参議院の合区に思う
2015/07/27記
 来年夏の参議院選挙での1票の格差を解消するため、鳥取と島根、徳島と高知の選挙区を合区にするという改正案が24日の参議院本会議で通過し、明日の衆議院本会議で可決成立する見込みだと言う。これ以外にも定数の見直しを行う10増10減案によって前回の参院選で4.77倍であった最大格差は2.974倍に縮小する見込みと聞く。計算の根拠は2010年の国勢調査なので、本年実施の国勢調査では3倍を越えているかも知れない。
 
 今回合区になる4県は下表に示すように県別の人口が少ない方から4つであるが、それ以外にも人口が百万人を切っている県が5つほど存在する。
順位 県名 人口[万人] 備考   順位 県名 人口[万人] 備考
1 東京 1,288.0 25 沖縄 144.3
2 神奈川 895.0 26 山口 141.8
3 大阪 866.7 27 愛媛 141.7
4 愛知 729.7 28 長崎 140.5
5 埼玉 717.8 29 滋賀 139.7
6 千葉 614.2 30 奈良 138.4
7 兵庫 554.3 31 青森 134.9
8 北海道 540.8 32 岩手 129.5
9 福岡 506.3 33 大分 118.0
10 静岡 371.4 34 石川 114.9
11 茨城 293.1 35 山形 113.4
12 広島 282.9 36 宮崎 113.1
13 京都 252.7 37 富山 107.2
14 新潟 232.4 38 秋田 105.2
15 宮城 231.2 39 和歌山 99.7
16 長野 211.8 40 香川 99.6
17 岐阜 204.4 41 佐賀 84.3
18 栃木 197.3 42 山梨 84.2
19 群馬 196.9 43 福井 79.2
20 福島 195.5 44 徳島 77.1
21 岡山 191.8 45 高知 74.3
22 三重 181.8 46 島根 70.0
23 熊本 180.8 47 鳥取 57.9
24 鹿児島 168.4 全国計 12,614.1
 
 今回は与党の公明党が民主党と供に格差を小さくするために上記の2箇所以外に表の備考で[※]を記載した秋田・山形、富山・岐阜、石川・福井、山梨・長野、奈良・和歌山、香川・愛媛、佐賀・長崎、大分・宮崎で合区を行うことで格差を2倍以下に納めるという案を提出して否決された。与党が割れるという珍しい事態であったが、個人的にはそもそも参議院に何を求めているかという哲学を垣間見ることが出来ない不毛な議論であったと思う。
 
 我々地方自治体では直接選挙で選ばれた首長に対する審議機関として単一の地方議会が存在していることに対し、国の制度は議会から行政の最高責任者である首相を選出し、執行機関の長である大臣も過半数を国会議員より選出するという制度に成っている。その中で民意の衆議院と良識の参議院と言われる両院で審議することにより慎重な審査を行うという建前であるが、参議院からも大臣が選出され、参議院は衆議院のカーボンコピーと揶揄されて存在感が薄く、たまに「ねじれ国会」で審議が空転するときに存在感を発揮するだけの機関になっているように多くの国民が思っている。
 
 どうせなら衆議院は全て小選挙区制、参議院は全てを中〜大選挙区制とすることと、参議院の議決権を制限することで、衆議院は2大政党によるダイナミックな政権交代を実現し、衆議院は少数政党が民意に近い比率で存在することで国民の意見を代弁するチェック機関に成るという改革まで行えば良かったのにと思うのだ。
 なお、中〜大選挙区の案として人口5百万人以下の府県は全て合区して地域割りを行うように検討したものが下表である。
県名 県別人口 合区名 合区人口 定数
北海道 540.8 北海道 540.8 8
青森 134.9 北東北 483.0 6
岩手 129.5
秋田 105.2
山形 113.4
宮城 231.2 南東北 426.7 6
福島 195.5
茨城 293.1 北関東 687.3 10
栃木 197.3
群馬 196.9
埼玉 717.8 埼玉 717.8 10
千葉 614.2 千葉 614.2 8
東京 1,288.0 東京 1,288.0 18
神奈川 895.0 神奈川 895.0 12
新潟 232.4 北陸 533.7 8
富山 107.2
石川 114.9
福井 79.2
山梨 84.2 東海 871.8 12
長野 211.8
岐阜 204.4
静岡 371.4
愛知 729.7 愛知 729.7 10
滋賀 139.7 近畿 812.3 12
三重 181.8
京都 252.7
奈良 138.4
和歌山 99.7
大阪 866.7 大阪 866.7 12
兵庫 554.3 兵庫 554.3 8
鳥取 57.9 中国 744.4 10
島根 70.0
岡山 191.8
広島 282.9
山口 141.8
徳島 77.1 四国 392.7 6
香川 99.6
愛媛 141.7
高知 74.3
福岡 506.3 福岡 506.3 6
佐賀 84.3 北九州 523.6 8
長崎 140.5
熊本 180.8
大分 118.0
宮崎 113.1 南九州 425.8 6
鹿児島 168.4
沖縄 144.3
全国 12,614.1 12,614.1 176
 
 人口最小のブロックが四国となるが、人口最大の市である横浜市を上回る人口なので、これを基本対にしても良いものと思う。この場合では1票の格差は福岡県選挙区の1.3倍に収まっているし、四国でも定数3人以上の選挙が実施され、少数政党の当選確率が上がる。さらには定数250人に対し残る74人をブロック性を設けない全国区選挙とすれば極めて少数である政党も議席を確保できるものと思われ、正しく民意を反映する議会構成になるだろう。但し、ねじれによる政治的空白の解消を考え、衆議院の優位性を一層高めることが必要となると思う。
 
 そもそも横浜市はおろか、多くの政令指定都市より人口の少ない県の存在を前提に選挙制度を議論することに違和感を覚え、国会は自らが変わる力を何時になったら持つのだろうと思いながら報道を聞いていた次第である。
 
 ※ 8/5に一部加筆修正した。