起債と償還を考える
2017/03/31記
 今日で3月も終わり明日から平成29年度事業が開始される。
 来年度の一般会計予算は過去最大となる437億2千万円となり予算の拡大が進む中で税収がそれに伴うほど伸びていないとなると借金を増やしているのではと気になるところであり、この年度末にもそのような質問を受けることがあった。
 
 国家予算では毎年プライマリーバランスの健全化を叫びながら、実際には赤字国債を発行せずに予算が組めない状況が続いている。報道が危機を煽るこの問題に関し多くの国民が無駄の削減を期待した民主党政権では、リーマンショック後の経済混乱があったとはいえ、更に赤字を大幅に拡大させてしまった。
 財務省も平成29年度一般会計総額97兆4547億円に対し、平成28年度末で借金等が29兆円、国の公債残高が790兆円、地方の公債残高が196兆円と見込んでいる(参考資料)。国の分を併せると819兆円で予算規模の8.4年分である。平成26年度末の公債残高780兆円を返すのに税収の16年分が必要だとPRしているのには財務省の開き直りすら感じる。
 
 地方債の残高も196兆円が見込まれ、夕張市の自治体破産が記憶に新しいので、当然木更津市は大丈夫かという話になるのだろう。そこで近年の一般会計における年度末未償還元金現在高を調べてみた。データは平成27年度までは実績、平成28年度は3月補正後の予算額と平成27年度繰越額の合算、平成29年度は当初予算額に基づいており、単位は億円である。
年度 未償還元金
現在高
臨時財政
対策債
臨時財政
対策債以外
臨時財政
対策債
H23 271.849 133.138 138.711 48.97%
H24 283.320 149.885 133.435 52.90%
H25 309.406 168.152 141.254 54.35%
H26 326.713 182.661 144.051 55.91%
H27 338.552 192.359 146.193 56.82%
H28 336.953 197.804 139.149 58.70%
H29 339.276 202.533 136.743 59.70%
 来年度末は過去最高の残高に成る見込みではあるが一般会計額に対しては9.3ヶ月分であり、単年度の会計額を下回る数値であるし、額の伸びもここ数年は安定している。因みに平成29年度当初予算の市税(189億69百万円)で元金の全てを返還すると約1.8年、つまり22ヶ月で完納できる計算となるので、その比率は国より遙かに低い。

 上表をグラフにしたものが下図である。
 臨時財政対策債以外の起債は、学校の耐震事業を進めたことで若干の増加となっている。しかし実は気にしなければならないものは全体の6割近くを占めるように成った臨時財政対策債ではないかと個人的には考えている。
 
 税金の過半を国が抑えるが事務事業の過半は自治体が担う制度であるため、多くの自治体は自らの税収だけでは自治体が運営出ず、その不足分について本来なら地方交付税で補填をするものであった。ところが地方交付税も、所得税や法人税など法定5税に一定の率を乗じた分を原資としているため、交付税総額が不足する事態になっていた。平成12年度までは交付税及び譲与税配付金特別会計で国が借り入れ総額を確保していたものを平成13年度の地方財政対策の見直しで、不足額を国と地方で折半し、地方分について各自治体で地方債を発行して補填することとに成ったものが。この「臨時財政対策債」であり、その償還は基準財政需要額に参入されるので最終的に国が負担する、と言われている。
 そのため、地方自治体の健全化を見る尺度の中に臨時財政対策債の額は考慮しなくても良い制度に成っているのであるが、借金は借金である。
 
 木更津市の税収が急激に上がり、国からの援助を必要としない不交付団体に成ったときには臨時財政対策債の償還も市の負担となってくるのであるが、その時でも償還をしながら余裕があるかという判断が出されることから最終的には借り入れた方が徳と考え、今までは国が認める全額を発行し、余裕資金は臨時財政調整基金として積み立ててきた。県内では柏市など若干の自治体は枠一杯まで起債することをしていないが、多くの自治体は木更津市と同じ考えである。
 
 当面は制度に変更はないと思うが、国が冒頭に掲げたように多額の借金を抱えており、国債が国内で処理しきれなくなる頃には制度の見直しがされ、自治体分は自治体でと成る事も想定し、借金(起債)は抑えるに越したことはないだろうと考えている。
 
 なお、その起債の変換の方であるが、元金だけでなく当然利子も返さねばならない。金利が高い頃には利子の比率が高かった事もあり、元金現在高と同様に近年を整理したものが下表である。こちらも単位は億円である。
年度 元金 利子 合計 利子の比率
H23 29.001 4.107 33.108 12.41%
H24 27.309 3.840 31.150 12.33%
H25 23.781 3.655 27.436 13.32%
H26 24.240 3.416 27.656 12.35%
H27 22.072 3.121 25.194 12.39%
H28 26.758 2.711 29.469 9.20%
H29 27.742 2.527 30.269 8.35%
 同様にグラフとして整理すると下図の通りである。
 
 近年の低金利や、数年前からの高利の公債の借り換えが進んだこともあり、償還額における利子は12%程度でそれほど高くない上に近年はより低下傾向にある。土地開発公社が膨大な利子を返していた頃と比べると雲底の差である。
 償還額も毎年30億円前後と比較的落ち着いており、今後の起債は償還額とのバランスを図ることで借金を増やしていかない方向だと聞いている。
 
 このように国と市では財政の健全性に大きな違いがあり、本市は危機的と言われるような自治体とは違って安定していると考えて良いだろう。それでも屋台骨を支える国が行き詰まってはどうにもならない。成立が遅かった平成29年度国家予算の情報を前にこのような事を考えていたので整理する。