消防艇を見学する
2017/09/26記
 議会は最終週に入り、昨日は地方創生と広域行政の特別委員会があり、明日は私が委員長を務める基地対策特別委員会があるが、今日は隙間のように日程が空いていたので、議会だよりに乗せる写真を撮るため市川市消防局の東消防署高谷(こうや)出張所まで消防艇『ちどり』を見学に出かけた。
 
 市川市の面積は56.39Kuであり、木更津市の138.95Kuに比べれば40%程度の面積に過ぎないものの、平成29年8月31日現在の市川市住民基本台帳人口は484,262人であり、同日の木更津市の人口135,168人に比べると3.58倍である。そのような人口の多さもあり、市には消防局が置かれ東西南北に消防署が配置され、それぞれの署に1〜2の出張所が設けられて、4署7出張所体制で消防事務を処理している。なお、消防艇隊とは別に西消防署大洲出張所には水難救助隊を置くなど、水上の災害に備える体制も充実している。
 
 消防艇が配置されている高谷出張所は旧行徳町に属し、湾岸道路より海側に入った工業地帯の中にある。消防艇の他には消防車と救急車が配置されており、建物は既に充分な年数が経過している事を示すものであった。その建物から幅8m程度の道路を渡り、西側に70m程度行った所に消防艇は係留されていた。
 
 
 今回は議会だよりの写真と考えていたので外観だけ撮影すれば充分かと思っていたが、許可もなく写真を撮ることに抵抗もあったので前日に市川市消防局に電話を入れておいた。10時半に伺うという約束をしたが、東関東自動車道におけるトラックと乗用車の事故による大渋滞で余裕時間を使い果たし、15分も遅刻して出張所に到着した。出張所に顔を出して挨拶すると、常時は施錠しているブリッジの鍵を開けて船内まで案内していただき、機関等の説明までしていただいたので恐縮してしまった。
 
 
 浅い河川での使用を前提としているため推進装置はスクリューではなくウォータージェット推進装置を搭載し、水面下に没している深さ(喫水)を少なくするために船体をアルミで作るなど軽量化も進めていた。他には電子コンパスやGPS装置も搭載されているなど平成23年購入の船らしい新鋭の装備が目に付いた。
 消防隊員は5人で乗船し、船長が操舵室の右の席に座って無線を担当、中央は操縦を担当、左の席は放水銃による消防活動を担当し、残る2人は航行中に周辺の状況確認を目視で行っているという事である。船の上に着けられている放水銃は手持ちの筒先に比べ使いにくくないのかと聞いたが、直ぐに慣れるし、水利は無尽蔵に有る状況なので手に持って長時間消化活動をする事に比べると楽であるとの事であった。
 
 乗船するための浮き桟橋や緊急救助用のモーターボートも消防局で保有しており、実際に消防艇を配備するとなると船と隊員のコストだけでは収まらない可能性が想像され、木更津市の対応は慎重にするべきかと考える。なお、『ちどり』の主な数値をパンフレット等から抜粋すると下記の通りである。
 
項目 数値 備考
全長 15.00m
4.00m
喫水 0.60m 河川での使用を考えて浅くしている
総トン数 14トン 喫水を浅くするため軽量化している
要員数 5人 救助者を含めた最大定員は14人
最大速力 62.3km/h 510馬力のエンジンを2基搭載
放水能力 1,500l/min×2 化学火災を想定し泡水にも対応
 
 東京湾で年に1度、消防艇を所有する自治体の合同訓練があるそうだが、千葉県からは千葉市と市川市、東京都は特別区、神奈川県から川崎市と横浜市が参加するようだが、圧倒的に小さな船なので大変だと隊員の方々は言われていた。それでも浦安市や船橋市等で生じた海難事故を市川市がサポートする事には誇りを持っているようであり、消防艇隊や海難救助隊に配置されることを目指し、中には補助金の助成を待たず私的に船舶免許をとるものも居るようだ。
 
 今回の議会質問は直ちに木更津市に消防艇を置くべきだという趣旨ではないが、クルーズ船の寄港が頻繁に成った場合、火災だけでなくデッキからの転落などといった不測の事態も生じることを考えると木更津市でも配備しようという風潮が出てくることを先回りしたつもりである。船は絶望的に高いという先入観があったが、市川市の「ちどり」と同様の船なら所有することも有意義だろうと考えながら市川市消防局高谷出張所を後にした。