地価公示を見て思う
2015/03/23記
 先週の水曜日(3月18日)に国土交通省土地鑑定委員会より平成27年の地価公示(公示地価)の発表があった。地価公示は、地価公示法に基づいて、毎年1月1日における標準地の「正常な価格」を判定し公示するものであり、土地鑑定委員会が不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って判定するもののようだ。なお、調査地点数は23,380地点(うち東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内の17地点については調査を休止)である。
 
 今回の住宅地における地価上昇率の上位10地点は下表に示すように、全て福島県いわき市であった(単位は[円/m2])。
 東日本大震災における原子力発電所の事故から4年が経過し、帰宅が困難な人達がせめて故郷に近い場所としていわきを求めていると考えるとやりきれない気持ちになる。
順位 標準地の所在地 H26 H27 変動率
1 いわき市泉もえぎ台1丁目25番8 29,900 35,000 17.1
2 いわき市草木台2丁目10番3 41,500 47,300 14.0
3 いわき市泉ケ丘1丁目19番16 31,500 35,700 13.3
4 いわき市中央台鹿島1丁目5番3 49,000 55,500 13.3
5 いわき市平下平窪3丁目4番5 41,300 46,300 12.1
6 いわき市中央台飯野1丁目23番12 50,000 56,000 12.0
7 いわき市泉町2丁目5番8 42,800 47,800 11.7
8 いわき市洋向台2丁目3番13 27,600 30,800 11.6
9 いわき市小島町2丁目10番11 50,100 55,800 11.4
10 いわき市佐糠町2丁目9番11 26,500 29,500 11.3
 今月1日に常磐道が全通し、国道6号線の通行も可能となった中で、北側に位置する南相馬市の人口は減少したままであるが、このような人気が南相馬にも波及し、せめて周辺都市の活気が戻ればよいと願うのである。今回も選挙が終わったら4年目の南相馬市小高地区にボランティアに行こうと友人と話しつつその様なことを考えていた。
 
 全国の上位はいわきで独占されたが、首都圏における住宅地の地価上昇率の上位10地点は下表の通りで、東京都心と木更津市が独占するという奇妙な状況となっていた。
順位 標準地の所在地 H26 H27 変動率
1 港区南麻布4丁目19番1外 1,970,000 2,190,000 11.2
2 港区赤坂1丁目1424番1 2,680,000 2,970,000 10.8
3 木更津市請西南3丁目33番5 38,400 42,200 9.9
4 木更津市港南台5丁目5番18 24,500 26,900 9.8
5 木更津市ほたる野4丁目17番7 42,000 45,900 9.3
6 中央区佃3丁目5番1外 1,430,000 1,560,000 9.1
7 木更津市清見台南3丁目10番4 34,800 37,800 8.6
8 港区赤坂6丁目1911番 1,740,000 1,880,000 8.0
9 木更津市羽鳥野2丁目25番4 25,000 27,000 8.0
10 中央区勝どき3丁目419番1 954,000 1,030,000 8.0
 都心に比べ単価が100倍も開いてはいるが上昇率では肩を並べているという事を素直に喜ぶべきか考えてみる。
 
 行政を運営する点から考えると、地価が上がるという事は土地の人気が出ているという事であり、近隣市に比べ木更津市の評価が高くなっているという事の裏返しであるから誇るべき事である。
 また、固定資産税や都市計画税が増加することに繋がり、自主財源の増加は安定した自治体運営を可能とする。
 
 土地所有者にとっては財産価値の上昇という面も有るが、税額が上がることになり、特に換地処分を終えた金田東地区でまとまった面積を所有している地主さんにとっては耐えきれないような課税が行われることになり、納税のために宅地の切り売りが始まれば土地の流動化が生じて新しい住民の増加を誘発する事になるだろう。暫く保有したいと願う資産家には地価上昇は厳しい話であるが、早く現金化したい資産家には引き手が多い状況は歓迎される話であろう。
 
 木更津の地価上昇は喜ぶべき事の方が多いが、マンション建設を前提とするような都心部の人気が高くなっている状況は、防災上の大きな不安を感じる話である。いわきで地価の上昇が続いている中で、都心の高密度化が進んでいる状況は、東日本大震災は遠くなったのかと感じずにはいられない。
 政府は国土強靱化を進めているが、機能分散による脆弱性の回避は忘れられているようだ。私が東京の防災を議論する立場に無いことは解っているが、今回の地価公示を見ながら東京がますます心配になり、せめて対岸である木更津の防災拠点整備を急がねばと考えている所である。