人口推計を分析する
2018/04/02記
 先月30日に国立社会保障・人口問題研究所が「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」として2045年までの市町村別人口の推計値を発表した。それによると木更津市の人口は向こう30年近く維持できる見込みとなっており、少し安堵するところであるが、近隣四市に目を広げて分析をしてみたところ、深刻な状況が明らかになった。
 
1.人口の推移
 木更津市の人口は大きく変化しないものの、君津市と富津市の人口激減に伴い、四市人口は5万人以上も減少する事になる。
総人口 2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 134,141 138,755 138,386 135,220
君津市 86,033 77,888 68,479 58,796
富津市 45,601 39,782 33,609 27,600
袖ケ浦市 60,952 60,638 58,384 54,875
四市合計 326,727 317,063 298,858 276,491
 これをグラフに図化すると次のようになる。
 全体として減少する中で年齢別に着目すると更に状況は厳しくなる。まずは0〜14歳の若年人口である。木更津市は千人程度の減少で済むものの全体では1万人近い減少となる。
0〜14歳 2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 17,694 17,514 17,005 16,650
君津市 9,845 8,029 6,542 5,501
富津市 4,271 3,300 2,574 2,068
袖ケ浦市 8,254 7,691 7,052 6,634
四市合計 40,064 36,534 33,173 30,853
 これをグラフに図化すると次のようになる。
 一方、75歳以上の後期高齢人口はこれから10年で急激に増加し、20年後に現在より約2万人多くなった後に減少を開始するが、依然として2015年の値に比べ多い値で推移している。
75歳以上 2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 15,184 23,171 23,653 23,495
君津市 11,442 15,702 16,364 15,033
富津市 7,649 9,559 9,168 7,835
袖ケ浦市 6,229 10,190 11,177 10,671
四市合計 40,504 58,622 60,362 57,034
 これをグラフに図化すると次のようになり、総人口や若年人口の図とはあまりに異なる状況に驚かされる。
 人口が減少する中で、多くの後期高齢者を抱える地域の状況が改めて明らかになった。
 
2.行政別の後期高齢化率
 この状況を元に後期高齢化率の推移を計算してみたところ、次のようになった。
2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 11.3% 16.7% 17.1% 17.4%
君津市 13.3% 20.2% 23.9% 25.6%
富津市 16.8% 24.0% 27.3% 28.4%
袖ケ浦市 10.2% 16.8% 19.1% 19.4%
千葉県 11.4% 17.5% 18.8% 20.7%
 これをグラフに図化すると次のようになる。
 本市や袖ケ浦市は千葉県の平均都と同じ程度で推移するが、君津市と富津市は分母となる総人口が減少することもあり高い値に成っていく事が明らかになった。
 これは65歳以上の高齢者ではなく、何らかの病気等で福祉サービスを受ける率が高くなるとされる75歳以上の後期高齢者が総人口に締める比率であることに注意して貰いたい。それが市の規模でも25%を越えてくるという状況は想像が及ばない。因みに65歳以上の値で計算すると次のようになる。
2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 26.1% 27.9% 28.5% 31.9%
君津市 28.5% 34.4% 37.6% 40.9%
富津市 34.5% 39.9% 42.7% 45.2%
袖ケ浦市 24.9% 29.5% 31.1% 34.3%
千葉県 25.9% 29.3% 32.2% 36.4%
 これをグラフに図化すると次のようになる。なお、図の凡例は先の後期高齢化率のグラフと一緒である。
 現在でも県平均で人口の1/4、富津市では1/3が高齢者という状況なのに、それが30年後には本市でも1/3、富津市に至っては人口の半分近くが65歳以上になってしまうのである。限界集落の定義が人口の半数以上が高齢者であった事を考えると富津市も黄色信号が点滅している状況だ。もちろん千葉県の中には過半数が高齢者になる自治体も多くなり、秋田県では県全体で40%を越えるなど、日本中が危機的な予測をされる状況を考えると富津市が特殊な状況ではない事も判っている。
 高齢者があまりにも多く成りすぎて、前期と後期で政策を個別に考えるとした政府の考え方がデータの上からは理解できるようなグラフなのである。
 
3.人口減少率
 2015年を100として、その後の人口がどの様に推移していくのかを見ると、別の意味で危機感が出てくる。まずは総人口である。
総人口 2015年 2025年 2035年 2045年
木更津市 100.0% 103.4% 103.2% 100.8%
君津市 100.0% 90.5% 79.6% 68.3%
富津市 100.0% 87.2% 73.7% 60.5%
袖ケ浦市 100.0% 99.5% 95.8% 90.0%
四市合計 100.0% 97.0% 91.5% 84.6%
 木更津市が現状を維持する中で富津市は約4割減となり、袖ケ浦市でも1割が減り、地域全体では15.4%の減少となる。これをグラフに図化すると次のようになる。
 さらに年齢別に着目し、データの表を割愛してグラフのみを示したい。まずは0〜14歳の若年人口である。図の凡例は上記の総人口のグラフと一緒である。
 富津市では現在でも子供が少なく、学校の統廃合の検討が進む中で、30年後にはさらに半分以下となる状況である。一方75歳以上の後期高齢者のグラフは次のようになった。
 富津市は変動率の点では最も安定しており、30年後には現在の水準に戻るので施設整備もそれほど必要ではないと考えられるが、袖ケ浦市は10年間で急上昇し、その後も高い比率を維持することが判る。同じように団塊の世代を多く抱える木更津市も同じ傾向が現れており、これから高齢者施設を10年間で整備しなければ成らないことは明かであり、それが行政負担になってくる事も予測されるのである。
 
 以上、国立社会保障・人口問題研究所の報告を元に分析してきたが、個人的にはこの状況を乗り切るためには、やはり広域合併を検討して行かざるを得ない状況が目前に迫っている様に感じるのである。
 もちろん、個々の市が独自の政策で推計値を裏切るような人口増加策を成し遂げることや、高齢化が高くても皆が健康で元気な自治体を造ることが叶えば、それに越したことはない。
 
 木更津市でも推計値に安堵することなく、さらなる子育て世代の確保や高齢者対策に取り組む必要があることを自覚しつつ、今回の分析の考察を終えたいと思う。