政務活動費を考える
2014/08/09記
 政務活動費の不正疑惑で、自ら開いた会見で号泣した兵庫県の野々村議員を筆頭に、兵庫県議会で多くの議員が会計終了間際に大量の切手を購入するなど、政務活動費の不正使用疑惑が持ち上がり、マスコミを賑せている。その為か、私にも政務活動費をきちんと管理しているかという心配や、あのように簡単に不正が出来るものかといった問い合わせも多くなった。
 
 政務調査費は、政策立案や調査のために支払われる公費で、自治体によってその金額は大きく異なる。本給とは別に支給することで積極的に研究をするという説もあるが、個人的には本給に含め、その分だけ本給を高くするほうが全体額が明らかとなり、情報公開の点では望ましく思える。しかし、そうすると所得にカウントされ、多額の納税が伴うことになり、必要額を出すためには税を含めた額が必要となり、自治体の総支出が増えるというデメリットも考えられる。生活費でなく、経費であるという観点で所得に含ませないという、現行の制度の利点も見える。
 
 県議会では事務所を設けて秘書を常駐させることも可能なように比較的大きな額が出されているが、市議会は比較的少なく、自治体の規模や経済状況によって値が異なる。木更津市の場合は月額で2万円、年間にして24万円なので、とても兵庫の野々村県議のように195回も日帰り出張を請求出来る額ではない。
 千葉県及び県内の市について、平成24年度時点の具体的な額を人口順に整理したものが次の表である。「政務活動費」は1人当たりの年間の値で、「総額」はそれに議員の定数を乗じた物であり単位は双方ともに万円、「一人当たり」は総額を人口で割った物であり単位は円である。
団体名 人口 政務活動費 定数 総額 一人当たり
千葉県 6,240,461 480 95 4億5600 73.1
千葉市 959,722 360 54 1億9440 202.6
船橋市 617,623 96 50 4800 77.7
松戸市 486,341 60 44 2640 54.3
市川市 469,445 96 42 4032 85.9
柏市 403,550 96 36 3456 85.6
市原市 291,583 132 36 4752 163.0
八千代市 193,114 48 32 1536 79.5
佐倉市 177,664 48 28 1344 75.6
流山市 168,912 48 28 1344 79.6
習志野市 164,924 36 30 1080 65.5
浦安市 162,543 36 21 756 46.5
野田市 156,672 27 28 756 48.3
我孫子市 133,953 30 24 720 53.8
木更津市 132,216 24 28 672 50.8
成田市 131,240 72 30 2160 164.6
鎌ケ谷市 109,546 24 24 576 52.6
印西市 93,074 36 24 864 92.8
茂原市 92,535 16.8 26 436.8 47.2
四街道市 90,898 24 22 528 58.1
君津市 88,975 36 24 864 97.1
香取市 82,515 12 25 300 36.4
八街市 74,436 30 22 660 88.7
銚子市 68,683 36 21 756 110.1
旭市 68,612 12 22 264 38.5
白井市 62,469 36 21 756 121.0
袖ケ浦市 61,751 24 24 576 93.3
東金市 60,943 21 22 462 75.8
山武市 56,017 18 22 396 70.7
大網白里市 50,948 4.98 20 99.6 19.5
富里市 50,029 24 18 432 86.3
館山市 49,405 10 18 180 36.4
富津市 47,852 12 18 216 45.1
南房総市 41,853 12 23 276 65.9
いすみ市 41,145 4.2 20 84 20.4
匝瑳市 39,353 15 20 300 76.2
鴨川市 35,474 12 20 240 67.7
勝浦市 20,127 8 18 144 71.5
単純平均 163,139 44.24 27 1591.8 75.8
最大 959,722 360 54 1億9440 202.6
最小 20,127 4.2 18 84 19.5
倍率 47.7 85.7 3.0 231.4 10.4
 県下37市の単純平均は44万24百円なので木更津市はそれより少ない額である。木更津市民は老若男女問わず、一人当たり約51円を政務活動費として納めている計算になる。ちなみに県議会議員には約73円なので、合計で124円を負担することになる。
 一人当たりの額に着目すると、政令指定都市の千葉市は360万円と群を抜いて高額であり、最少のいすみ市の年額4万2千円の85.7倍である。人口が多い自治体は議員数も多いので議員定数も乗じた総額としう視点に切り替えると格差は231倍にまで開く。しかし、その総額を人口で割り戻した値は比較的平準化され、格差も10倍程度に収まる事に成る。
 
 人口と政務活動費の相関を対数グラフにすると下のようになる。
 このように、自治体の人口と政務調査費には明確な相関が見られるが、人口の少ない市の議員は勉強しなくて良いという訳ではないので、釈然としないものがある。
 グラフ中に木更津市をで示しているが、分布の右下側に位置しているので人口の割には政務活動費が少ないという事が理解できる。現に人口がほぼ同じ成田市の1/3であり、人口10万人以下の市でも5市(印西市36万円・君津市36万円・八街市30万円・銚子市36万円・白井市36万円)が木更津より多くの額を予算計上している事が解る。それにしても大網白里市の年間4万98百円やいすみ市の4万2千円では、自主的な県外調査の旅費や研修の参加費用にもならず、多くを個人負担しているであろう事が想像され、頭が下がる思いである。
 
 予算決算の審議の中で、無駄遣いを強く戒めている発言をしている我々が、予算があるからといって全てを使い切るような「お役所仕事」をしていたら市民の代表たる資格を失う、と私は思う。
 木更津市では全額を使用しきるのではなく、毎年それなりの執行算を残しているが、その件については別の機会に触れることにして今回はここまでで記載を終える。