雇用のミスマッチを思う
2014/04/03記
 気が着けば平成26年度が始まっている。昨日行った港南台の有名ラーメン店の客足は全く衰えていなかったが、価格は消費税の変化を受けて値上げされていた。様々な公共料金も値上げが続くが、その一方で賃金の上昇は全ての業種に浸透しているわけではなく、大手メーカー以外では大多数が消費税による負担の方が多くなりそうだと新聞報道は伝えている。
 賃上げが伴わないままデフレから脱却すると物価高に買い控えを行うことに成るので景気が後退するという説と、物価上昇が前提で有れば貯金しておくより物に変えてしまった方が良いという心理が働き消費税10%に成るまで消費傾向が続き経済が拡大するという説のどちらが正しいのか、経済学に詳しくない私には解らないし、解説する経済学者がバラバラな事を言う状況を見ていると正解はないのだろう。
 
 さて、そのような大きな国家的状況を離れて足もとの木更津を見ていると、夏に増床するMOPや秋に開業するイオンモールの関係で、確実に雇用状況が改善され、有効求人倍率が高くなるだろう。すると、人材不足からパート労働者の単価が上昇することも予想され、賃金が低い非正規雇用者の中には、比較して労働環境の良い販売勤務に着く者も出てくるだろうと思われる。
 地域に住んでいる者には職業選択の自由が広がることは良いことであるし、仕事を求めて他の地域から移転してくる者が増えることで様々な商業が活発化する事も期待でき、更には労働者の増加は行政にとって人口ボーナスとなって作用して行政サービスの向上が図れる事は望むべき事である。
 
 しかし、細かな点を考えると、現在でも不足気味の保育士や介護士がその資格の職に就かずに、他の勤務に就いてしまうと、人材不足から福祉が後退する事態を招くことになる。現に木更津市の保育行政では保育士不足で待機児童が生じており、私が評議員を務めている特養施設では介護士不足で施設の全機能を使用できずに居る。
 もちろん、その対応策として、それらの職業の報酬を上げる等の対応が為されることが重要であるが、公的機関では臨機応変に人件費を変更することが出来ず、雇用環境の激変に対応できない事に心配しているのである。
 
 では現状の雇用状況を見ると、厚生省が先月18日に発表した高卒者の内定率は前年度比2.4ポイント増の90.7%で、バブル真っ盛りの平成3年に最高の95.6%を記録してから下降が続き、平成7年に90%を切って以来、18年ぶりに90%を超えた事になる。
 
 これを見る限り、新卒者も雇用がほぼ確保されているため、余剰な労働は無さそうに思われる。
 
 しかし、一度仕事に就いた後で自己退職した者の再雇用は一気に難しくなり、まして高齢者や、子育ての時間を確保する母子家庭の親などは限られた仕事しか得られないのが現状である。
 健康でも仕事に就けない高齢者は生活保護として公助の対象に成ることも考えられるし、子どもを持つ家庭の貧困は子どもの教育に影響を与え将来的な高所得の可能性を奪うことに成りかねない。これらの結果として国民負担が増えるので有れば、職探しに苦労している者に、雇用促進活動を進める事は重要である。
 
 専門職の確保に苦労して福祉行政の後退を招いている現状がありながら、就職要望を満足できない現状を考えると、再教育や福祉施策と会わせた総合的対策を行うことが、結果的に最低の投資で最大の福祉を産むことになるだろうと、年度始めにその様な事を考えていた。