任を持つ立場であるが、要望を受ける議員としては、具体的な事案について悩ましいことも多い。
 多くの項目は基本的に木更津市も積極的に進めるべき事案であると思うのであるが、余裕が少ない財政の中での予算措置をどうするかは難しい。それ以上に困るのが『木更津市一日二食ごはんを食べよう条例』の制定の要望についてで、議案を発議できる議員という立場を考えると悩むのである。
 
 議員発議という事で今年成立した条例の一つに千葉県神埼町の『日本酒で乾杯を推進する条例(平成25年9月19日)』がある。これは『京都市清酒の普及の促進に関する条例(平成25年1月15日)』に端を発して、今年全国的に広がっているご当地のお酒を飲もうという理念的条例で、当然罰則も無ければ拘束力も無いものであるが、それを宣言することで住民の意識を変えようとするものである。ちなみにこの種の条例としては千葉県内で始めてのものであるようだ。
 米の普及に関しては、略称で「コシヒカリ条例」として有名になった『南魚沼市コシヒカリの普及促進に関する条例(平成25年10月10日)』が挙げられる。今回の要望書提出に当たり梅澤組合長が引用していたのもこれであり、木更津産のコシヒカリやふさこがね等を積極的に食べるように宣言するべきだという趣旨である。特に市役所の食堂は「県内産の米」でなく「木更津の米」とすべきだという意見は至極まっとうな話である。
 
 「食」をまちづくりの重要な項目として見つめなおした先駆的なものとして『小浜市食のまちづくり条例(平成13年9月26日)』が有り、数年前には木更津市議会でも視察に行った委員会があったと覚えている。また、地産地消に関しては『藤沢市地産地消の推進に関する条例(平成21年9月24日)』や『小山市地産地消及び食育の推進に関する条例(平成23年6月28日)』のように既に制定している自治体も多くあるのだが、コシヒカリ条例のように名称にインパクトの強さが無く、市民の心には響きにくいという事を考えると『一日二食ごはんを食べよう条例』の方が注目を集め、広告効果は大きいのであろう。
 
 乾杯の条例に話を戻すと、個人の嗜好まで条例で決めるべきかという議論が出される事もあり、例えば都城市では焼酎での乾杯条例の制定を求めた地元商工会議所の陳情を市議会が否決している。同様に考えるとパン食や麺食派には「何を食べるかは個人の自由。条例でそれを勧めるのか」という反対も想定され、それを拘束力が無いからと言って軽視できるか自信が無い。
 
 余り深く考えても答えが見えるような問題では無いと思うので、年が明けたら会派で『新発田市食の循環によるまちづくり条例(平成21年1月1日)』を視察してこようと企画している。新潟県の日本酒で乾杯するために行くわけではない事も付け加えておこう。