鬼怒川の決壊に思う | |
2015/09/13記 | |
台風18号から変わった低気圧と、台風17号の双方が干渉しあう地域に上昇気流が発生し、線状の低気圧が一定の場所で固定して連続して長雨となった結果、その低気圧の線と重なる流域を持つ鬼怒川が決壊し、常総市(旧水海道市)で大変な被害を発生させた。決壊は10日の昼なので、今日は既に4日目に入っているが、未だに被害の全貌は明らかになって居らず、消防や警察・自衛隊等が多くの行方不明者を捜索し、非常に多くの避難者が周辺で不便な生活を送っている。 今回も被災地で暴動等の現象は生じていないが、多くの空き巣被害が報告されているようで、日本は災害時でも治安がよい国であると胸を張って言える状況にはないようだ。こんなに人が苦しんでいるときに盗難を働く者は、通常の犯罪より刑罰を上げることや発覚の場合に実名報道を行うような毅然とした態度は取れないものだろうかと思う話である。 石下町を編入したことにより人口約6万5千人に成った常総市は木更津市の半分の人口だから市の職員も600人程度だろうと思われる。その市役所は今回の水害で、ソーラーパネル設置工事で自然堤防が掘削されたと言われている別の箇所の越流対策に追われ、大規模な破堤を招いた今回の現場周辺には避難勧告を出し遅れたと批判されている。 決壊を繰り返す川として、鬼怒川より東にある小貝川が記憶にあり、調べてみると昭和61年に今回も被害を受けた旧石下町が反対側から被害を受けている事が解った。従って市役所も既に越流を始めている鬼怒川の東西両岸、不安要素の多い小貝川等の数多くの場所に目をやっている中で対応が後手後手に回ってしまったのだろうと思うが、この事は緊急時には複数のルートで避難勧告を出せる制度設計を行っておく事も検討する必要があると、私には考えさせられる。情報の混乱の元になりそうだが、次の場合を想定するのだ。 設置した災害対策本部も急激な状況変化で被災し、混乱が生じている場合も想定される。また今回のように複数箇所に対応できない可能性もあるため、明らかに破堤が生じ、堤防から濁流が流れ込んで来るような明確な現象が発生したときには対策本部を待たずに発令できる基準や制度を設けるべきと思うのだ。 現場にいる市の職員、場合によっては市の職員でなくとも自治会役員や消防団員が判断して被害の拡大を防ぐ対応を取れるようにするべきと思う。当然、オオカミ少年のような愉快犯で混乱を生じさせるような事は防止しなければ成らず、避難勧告を出しても避難所の開設が出来ていなければ意味がないという指摘も出来よう。しかし今回も行政の限界が図らずも露呈したことに成ったので、考えなければならない問題と思うのである。 それにしても鬼怒川の堤防は、利根川の堤防より若干劣るとは言え、しっかりした物であったと記憶している。そもそも銚子に流れ下っていたのは鬼怒川で、天下の都を水害から守るため、江戸時代に関宿から板東市辺りまで開削して利根川を結びつけた物である。今回のように鬼怒川の水位が高くなった場合には、本来の利根川である江戸川に利根川の水を流し、鬼怒川の流下を促すシステムというものも考えねば、今後も同様の被害が考えられるだろう。 それ以上に、私が心配するのは洪水対策としての河川計画を持っていない我が小櫃川である。堤防なんて有ってないような場所も多く、一昨年の台風26号では大規模な洪水被害を出さなかったのは運が良かっただけだと思うほどである。 2013年10月16日午後の小櫃川の写真 太平洋の水温は年々深いところまで水温が上がり、それがために複数の台風が同時発生することが当たり前の世の中に成りつつある。過去には異常気象と言われた『50年に一度の気象現象』である大雨特別警報が発令され、現実に被害が発生している状況を見るにつけ、政治に携わる者が無策でよいのかと、自問させられる日々である。 ※常総市で避難していた市民と連絡が取れ行方不明者が居なくなったとの報道に安堵したが、情報連絡体制が不備だと膨大な捜索人員を必要とするし、遺体が埋まっている可能性を考慮すると瓦礫や土砂の撤去に重機が使えずに作業がはかどらない等の支障も生じていたと考えてしまう。それにしても虚偽の1人は許せない犯罪行為と考えてしまう。 また、避難先を市内で完結させようとして、避難の導線を氾濫している鬼怒川越しで設定するなど問題が多く指摘されている。木更津で小櫃川決壊の時に中郷の住民を根形等でお願いでき、吉野田周辺の住民は逆に矢那や南清で受け入れるようなるような連絡体制が必要だと今回の災害でまた、勉強になった。 (9/15追記) |