通年議会を検討する
2019/02/06記
 かつては地方議員が多くの市民より名誉職と思われていた頃、行政の事務も国や県の機関委任事務が多くて自治体議会の裁量も少なく、責任が少なくても評価が高いポストとして名士の就くべき職業であった時代があったように思う。現在のようなインターネットによる情報開示もなかった頃は、一部の有識者を除くと議員がどの様な活動を行っているか知らず、それが為に特に何の勉強をしなくても勤まることが出来た時代も有っただろう。
 
 その後、地方分権で議員の責任が増える中、地方議会不要論とも言える議会叩きの議論が一部マスコミで拡大し、脚本の貧弱なドラマでは議員は正義を貫かず、私腹を肥やすことに一生懸命な存在として描かれることも多くなった。マスコミの造ったイメージを裏付けるように、一部議員が政務調査費(現在の政務活動費)を不正使用していた実態と、議員としての品格のない記者会見などが重なり、議員は名誉職の立場から、針灸師より成りたいと思われない、不名誉なポストに地位を落としてしまった。
 
 その様な状況の中でも、地方自治における政治の必要性を確信して選挙を乗り越えてきた全国の意識の高い議員により、各地でそれぞれに議会改革が始まり、議会基本条例の制定を通じて常に市民との意見交換を目指す動きが進んでいるが、それと同じように行政のおかれている問題に対し1年365日取り組んでいる実態を制度にしているものが『通年議会』である。
 
 例えば、今回の3月議会は今月12日に招集され、来月20日までの会期で開催される予定である。市議会や県議会を広報誌等で知る市民の中には、年に4回開催される定例議会に出席する事が議員の義務で、そのうち数日の本会議だけで考えると年間数日の議会出席だけで務めは終わってしまう、と勘違いされている者も居ると聞く。しかし実際には7日に総務や広域行政など多くの委員会が開催され、8日には議員全員協議会と議会運営委員会が開催されるなど、会期前にも会議が多く、他にも各種調査等で多くの集まり事が多いのである。私も地域の活動を除いても、一年を通じ議員活動を行っている実感がある。
 
 さて、その様な中、全国市議会議長会が平成29年1月1日から12月31日までの市議会の活動に対する実態調査結果を公表し、平成30年12月28日付けで全市に発送しているが、それによると東京特別区を含む全国の814市区のうち通年議会を採用しているのは下表に示すとおり、全体の3.8%である31市区に過ぎない。特定の都府県に多く集まっている傾向があり、千葉県ではまだ通年議会を採用した市は無い。
  
No 都道府県名 市区名
1 北海道 根室市 1
2 岩手県 北上市、久慈市、滝沢市 3
3 宮城県 登米市 1
4 福島県 福島市 1
5 茨城県 常総市、守谷市 2
6 東京都 青梅市、あきる野市、文京区、荒川区 4
7 神奈川県 相模原市、横須賀市、厚木市 3
8 新潟県 柏崎市 1
9 石川県 金沢市、白山市 2
10 愛知県 豊明市 1
11 三重県 四日市市、鳥羽市 2
12 滋賀県 大津市 1
13 京都府 京都市 1
14 大阪府 枚方市、四條畷市、大東市、大阪狭山市 4
15 徳島県 小松島市、三好市 2
16 高知県 土佐清水市 1
17 長崎県 壱岐市 1
合計 31
 
 人口規模に顕著な特徴は無く、中国地方は皆無で九州は離島の壱岐市だけという状況である。中には金沢や京都という市制施行以来の長い歴史を刻んでいる大都市も含まれている事には驚かされる。なお、上表中の下線を記したものは行政視察に行ったことのある自治体である。議会改革に関する視察でないものが多いが、時折は通年議会に関する話を聞いてきている。
 
 聞いたところでは、通年議会を採用した場合でも多くの議会は基本的に現在の定例会を同じ様な形態で維持している。突発的な専決事項に議会が対応できることや、休会中の審査という手続きをとらなくて良いことなどがメリットであり、実態には大きな差はないようだ。何より「一年中議員である」という姿勢を示せるのがよいようだ。
 逆に公式行事のない平日に私的な仕事をしていると「議会に行かなくて良いのか」と言われるという声も聞かれるし、そもそも全国の96.2%が採用していないことは制度上に課題があるのではないかとか、わざわざ現況を帰る必要は無いという声が出ているようだ。それでも私は休会中に多くの調査や学習を積んでいる木更津市議会の議員実態に近づけるため、通年議会を検討すべきと考えて居るのである。改選後には議論の俎上に載せたいものだ。