オスプレイを検証する
2014/07/05記
 3月と6月の定例議会において、佐藤議員が木更津基地にティルトローター機の配属が検討されているが、どう考えるかという質問を行っていた。ティルトローター機とは固定翼の端部についているローターに傾かせる機能を着ける事で、ヘリコプターの垂直離陸機能と航空機の高速水平飛行の機能を併せ持つ航空機の事で複数の機種があるが、自衛隊の基地に配属となれば一般的には現在沖縄の普天間にある米軍海兵隊基地に配属されているV-22、通称オスプレイが想像される事に成る。
 この配備や岩国での水揚げに際し、連日の反対運動が報道されて、極めて危険で迷惑なものが日本に押し付けられるという恐怖が醸成されたものである。従って、今後、仮に木更津に配備となると「極めて危険で迷惑なもの」が身近に置かれる事に成ると想像する事は容易であるが、その前に少し検証をしたい。
 
 日本最大(そして多分アジアで最大)のヘリコプター部隊が配備されている木更津基地は、かつてバートルが主力機であったが、平成に成ってからはより大型のチヌークが主力機になっている。(右の写真は2009年の航空祭)
 ※追記:市役所を通じ、北関東防衛局にバートルからチヌークへの移行期間を確認したところ、昭和63年3月から開始され、平成7年3月に完全に置き換わったと回答があった。なお、その際には反対等の運動は無かったと記憶している。
 
 まず、その2機種と問題になっているオスプレイの性能を比較してみる。性能は全てWikipediaより引用したもので、木更津基地に配備された機体がこのスペックとは限らない。 
愛称 バートル チヌーク オスプレイ
機種番号 V-107 CH-47 V-22


最大離陸重量 8,618kg 22,680kg 23,981kg
27,442kg
航続距離 396km 612km 648km
1,100km 1,758km
最大速度 254km/h 315km/h 565km/h
 オスプレイの最大離陸重量で下の値は滑走路を使用して飛び上がる場合で、垂直に離陸する場合は上の値になる。また航続距離の欄でバートルの下の値は増槽を使用した値で、同様にオスプレイの下の値は滑走路を使用した場合で、上の値は垂直に離陸する値である(双方ともペイロード4,536kgの状況)。貨物積載無しで滑走路から飛び立った場合の航続距離は3,593kmもあり、空中給油を併用すれば、さらに延長できるようだ。
 
 このように積載重量が現在のチヌークを若干上回るうえに、航続距離や最大速度においては圧倒的に有利な機種なので、例えば木更津に基地を置くことで北海道から小笠原を経て先島を除く沖縄まで、日本列島の殆どの地域に無給油で到達でき、滑走路が無くても着陸できるとなれば、配属される意味の大きさは容易に理解できる。ただし、チヌークに比べるとキャビン寸法は長さ、幅、高さの全てで小さく、容積が少ない為に、軽くても嵩張る貨物の積載では相対的に不利で、搭乗可能な人員も少ないようで、その点は現状より劣ることに成りそうだ。
 
 心配なのは安全性である。試作段階においての事故の多さから同機を「空飛ぶ恥」とか「未亡人製造機」とか呼ばれているようだが、現在のところ日本国内で深刻な事故は発生していない。また、アメリカ海兵隊所属のオスプレイの10万時間当たりの平均事故率は、2012年4月11日の事故後に1.93で、米海兵隊所属の飛行機平均の2.45を大きく下回っているようで、本当に「危険」なのか確認できない。チヌークのほうが危険という説すら有る。
 また、騒音についてもアメリカでの調査では現用のCH-46E(バートルの改造機種)と比較して、飛行中は全ての領域でより静かであるという結果が出ているようだ。しかし普天間配属後の報道によると騒がしくなったとも聞く。これについては冷静にデータで判断できる問題だと思う。
 
 基地に隣接して住む私にとって、現在チヌークが上空を通過するだけで窓枠が揺れる状況なのに、さらにそれより酷くなることは勘弁願いたいし、明確に危険な機種を導入することで、一般市民を巻き込んだ事故が発生する可能性が高まるなら反対せねばなるまい。2001年2月14日にも小型ヘリの墜落事故が発生している事も現実である。しかし、全ての危険性を排除するなら基地の完全撤退に加え、木更津上空を通って羽田に向かっている全ての飛行機を迂回させる必要があり、それは現実的でない。従って重要なのは危険度だと思う。
 開発後に運用を重ねて欠陥を改善し、さらに日本規格の安全基準強化を行って現在機種より安全性が担保され、その上、騒音問題も低いのであれば、木更津基地に配属という話が出たところで反対する根拠は無いと思うし、逆に広域的に災害派遣を行う事が可能と成る機体に変えることは、日本国として正しい判断だろう。
 
 まだ配備されるか不明な段階で反対運動を開始しようとする人もいるようだが、重要なのは原発事故後の放射能風評被害のように根拠の無い話に惑わされること無く、正確な判断を行うことだろうと考えながら、それでも一度は現実に配備されている普天間の状況を見に行かなくては、と考えている。