入札結果から考える
2014/09/29記
 先週末に閉会した9月議会に上程された議案第66号は祇園小学校の屋内運動場、つまり体育館を建て替える工事の契約を承認する案件であった。祇園小学校の体育館は耐震診断を行う以前に、耐力度調査で改築が必要と判断されたもので、建て替えが必要なことは誰もが認めるものであった。
 しかし、今回の契約に当たって参考資料として提出された入札結果調書を見て入札が不透明に行われたのではとして佐藤議員より反対討論が行われた。その入札結果が下表である。
No 応札額(円) 備考
1 A社 辞退
2 B社 327,800,000
3 C社 辞退
4 D社 辞退
5 E社 辞退
6 F社 327,800,000
7 G社 327,800,000
8 H社 327,800,000
9 I社 327,800,000
10 J社 327,000,000 落札決定
11 K社 327,800,000
12 L社 辞退
 上記のように市内及び準市内の12社が対象企業で、5社が辞退、6社が同一の額で、若干安い額を入れたJ社が落札することになった。落札率は99.8%である。調書には会社名も記載されているのだが議論の趣旨に関係ないので簡素に省略した。
 
 これだけを見ると「談合」と思うことは不自然ではないが深く考えてみる。まず、6社が同じであった応札額は何なのかと考えると市が事前に公表している予定価格であったのだ。解りやすく書けば、6社は市がこれ以上だと失格になりますよという額を入れたのだ。
 これは何を意味するかと言うと、値引きして受注しても利益が出ないことは明らかなのでお付き合いで入札に参加し、万が一全ての業者が同額で抽選になり当選してしまった場合は地元の責務で赤字覚悟でも施行しようという事ではないかと推察できる。
 
 東京オリンピック確定後に高く張り付いている労務費と、円安に伴う資材高騰で建築工事費は公共事業の積算額では納まらなくなり、例えば茨城県板東市でも今年9月に予定していた約52億円の新庁舎建築工事が大手ゼネコン3社の辞退によって発注が出来なかった。
 この様に発注が出来ない事を「不調」と言うが、仮に祇園小学校で不調が発生した場合に不利益を被るのは小学生で、その事を考え地元業者の多くは不本意でも最高金額を入れたと思われ、どうしても採算に合わずに工事は無理と考えた業者が辞退をしたものと考えられる。
 落札した業者も端数切りをしただけで、基本的には儲かると考えていないような額である。
 
 入札に参加する対象を県内や国内まで広げれば、もっと安い額で工事を発注することは出来たであろうが、基本的には地元に施行能力のある建設会社を維持することが台風や積雪といった緊急時対応力を確保する事になるので、拡大には慎重であるべきだ。
 しかし地元企業の中には災害協定を市と結んでいないものも有る。協定締結企業を優先したくとも、今年7月に水戸地方裁判所の事例で、茨城県神栖市に対し、市と災害協定を結んでいないことを理由に入札を失格とした事に対し「入札を適正かつ合理的に行うために必要とは認められない」と指摘し、違法なので損害賠償金を支払うことを命じているので、現実には難しいようだ。
 せめて、資金力のない地元業者の支援として国や県の仕事並に工事発注後の前渡金をしっかり払ってあげるように市の制度も変えるべきだと思う。
 
 市議会の名誉にかけて反対すると述べた討論を聞きながら、現実の難しさも知りながら話しているのだろうと思い、それより防災や地元優先対策はどうあるべきかと考えていた。