箱根山の噴火に思う
2015/07/03記
 気象庁が6月30日に箱根山で小規模な噴火があったと発表したが、昨日の報道では前日の29日に火災泥流が観測されていたようで、実は前日に噴火が始まっていたようだ。噴火警戒レベルが引き上げられ半径1kmの立ち入りが禁止されたため、6月15日に撮影してきた下の場所にも近づくことが出来なくなったようである。
 
 
 「噴火」とは、「火山現象の一種で、地球内部から、(火山)物質が比較的急速に放出される現象」であると言われており、気象庁では「火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象」を「噴火」としているようだ。従って水蒸気が常時吹き上げていた大涌谷や木曽御岳、日光白根山等は噴火していると表現しない。火山現象では有るのだが危険度が違うという事だろう。
 
 日本人が文字で記録を残すようになった最初の作品が古事記だとして、その成立が西暦712年だすると、まだ1403年分の記録を残しているに過ぎない。庶民も含めた日誌や役所の具体的な記録が残る江戸時代以降での記録は富士山に横穴を開けた宝永大噴火(1707年)、村を溶岩で飲み尽くし天明の大飢饉を招いた浅間山の天明大噴火(1783年)、山体崩壊により村を埋め裏磐梯に多くの湖を作り出した磐梯山の明治大噴火(1888年)、離島だった桜島を九州と地続きに変えてしまった桜島の大正大噴火(1914年)等が記録されているが、噴出物を千葉県全域に均等に広げると116mの高さにもなる約600[km3]の噴火と言われる約9万年前の阿蘇の大噴火のような破局噴火は経験していない。
 なお、そのような巨大噴火が起きたときにどのような災害が発生し、国家がどうなるかを小説にしたものが2002年に石黒耀氏により発表された『死都日本』である。個人的にお勧めの本である。
 
 箱根山も火山学者の説によると5万2千年前に破局噴火を生じさせ横浜市近郊まで火砕流が届いたようだ。箱根山の大噴火は約3千年ぶりなのでどの様な経過を辿るか解らず、専門家でも意見が分かれていることに心配となる。いずれにしろ関東一円に広く分布する関東ローム層も富士や箱根火山の噴出物と考えると、有史以前の大噴火の巨大さを想像させるに充分である。
 このような巨大噴火では直接の噴煙による被害だけでなく、火山灰による気候変動で農作物の生育が妨げられ、世界的に飢餓が広がる事で政情が不安定となり、多くの国で紛争が発生すると言われている。人類文明の存続にも係わる問題なのである。
 そこまでの大噴火でなくても航空機はエンジン不調を生じるため飛ぶことが出来なくなり、微細な塵でコンピューターの不具合が発生し、情報化社会への打撃となると言われている。火山灰が積もり雨で水を含んで重くなれば老朽家屋で倒壊も始まると言われるし、下水管渠のようなインフラが現在の機能を維持してくれるか心配もされている。
 東日本大震災以降、津波に対する対策は各地で進んでいるが火山灰対策の視点は余り持たれていない事に今更気が付きながら、今回の火山報道を聞きながら考えていた。