入札制度を再度考える | |
2017/09/13記 | |
9月議会に建設業協同組合より陳情が出され、入札事務を担当する総務部管財課を所管する総務常任委員会で昨日審査が行われた。まずは陳情内容を下記に記す。 |
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入札参加資格に関する陳情書 | |
陳情内容(理由及び要望事項) 平成29年7月11日に開札しました(仮称)金田地域交流センター新築工事(建築)の件でございますが、この入札において登記上は別会社ですが、実態は同じ敷地で、同じ建物の中で営業をしており、それぞれの会社の代表が夫婦である二社が応札いたしました。また今回の案件ではこの二社が同札にて籤に参加しました。私ども木更津市建設業協同組合といたしましては入札の公平性・公共性、また談合の危険性から考えましてもとても容認できるものではありません。木更津市としましては二社に参加資格を与えるのではなく、同一入札案件に対してはどちらか一社のみに入札参加資格を与えるよう要望致します。 |
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平成29年7月18日 | |
木更津市建設業協同組合 理事長 水越 実 | |
木更津市議会議長 斉藤 高根 様 | |
同様の陳情は市長宛にも提出され、市は7月21日付で「上記の二社が資本的関係・人的関係について特定関係に該当していない事を確認しており公平・公正な公共工事の入札に反するものではなく、また営業する事務所は別棟であることを確認している」旨の回答を行っている。つまり、現在の制度上では違反では無いので、今後も理解していただきたいという事である。 陳情書に有る(仮称)金田地域交流センターは4社が予定価格の90%で並び、そのうちの2社が陳情の対象としている会社であったから落札率は2/4で50%であり、落札を果たした。また要望書を提出した後の7月19日に開札が有った消防本部庁舎も90%で5社が並び、そのうち2社が陳情の対象会社で、2/5の40%に下がった落札率でも落札を果たしたのである。両方とも受注できる確立を計算すると、1社の場合だと5%に過ぎないがグループ2社の何れかであれば20%と4倍に跳ね上がるのである。 この問題は平成26年度に大型の校舎耐震補強工事が続いたときも問題となり、市は平成27年2月27日に「特定関係にある会社同士の入札参加制限基準」を儲け、当時は特定関係であった2社のうち一方しか入札に参加できなくなったのである。その後、兼任であった役員の整理や持ち株比率の変更等の事務処理が行われた結果、今年度から双方が参加することになり、このような事態に至ったのである。 双方の会社の株主もほぼ一体であり、家族という「持株会社」の元で別の登記がされているのだから、そこを制限するように基準を見直すべきだと質問したし陳情にも賛成したが、90%で並んでしまう入札制度の方に問題があると私は考える。 予定価格は事前公表とされており、それより調査基準価格はその90%と推察されるから、低落札調査をされたくない会社は事実上の最低価格に並んでしまうのである。 調査基準価格以下で応札すると、本当に施行することが出来るのか、大量の書類と時間をかけた調査が行われることになる。これは間違って施行できない価格を入れてしまうというミスを排除するためには役に立つが、安く請け負おうとした会社にとっては事務量の負担増と工期の短縮に繋がるダメージがある。 その上、本来なら4割貰えるはずの前渡し金が2割に削減され、工事の契約保証金も1割から3割に上がるなど、工事を遂行する上での初期の金銭的負担が大きくなるのである。 本来なら安く仕事をしてくれるところにより良いメリットを与えるべきなのにペナルティーを与えるような現在の制度には違和感を感じるのだ。 なお、予定価格を非公開にするべきだという議論も有るが、予定価格を知る職員等が不正を行う余地を残してしまうため、収賄の誘惑から職員を守るために事前公開を続けるべきだというのが私の持論である。 また指名競争制度にすると、特定の会社が指名されないことに対する裁判も行われた事例があり疑問であるし、総合評価方式では職員の事務量が大変である。ただし簡易型の総合評価方式であれば、災害時支援協定の締結者や手持ち工事の少ない業者の優先が出来るので、それは検討の価値があると考える。 今回の陳情は委員会においては賛成者少数で否決されたので本会議においても否決される見通しである。それでも今回の陳情を契機に入札制度の見直しが行われることを希望する。 |