東京選挙区で考える
2016/07/01記
 昨日、私的な用事で東京を通過したとき、参議院議員選挙の掲示板が目に飛び込んできた。通常で有れば候補者名と顔写真が掲載されているハズの掲示板が不思議なことになっていた。まずはその写真である。
 
 
 
 千葉県選挙区に比べて候補者が多いことや4番・9番・18番・20番・27番が空白なこと、28〜30番はどこに有るのだろうかと言った点も気にはなるが、目を引くのは下の段に4枚並んで文字のポスターが貼られていることである。
 その部分を拡大したものが右の写真である。全て同じポスターが並べられており、個人を選ぶはずの東京選挙区で個人名がないのである。あまりに異様なので調べてみると、選挙ポスターには個人名を入れなければ成らないという規定がないため法令違反ではないようだ(だから貼られているのである)。4枚も並んでいるのは、この党から4人が立候補したからである。
 東京選挙区(定数6)に立候補した候補者は31人であり、一覧表にすると次の通りである。
 
届出 名前 年齢 略歴 政党 新旧
1 高樹 沙耶 53 女優 新党改革
2 鈴木 麻理子 32 経営コンサル業 こころ
3 田中 康夫 61 〈元〉長野県知事 おお維新
4 横堀 喜久 81 がん啓発団体長 無所属
5 増山 麗奈 40 映画監督 社民党
6 岩坂 行雄 70 〈元〉ビル管理社員 無所属
7 トクマ 50 幸福実現党局長 諸派
8 三宅 洋平 38 音楽家 無所属
9 又吉 光雄 73 政治団体代表 諸派
10 山添 拓 32 弁護士 共産党
11 竹谷 とし子 47 公認会計士 公明党
12 鈴木 達夫 76 弁護士 無所属
13 佐藤 香 49 女性団体代表 無所属
14 中川 雅治 70 党総務会長代理 自民党
15 鈴木 信行 51 政治団体代表 諸派
16 小川 敏夫 69 〈元〉法相 民進党
17 朝日 健太郎 41 〈元〉バレー選手 自民党
18 柳沢 秀敏 68 医師 無所属
19 小林 興起 73 怒りの声支部長 諸派
20 原田 君明 40 政策コンサル業 無所属
21 蓮 舫 49 党代表代行 民進党
22 横粂 勝仁 35 〈元〉衆院議員 無所属
23 大槻 文彦 50 支持なし役員 諸派
24 佐藤 均 46 支持なし役員 諸派
25 鮫島 良司 62 支持なし役員 諸派
26 深江 孝 55 支持なし役員 諸派
27 浜田 和幸 64 〈元〉外務政務官 無所属
28 藤代 洋行 43 政治団体代表 諸派
29 ひめじ けんじ 65 政治団体代表 諸派
30 川上 晃司 32 無職 無所属
31 犬丸 勝子 62 政治団体代表 諸派
 
 名称・年齢(投票日(7月10日)の満年齢)・略歴・新旧は朝日新聞デジタル版を参照させていただいた。国会議員経験者の扱いでは田中康夫氏が「元」で小林興起氏や横粂勝仁氏が「新」とされている理由は衆議院と参議院を区分しているのだろう。現職を示す「現」のうち浜田和幸氏は2010年の参議院議員選挙では自民党から鳥取選挙区で出馬し158,445票を得て当選しているが島根県との合区のあおりを受けて無所属で東京選挙区に移動してきた者であり、他の4人は改選である。因みに前回の東京選挙区(定数5)で惜しくも次点になった共産党の小池晃氏は552,187票を得ている。当時5位で当選した松田公太氏はみんなの党の解党後、日本を元気にする会に移った。まだ48歳であるが、今回は出馬せず政界を引退するようだ。
 政党の略称は、こころ→日本のこころを大切にする党、おお維新→おおさか維新の会、であり国会に議員を持たない政党は諸派とした。上記の表中の白地が私の撮影した掲示板にポスターが無かった候補者で、赤地が「支持政党なし」で立候補した方々である。
 この党は受付時刻前に届出をすると抽選になり並べることが出来ないので、わざと遅らせて抽選から外れることで23番から26番を確保して横一線に並んで貼る事を選んだようだ。参議院選挙区の供託金は一人300万円なので、1200万円を掛けてこの作風(?)を仕上げ、選挙区で個人の投票を得ることより比例区で代表が当選できる事につながる呼びかけをしているのであろう。
 
 ちなみに東京都の掲示板の並べ方だと横に並ぶが千葉県方式だと縦に並ぶことになる(下図参考:12番までの場合)。当然それも計算済みの事であろう。
 
4 3 2 1

8 7 6 5
12 11 10 9


1 4 7 10
2 5 8 11
3 6 9 12
 
 前回の衆議院選挙では「指示政党なし」は北海道で立候補して一定の票を確保したようで、今回の選挙でも既存政党への嫌悪感で「なし」と書くと、知らない内にこの政党に投票する事になる危険性が指摘されている。
 代表の佐野秀光氏はWikipediaによると今回改選される東京選挙区で出馬した(結果3662票で21位)のを皮切りに、今まで北海道と東京で各2回、合計4回国政選挙に立候補しており、6年目の今回が5回目の挑戦のようだ。当初は別の政党名で立候補し、政策も掲げていたようだが、今回は政党として政策はなく全て党員のアンケートによって投票行動を決めるとしている。選挙前なのでこの党や個人に対する意見や批判は避け「間接民主主義」について考えてみたい。
 
 内閣法制局のHPによると、2011年9月13日に開会された第178回国会(臨時会)以降の13回の国会で上程された法案の数は内閣から450件、議員提案が475件の合計925件有り、成立したものは482件である。大多数の法案は報道されることもなく国民が知らないままで成立している。その状態で判断を求められたら感性か僅かの情報で行動を執ることになり、意図的な情報操作に簡単に乗せられる危うさを秘めている事だろう。
 市議会に上程された条例を見ても、条文だけでは具体的な事が解らず、委員会審議において質疑が行われる中で細部が見えてくるという状況なので、例えば木更津市の条例を個人で判断せず後援会の意見に任せるといった議員が出てきた場合、条例の背景に潜む問題点すら探すこともない姿勢は多いに問題があると考える。そもそも政策がない者が配属された委員会等で何を聞くことが出きるだろうか(質問とは理想との差を計るために有るので、単に知らないからという事だけで行うなら時間の無駄と私は考えるのである)。
 官僚や財界の情報操作によって投票者である国民の望まない方向に進み、世論と政治家が乖離しているとは良く聞く批判であるので、今回のような主張が尤もらしく聞こえる事もあるのだろう。もちろん政治に携わる者は国会議員でも地方議員でも常に有権者の側に有ることを心がけることは極めて重要である。しかし、専門的な事柄の判断や背景の調査などを充分に行える者を選び、その者に判断を委ねることは健全な「間接民主主義」であると私は考えるのである。東京都内で見かけた選挙ポスターに啓発されて、その様な事を考えていた。