低減税率を考える
2015/12/11記
 来年の参議院選挙での協力が必要という考えなのかは解らないが、低減税率の導入を求める公明党に対して総理官邸が歩み寄り酒類を除いた食料品の殆どが低減税率の対象になるような報道がされている。一杯飲み屋で1合300円ぐらいの日本酒は10%の税金で、料亭で食べるフグのフルコース20,000円は8%の税金に成るという事だろうか。「ほろ酔いセット」といったお摘み付きの酒のメニューは内容を案分して納税すると言うことだろうか。居酒屋を愛する私としては気になる話である。
 
 そもそも8%と10%では劇的な差がないため負担軽減感が少ない状況であるにも係わらず、複雑な税制にする事は手間が多く掛かる事となり、複雑なシステムはシステムエンジニアの跋扈や国税庁の肥大化に繋がるだけだと思う立場から今回の低減税率は賛同できない気持ちで議論を聞いている状況である。
 低所得者のエンゲル係数が高くなるのは事実で食料品値上げの影響も出ることは認めるが、低減税率によるメリットをより多く受けるのは高級品を購入できる高所得者である事を考えると、補助制度を充実させて取る代わりに支給する方が公平性が高いという指摘に深く同意する話である。
 公的補助だけでなく、最低賃金の底上げや派遣労働に対する制度改革で所得を増やすことも重要であると考えるが、発展途上国の低賃金労働者と同じ土俵で競合しなければならないグローバル世界の中で人件費をどう考えるかといった問題は根深いものがあり簡単には結論を出せない。
 
 公的部門の縮小で経費を削減する事は重要だが、例えばiPS細胞の山中研究室の研究員が正規雇用でなく教授が人件費の確保に苦慮しているという実態を聞くと行きすぎた削減は制度疲労を生じさせているとも思う。
 今後は、長寿命社会を前提にすると後期高齢者となる75歳までは労働人口に参入して、受給者を納税者に変えるといった行為が必要となるだろうし、健康維持の努力が出来るのにしない国民には医療費が高くなるような制度変更も有り得る。
 しかし医療費の抑制としてアメリカ合衆国のように医療保険の民営化が進み、病気で生活が破綻する者が多く出るような社会に日本を変えてしまうことは絶対に避けたいと思う。
 ともあれ、高福祉社会を達成するためには更なる消費税の値上げが必要となると想像されてしまうのである。
 
 今後、消費税が25%に成る日も来るかも知れないが、それでも境界が曖昧な低減税率を検討するのではなく、国民が他の手法で安心した生活を送れる事を目指して欲しい。その様な流れの中でフィンランドが検討を始めたと聞くベーシックインカムと社会制度改革に注目しているのだが、どうも実施はまだまだ先の話らしい。
 
 追記:12/12に外食は10%、加工食品は8%とする方向で調整に入ったと報道があった。フグのコース料理は10%と妥当な値になったが、持ち帰りのハンバーガーと店内で食べるハンバーガーの区分とか、まだまだ難しい問題が続きそうである(12/13追記)
 
 再追記:食堂で食べると10%なのに出前だと8%とか、益々解りにくい制度設計になっているようだ。流通業界の友人からも『注文のクリスマスケーキは8%だろうが、「高級輪島塗お重に入った豪華御節」はどっち?リサイクル容器と言うことで防水加工した紙のお重で家庭で入れ替える場合は?いわゆる玩菓子といわれるものは?食品主体か景品主体か、一万円を超えるか超えないか?政府はレジソフト開発メーカーから金貰っとんかと思いたくなるくらい複雑だ。』というような嘆きも届く。本当に実行する気かと、法制に権限のない地方議員は歯がゆく思っている(12/17追記)